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2022年6月の新興国株式市場と今後の見通し
2022/07/08

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概要

6月の新興国株式市場(MSCI新興国株価指数、現地通貨ベース)は月間で下落となりました。主要国別の市場動向、今後の見通しについてご紹介いたします。
※記載内容はすべて海外市場の月末1営業日前ベースでのコメントになります。



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2022年6月の新興国株式市場

新興国株式市場は月前半、米国の利上げ観測や景気後退(リセッション)懸念などが重荷となった一方、中国の景気刺激策への期待やテック関連企業に対する締め付け強化の流れに一巡感がみられたことなどがプラス材料となり、一進一退の推移となりました。その後、米国の5月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で大幅な上昇となり、米長期金利が急上昇しました。米連邦準備制度理事会(FRB)は大幅利上げを決定したほか、欧州でも利上げが相次ぎました。こうした流れの中で、投資家のリスク回避の動きが強まり、月半ばには世界的な株安となりました。月後半には、米国の積極的な利上げ観測が景気に対する懸念の高まりなどからやや後退し、反発する局面もありましたが、月間では下落となりました。なお、米国をはじめ世界的な景気後退懸念を受けて、原油などの資源価格も下落しました。

主要国別、セクター別の動き(現地通貨ベース)

国別(現地通貨ベース)では、中国は、景気刺激策や金融緩和期待に加えて、これまで中国株式の株価の重荷となっていたテック関連企業への締め付け強化の流れに一巡感がみられたことなどが安心材料となり、大きく上昇しました。また、新型コロナウイルスの感染者数減少を受けて、各種制限措置が緩和されつつあり、景気回復期待も高まっています。インドは、インフレ圧力が強まっていることを受けてインド準備銀行(中央銀行)が2ヵ月連続の利上げを決定したことなどが株価の重荷となったほか、米国や欧州などの金融引き締めの流れを受けて、海外投資家が資金を引き揚げる動きを加速するとの懸念もマイナス材料となりました。こうした環境下、金融セクターや情報技術セクターを中心に下落しました。南アフリカは、資源価格の下落を受けて素材セクターなどを中心に下落しました。韓国や台湾は、世界的な景気減速懸念を背景に、主力の情報技術セクターを中心に相対的に大きく下落しました。ブラジルは、ブラジル中央銀行による追加利上げ観測などから、景気減速懸念が高まったほか、米国や欧州などの金融引き締めの流れを受けて、投資家がリスク回避姿勢を強めたことなどもマイナス要因となり、下落しました。

セクター別(現地通貨ベース)では、一般消費財・サービス、ヘルスケアなどは上昇しました。一方、情報技術、素材、金融などは相対的に大きく下落しました。

今後の見通し

長期的には、新興国経済は、若い労働人口が豊富であることなどを背景に、中間所得層の持続的な拡大や構造変化に後押しされ、先進国を凌ぐ成長力を有しているとの見方には変更ありません。

足元では、ウクライナ情勢の長期化や、世界的なインフレの高止まり、米国をはじめとした主要中央銀行による金融引き締めの動きなどを背景に、世界経済の先行き不透明感が増しています。こうしたことは、短期的には新興国にもマイナスの影響を与える懸念があります。しかし、中長期的な経済成長見通しに大きな影響を及ぼさないと考えています。

アジアを中心に新興国は「デジタル化」や「テクノロジー」の分野をけん引する存在であるとともに、脱炭素など世界的な環境課題においても、CO2(二酸化炭素)排出削減などで重要な役割を担いつつあるとみており、これまで見過ごされてきた、あるいは新たな価値の発掘につながる可能性があると期待しています。

新興国株式のバリュエーション(投資価値評価)については、先進国株式に比べて依然として魅力的な水準にあり、新興国株式市場を下支えする材料になると考えられます。新興国通貨についても、引き続き米ドルに比べて相対的な割安感があるとみています。


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