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2022年3月の新興国株式市場と今後の見通し
2022/04/08

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概要

2022年3月の新興国株式市場(MSCI新興国株価指数、現地通貨ベース)は月間で下落となりました。
主要国別の市場動向、今後の見通しについてご紹介いたします。
※記載内容はすべて海外市場の月末1営業日前ベースでのコメントになります。



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2022年3月の新興国株式市場

新興国株式市場(MSCI新興国株価指数、現地通貨ベース)は月前半、ロシア・ウクライナ情勢の緊迫化に加えて、欧米がロシアへの制裁措置としてロシア産原油等の輸入禁止を検討していることが伝わると、原油価格が一段高となり、世界的なインフレ懸念が強まったことなどから下落基調となりました。月半ばには、米国証券取引委員会(SEC) の発表を受けて、中国企業のADR(米国預託証券)の上場廃止懸念が高まったことや、中国とロシアの緊密な関係から新たな制裁リスクがあるとの見方も加わり、中国のテクノロジー関連銘柄などを中心に大きく下落しました。さらに、中国本土での新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて、一部で都市封鎖が実施されたことなどもマイナス材料となりました。その後、月後半にかけては、中国当局が企業会計監査に関する米中対立の解決に向けた姿勢を示したことなどが、株価の下支えとなりました。また、ロシアとウクライナの停戦交渉への期待なども、新興国株式をはじめ世界の株式市場にとってプラス材料となりました。しかし、月前半の下落を相殺するには至らず、新興国株式市場は月間で下落となりました。

主要国別、セクター別の動き

国別(MSCI新興国各国指数、現地通貨ベース)では、ブラジルは、資源価格の上昇や、景気の下押し圧力となっていた利上げサイクルが終了に近づいているとの見方に加えて、相対的なバリュエーション(投資価値評価)水準の割安感などを背景に、金融や素材セクターなどを中心に上昇しました。インドは、原油純輸入国であり、原油高は経済にとってマイナスの影響をもたらすとの懸念はありますが、主力の情報技術セクターが堅調に推移したことを受けて、全体では上昇となりました。南アフリカも、資源価格の上昇が経済にプラスの恩恵をもたらすとみられることなどから上昇しました。韓国は、大統領選挙で保守系野党候補が当選し、規制緩和が進むとの楽観的な見方などから選挙後に上昇しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからないことは依然として経済にマイナスとの見方が強く、小幅な上昇にとどまりました。台湾は、10年ぶりの利上げが実施されたことを受けて金融セクターは上昇しましたが、主力の情報技術セクターなどは下落し、全体では前月比でほぼ横ばいとなりました。中国は、中国企業のADRの上場廃止懸念の高まりや、新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて、一部で都市封鎖が実施されたことなどがマイナス材料となり、相対的に下落率が大きくなりました。

なお、西側諸国によるロシアへの制裁強化の中で、主要株価指数提供各社より、代表的な新興国株価指数からロシアを除外する措置が発表されました。

セクター別(現地通貨ベース)では、公益や金融などが上昇しました。一方、エネルギーのほか、生活必需品などの消費関連やコミュニケーション・サービス一などが下落しました。

※記載内容はすべて海外市場の月末1営業日前ベースでのコメントになります。

今後の見通し

長期的には、新興国経済は、若い労働人口が豊富であることなどを背景に、中間所得層の持続的な拡大や構造変化に後押しされ、先進国を凌ぐ成長力を有しているとの見方には変更ありません。

しかし、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって、新興国のみならず世界経済の先行き不透明感は足元で増しており、当面は注視が必要であると考えます。ただし、コロナ禍からの経済再開の中で資源価格はこれまでも上昇基調にありましたが、資源高にはさらに拍車がかかるとみられ、新興国の中でも資源国についてはプラスの恩恵を受ける可能性もあるとみています。トルコなど高インフレが長期化している一部の国については懸念が残るものの、新興国全体としては、先進国を上回る経済成長が期待できるとみています。

足元では引き続き、新型コロナウイルスの変異株による感染再拡大によって経済へのマイナスの影響も懸念されていますが、これも長期的な経済成長見通しには大きな影響を及ぼさないと考えています。短期的にも、ワクチン接種率の上昇などにより、新型コロナウイルスの感染状況によるマイナスの影響は漸減していくものとみています。

アジアを中心に新興国は「デジタル化」や「テクノロジー」の分野をけん引する存在であるとともに、脱炭素など世界的な環境課題においても、Co2(二酸化炭素)排出削減などで重要な役割を担いつつあるとみており、これまで見過ごされてきた、あるいは新たな価値の発掘につながる可能性があると期待しています。

新興国株式のバリュエーション(投資価値評価)については、先進国株式に比べて依然として魅力的な水準にあり、新興国株式市場を下支えする材料になると考えられます。また、新興国通貨についても、引き続き米ドルに比べて相対的な割安感があるとみています。

(※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合があります。)


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