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ヘルスケア・セクターにおけるサステナブル投資
2022/12/08

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概要

未上場のヘルスケア企業が、魅力的な投資収益と、ESG投資の「社会」課題に対応する機会を提供する理由は何でしょうか?



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ESG投資(サステナブル投資)では、「社会(Social)」要因が軽視されがちです。

「環境(Environment)」に対する懸念は投資家から最も注目される傾向が強く、「ガバナンス(Governance)」に対する配慮は基準として受け入れられているのに対し、「社会」要因は投資に組み込むのが相対的に難しいことが明らかになっています。

ヘルスケア企業に投資することは、こうした状況の解消に資するものと考えます。固形がんを標的とする新しい細胞療法を開発するための資金調達、治験設計の最適化や高齢者介護を改善するための先端的なデータ分析の活用等、ヘルスケア・セクターへの投資が健康的な生活を送り、長生きするための役に立つことは間違いありません。

新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)によって、健康と社会的成果との間には関連性があり、政策立案者からも社会全体からも関心を集めていることが明らかとなりました。こうした状況は、国連(UN)の「持続可能な開発目標(SDGs)」に端を発したESG活動の勢いを加速させています。「あらゆる年齢層のすべての人に健康な生活を確保し、幸福を促進する」というSDGsの3番目の目標を含む多くの目標は健康や医療の改善に関連するものですが、先進国においてさえ、課題は山積しています。欧州連合(EU)では、人口の3%以上が治療や検査に係るニーズを満たせていないことは、その一例です1

                                                                                                                           

                                                                                                                                                                         

ピクテは、ヘルスケア業界のイノベーションを支援し、活用するための極めて効果的な方法を、プライベート・エクイティ市場が提供出来ると考えています。

そう考えるわけは、未上場のヘルスケア企業が上場企業よりも圧倒的に多いからです。バイオ医薬品セクターに占める未上場企業の比率は、米国では85%、欧州では94%に達します2

社会的なインパクトをもたらす鍵となるイノベーションを担っているのも殆どが未上場企業です。米国を対象とした研究結果が示唆しているのは、バイオ医薬品分野のイノベーションが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症や乳がんおよび心臓病患者の致死率を下げることで、過去25年間に実現した平均寿命の延びの35%に寄与しているということです3。また、米食品医薬品局(FDA)の承認を受けた新薬のほぼ3分の2は、元々、年間売上高が1億ドル未満の中小企業によって開発されたものです4

企業を成功に導くための育成

プライベート・エクイティ市場の投資家には、投資先企業の成功の確率を上げるために、裁量をもって企業を育成する機会が提供されています。異なる分野の専門家で構成する組織を作ることや、医薬品業界の新興企業と大手企業との戦略的連携を図ることも可能です。

ピクテでは、投資家が株主としての権利を積極的に行使するアクティブ・オーナシップの重要性を確信し、ESGの課題等について、投資先企業との対話を重視しています。プライベート・エクイティ・ファンドや共同投資のパートナーとの対話についても同様です。

ピクテは、創業以来、2世紀以上の歴史を持つ企業として、ESG専任の社員を擁し、様々な持続可能投資を経験してきました。従って、ESGに関心を持つ投資家の先導役となり、助言を行うことが出来ると確信しています。

強い潜在能力

ピクテは、ヘルスケア・セクターの中でも、成長性、社会的インパクト、投資収益の面で、特に高い成果が期待出来ると考える重要分野を特定しています。

・治療薬

人工知能(AI)と機械学習の創薬設計や開発への応用が進んで効率性が増すと同時に、精密医療への道が開かれています。バイオ医薬品セクターは、ベンチャーキャピタル、バイアウト企業、双方の投資を受けて、力強い成長を遂げています。

診断

世界的な人口の高齢化に伴って、がん、糖尿病、心臓病等の慢性疾患がこれまで以上に患者を苦しめています。早期診断は、良好な結果につながる可能性を増すと同時に、患者の生活の改善と治療の長期化に因る医療費の節約につながります。また、液体生検等の新しい診断法には、侵襲性を下げる傾向がみられます。中・長期的には、個人が特定の疾病を発症する可能性を定量化し、発症を回避する手段を講じる機会を提供する可能性があります。

デジタルヘルス

デジタルヘルスは、国連の「持続可能な開発目標」の中でも特に重要な目標で、低所得者層が住む地域や医療支援が届きにくい地域に医療サービスを提供する鍵となります。国家レベルでは、デジタル基盤を構築することが、健康診断の受診格差等のリスクを特定するデータ分析を可能とします。

・ 医療技術

医療技術は、エンジニアリングと医師の医療専門知識を組み合わせて、医療機器、試薬、スマートインプラント等の開発を行います。

介護事業者

人口の高齢化により、医療費の新しい支払い方式や介護のモデルが必要となっており、テクノロジーとAIの活用が成果をもたらすことが期待される安全性と効率性の改善に焦点が当てられています。患者とのエンゲージメントの促進は優先事項です。医療従事者との接触回数が増えるほど、患者が指示を守り、行動が改善されるため、治療の成果が上がっています。

 

 

[1] Eurostat, 2019 data

[2] USA Life Sciences, Euronext

[3] "Contributions Of Public Health, Pharmaceuticals, And Other Medical Care To US Life Expectancy Changes, 1990-2015", J.Buxbaum et al

[4] FDA, HBM Analysis, HBM New Drug Approval Report 2019

[5] clinicaltrials.gov, FDA

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