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シリコンバレー銀行の破綻から今後の投資環境を考え直す
2023/03/14

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概要

中央銀行による利上げは、時間をかけて実体経済に影響を及ぼします。シリコンバレー銀行(SVB)の突然の経営破綻もその例外ではありません。SVBの破綻の主な原因はその杜撰な金利リスク管理などにあるといえますが、利上げに伴う景気後退の可能性が高まる中で、資産運用においては慎重な姿勢が求められる局面であるといえます。



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新興テクノロジー企業が主な取引先だった米国のSVBの破綻は急速な金利上昇が及ぼす経済のひずみを表すものといえます。

SVBは、中央銀行のインフレとの戦いにおける犠牲者としてその名を残すことになりました。また、利上げの影響は時差を伴い実体経済に及ぶことが改めて示されました。

ただ、SVBの経営破綻がシステミック・リスクとはならないといえます。SVBは他に類を見ないほど不安定な立場にあり、特に2つの側面で脆弱であったといえます。まず、SVBは他の銀行と比較して十分に分散されていなかったことがあげられます。SVBの預金基盤はほとんど起業前後のアーリーステージのテクノロジー企業で構成されていました。これらの企業は2021年に大規模な資本調達を行うことができましたが、その後は資金繰りが困窮しました。

次に、リスク管理体制が脆弱であったことがあげられます。SVBは、預金残高の急速な増加ペースに合わせて貸出残高を増加させることができなかったため、顧客の資金を米国の長期国債や住宅ローン担保証券(MBS)に投資することを選択しましたが、これらの資産のデュレーションリスクをヘッジしていませんでした。つまり、金利上昇時に発生する可能性のある損失に対する保険がないまま、こうした投資を行っていたのです。

その結果、負債である預金と資産のデュレーションにミスマッチが生じたのです。そのため、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利を引き上げ、SVBの顧客が資金を引き出し始めると、SVBは多額の損失を出して債券を売却せざるを得なくなりました。そして、債務超過に陥ったことで、経営破綻に至りました。

しかし、このような事態が起こったからといって、世界が信用収縮に見舞われるとは限りません。SVBの分散の欠如と脆弱なリスク管理は、銀行業界全体の特徴ではないからです。米国では、金融システムにおいて重要な大手銀行に対するリスク管理やポートフォリオ損失の報告に関する規制が大幅に強化されてきました。欧州では、すべての銀行の投資ポートフォリオは時価評価が義務付けられています。さらに、SVBの預金を全額保護する措置など、米国の規制当局が導入した一連の対応策は、取り付け騒ぎが他の銀行にも拡大するリスクを大幅に低減しています。

SVBの破綻により、中央銀行は利上げペースの減速を余儀なくされることが考えられます。中央銀行は今後、利上げが金融システムの安定に及ぼしうる影響を考慮する必要があるでしょう。そのため、米国における量的引き締め(債券などの保有資産の圧縮)を早期に終了する可能性があります。また、FRBが次回の会合で0.5%の利上げを行うことは極めて困難になったと考えられます。ピクテでは0.25%の利上げの実施を予想していますが、金利を据え置く可能性も排除していません。

SVBの破綻は、利上げが時間をかけて経済に影響を及ぼすことを改めて認識させるもので、景気後退の可能性がこれまで投資家が想定していたよりも高いことを示唆しています。コロナ禍において家計の貯蓄が積み上がり、企業が与信枠に容易にアクセスできたことにより、金利上昇による悪影響の経済活動への波及が緩やかなものとなりました。しかし、SVBの破綻は、金利上昇に伴う借入コストの上昇が、経済に影響を及ぼし始めていることを示しています。やはり、景気後退の可能性は、多くの投資家が想定していたよりも高くなったと思われます。

金融市場の多くの分野では、景気後退のリスクをまだ十分に織り込んでいないと思われます。市場参加者は足元のサイクルを「成長サイクル」ではなく「インフレサイクル」と見なし続けてきましたが、これは景気後退のリスクが資産のバリュエーション評価に十分に織り込まれていないことを意味します。景気敏感株式や小型株、ハイ・イールド債など、多くの資産が脆弱な状況にあると思われます。また、市場参加者が経済に対するリスクの高まりを意識し始めることで、株式市場の動向が変化することが予想されます。このような環境においては、これまでのサイクルで苦戦を強いられてきた優良株がアウトパフォームすることが期待されます。今後、物価上昇圧力が弱まるにつれて、中期的な株式と債券の相関がマイナスに転じ、バランスファンドの優位性が復活するものと考えます。また、ドル安とともに実質金利の安定と低下が見込まれる中で、金の魅力も増していくことが想定されます。

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