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メタバース ~巨大なチャンス~
2022/10/18

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概要

インターネット上の仮想空間「メタバース」は、ソーシャル・メディア、Eコマース(電子商取引)、遠隔学習や在宅勤務等の様々な分野で、新しい投資の機会を提供しています。



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爽やかな初夏の日に、親しい友人とセーヌ川沿いを走りたい気分ですか?現実の世界では季節は冬で、二人ともパリに住んでいるわけではないとしても、メタバース上には、二人のランニングを阻むものはないはずです。仮想現実(VR)と拡張現実(AR)を通じて、現実の世界とデジタルの世界を融合したメタバースにようこそ。メタバースは、臨場感と没入感を提供し、向こう5年から10年の間、ウェブ2.0を後継する存在になり得る共有の仮想環境です。メタバースは、「空間への没入感を提供し、分散型(非中央集権的)で、人を魅了し、摩擦のない3次元(3D)インターネットの進化形として理解するのが最も妥当だと思われます。

メタバースの概念は、1990年代後半から2010年代前半に生まれ、今や、世界の総人口のおよそ3分の1を占める「Z世代」から特に強い支持を得ています。Z世代は、デジタル環境に慣れ親しんだ真の「デジタル・ネイティブ」で、遠隔学習、インスタグラムやスナップチャット等のデジタル・ストリーミングやソーシャル・メディアの他、自分の分身である「アバター」を想像し作成することが出来るビデオゲームのフォートナイトやロブロックス等を通じて、仮想環境に精通しています。メタバースのビジネス・モデルは「勝者総取り」モデルではなく、メタバースを一人で構築出来る人はいません。また、巨大IT企業の多くが、メタバース上に提供するプロダクト・ラインを拡充する手段を模索しています。メタバースにアクセスするためには、大まかに言うと、以下の4つの機器や技術が必要であると考えられますが、いずれも成長と発展の大きな可能性を秘めています。

ハードウェア

VRヘッドセットとVRグラスは、3次元のデジタル環境に没入することを可能にし、一方、スマートフォンはARへのアクセスを可能にしますが、AR上では、デジタル・グラフィックが現実の世界に上書きされています。一方、センサーが内蔵されたスマートARグラスをかけ、ARヘッドセットを付けてメタバースにつながることも可能です。

 ソフトウェア

仮想世界には、ソフトウェア・アプリを通じた、人との交流、ショッピング、場所を問わない学校教育や仕事等、人間活動のあらゆる側面が含まれます。ゲームやオンライン・エンターテイメントは、メタバース上の最高の体験を提供しています。ゲーム内通貨の他、バーチャルグッズ(仮想アイテム)、芸術作品、不動産等を通じて仮想体験を楽しみ、構築、所有、収益化する機会は増え続けています。

クラウド

メタバースに入るために必要なソフトウェアを起動するには、最も高度な半導体を搭載した、かつてなかったほど強力なコンピューターが必要です。データセンターも必須ですが、最大級のデータセンターを運営する企業は、メタバースにおける技術の進歩の恩恵を享受する有利な立場にあります。

インフラ

ネットワークの操作能力の改善、帯域幅の拡大、入力信号の伝搬遅延時間縮小、とりわけ、企業およびプラットフォーム間の双方向性操作能力は、いずれもメタバースの信頼性の向上に資するはずです。

 

 

小売業界がVRおよびAR関連技術に魅力を感じているのは、スクリーン上の画像を、回転させたり、拡大したり、ユーザーと双方向のコミュニケーションを取ることで、実物に近いものに見せることが可能だからです。従来型の小売企業は、仮想試着室の設置の可能性を探っています。車の仮想試乗や宿泊施設の下見も可能になるかもしれません。

一方、メタバースは、デジタル世界のみで価値を有する新しいタイプの無形の製品も生み出しています。最も人気が高いのが非代替性トークン(NFT)ですが、これは、芸術作品、不動産、スポーツ記念品、衣料等を含むデジタル資産のことです。

メタバース上では、ブロックチェーン(分散型台帳)や暗号資産が重要な役割を果たすことになります。ブロックチェーンによって管理される仮想通貨やNFT等、ウェブ3.0を構築するための技術を含む多くの技術革新(イノベーション)を通じて、すべての技術がデジタル資産、金融技術、サービス等に影響を及ぼすことになります。

仮想通貨のボラティリティを、現実世界での応用がゲーム・チャンジャーになり得るブロックチェーン等の基盤技術から切り離すことで、投資の好機は存在します。

 

「メタバースは、空間への没入感を提供し、分散型で、人を魅了し、摩擦のない3次元(3D)インターネットの進化形として理解するのが最も妥当だと思われます。」

 

こうした試みを完全に軌道に乗せるには、デジタル・インフラの整備が不可欠です。最大の課題は、1つの世界から別の世界に瞬時に移動し、どちらの世界にいても仮想のアイデンティティを維持できる相互運用性でしょう。機種の異なるコンソールやコンピューターを使ってゲームを行うことは既に可能であり、スマートフォンの場合はiOSとアンドロイド、パソコンの場合は、MacのOSやWindows等が、概念を裏付けるものとして存在しています。

私達は、ワールド・ワイド・ウェブ(WWW、インターネット)の世界から大きな発展を遂げてきましたが、メタバースがWeb 3.0上の主流となるには、iPhoneの登場によって、電話には別の見方があることを世界に示した「iPhoneモーメント」のような、次の段階に進むきっかけが必要です。ウェブ3.0はメタバースを遥かに超える存在です。見かけも感じもウェブ2.0に似ているとしても、コンテンツの所有権、信頼性およびガバナンスはウェブ2.0とは全く別物です。また、イノベーションを強化する世代交代から大きな影響を受けることになると考えます。

私達の世界のデジタル化は、始まったばかりのように思われます。

 

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