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- 経済にとって最も重要な資産は自然であることを、金融業界は認識する必要がある
グローバル資本の管理者として、金融業界は自然に逆らうのではなく、自然と共に生きる経済の構築を支援するユニークな立場にあります。自然は常に、経済にとって最も重要な資産です。金融業界は、そろそろこのことを認識すべきではないでしょうか。
人類は、今もなお増え続けている人口を養うために、動物や植物を絶滅に追いやり、彼らの生息地を破壊しています。生物多様性の保全は、今や政策立案者にとって地球温暖化防止と同様に喫緊の課題となっています。今年12月にモントリオールで開催された、「国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」では生物多様性について話し合われ、各国政府が自然保護のための画期的な目標に対しての合意形成が期待されました。
しかし、このような議論は政策の場だけにとどまるべきでなく、金融業界もまた積極的に役割を果たしていくべきです。グローバル資本の管理者として、金融業界は自然に逆らうのではなく、自然と共に生きる経済の構築を支援するユニークな立場にあります。
また、これは金融業界の関心とも一致します。環境を守ることはもちろん大切ですが、同時に、経済的・財政的な話題でもあるのです。
水、土壌、鉱物などは、自然資本と呼ばれます。私たちは、直接的にせよ間接的にせよ、自然資本を使って、道路、機械、建物、工場、港などの資本財を作っています。そしてまた、私たちはそれを非常に速いペースで行ってきました。
あるデータによると、1992年から2014年の間に、一人当たりの資本財の生産量は2倍になりました。また、同期間に、世界の自然資本(水、土壌、鉱物)の一人当たりの資源量は約40%減少しました。
金融業界は、先進的な環境技術やサービスを開発する企業に投資を行うことで、エネルギー利用、農業、貿易、輸送などの分野の効率化に貢献してきました。例えば、アグリテック(農業技術)の発展により、世界では1961年当時と比較して、約3倍の穀物を生産できるようになりました。
しかし、効率を上げることは歓迎すべきことですが、それだけでは十分とは言えません。自然が経済に与える貢献度を具体的に測定し、価値をつける必要があることを、私たちは認識する必要があります。
米国政府は最近、2036年までに自然資本を国のバランスシートやGDPなどの公的な経済統計に組み込む計画を発表しました。自然資産はマクロ経済の中核をなすアセット・クラスであるにもかかわらず、現状では国のバランスシート上では計上されていないため、この問題は「GDPのよく知られた盲点」の1つであると、この計画では表現されています。
カナダでは、ウォータールー大学の「Intact Centre on Climate Adaptation」が、KPMGや非営利団体「Municipal Natural Assets Initiative」と協力して、自然資産から得られる財務的価値を認識するための会計規則の改正を呼びかけています。
将来的には、自然資本をバランスシート上で計上することが、投資家がアセット・クラスの投資収益率を評価し、新たな機会を見出す方法を変革する可能性があります。著名な経営コンサルタントであるピーター・ドラッカーは、こう言っています。「What gets measured, gets improved(測定できるものは、改善できる)」
特に投資家は、自然環境を悪化させるビジネスやプロジェクトから、自然と共存する解決策へと、資本の流れを変える手助けをすることで、重要な役割を果たすことができるのです。
国際的な共同体である「The Food and Land Use Coalition(食料・土地利用連合)」は、現行の食糧および土地利用の慣行を再生可能な手法に転換することで、2030年までに4.5兆米ドル相当の生物多様性マーケットを創出する可能性があると推定しています。
自然は常に、経済にとって最も重要な資産です。金融業界は、そろそろこのことを認識すべきではないでしょうか。
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