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2022年9月の新興国株式市場と今後の見通し
2022/10/11

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概要

9月の新興国株式市場(MSCI新興国株価指数、現地通貨ベース)は月間で下落となりました。主要国別の市場動向、今後の見通しについてご紹介いたします。
※記載内容はすべて海外市場の月末1営業日前ベースでのコメントになります。



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2022年9月の新興国株式市場

新興国株式市場は月初、中国四川省成都市が新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ロックダウン(都市封鎖)を発表したことで中国経済の減速懸念が高まったほか、米国をはじめとした世界の主要中央銀行の金融引き締めによる経済へのマイナスの影響が意識され、低調なスタートとなりました。月半ばには、8月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比で予想を上回る伸び率であったことを受けて、米国の積極的な金融引き締めが続くとの見方が強まり、金利上昇に敏感なハイテク銘柄などを中心に世界的な株安となりました。さらに、月後半に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅利上げと追加利上げの可能性が示されたことに加えて、英国やスイスなどが相次いで利上げを発表したことなどから、世界的な景気後退(リセッション)懸念が高まり、世界の株式市場は一段の下落に見舞われました。こうした市場環境の中で投資家のリスク回避の動きは強まり、新興国株式市場は月間で大きく下落しました。

主要国別、セクター別の動き(現地通貨ベース)

国別(現地通貨ベース)では、ブラジルは、経済成長見通しの改善や、インフレ率予想の下方修正などがプラス材料となりましたが、原油価格下落などを受けて主力のエネルギー銘柄を中心に下落しました。インドは、生活必需品やヘルスケアなどのディフェンシブ(景気変動の影響を受けにくい)銘柄は底堅かったものの、市場全体では下落となりました。南アフリカは主力のメディア銘柄や金融セクターの銘柄などを中心に下落しました。台湾と韓国は、米中の景気悪化懸念などを背景に主力の半導体をはじめとする情報技術セクターの銘柄を中心に大きく下落しました。中国は、成都市のロックダウンなどゼロコロナ政策による中国経済の減速懸念の高まりが重荷となり、全面的に下落となりましたが、特にインターネット関連などのグロース銘柄を中心に下落率が大きくなりました。

セクター別(現地通貨ベース)では、全セクターが下落する中、生活必需品の下落率は相対的に小幅にとどまりました。一方、コミュニケーション・サービス、一般消費財・サービス、情報技術などは相対的に下落率が大きくなりました。

今後の見通し

長期的には、新興国経済は、若い労働人口が豊富であることなどを背景に、中間所得層の持続的な拡大や構造変化に後押しされ、先進国を凌ぐ成長力を有しているとの見方には変更ありません。

足元では、ウクライナ情勢の長期化や、世界的なインフレ率の高止まり、米国をはじめとした主要中央銀行による金融引き締めの動きなどを背景に、世界経済の先行き不透明感が増しています。こうしたことは、短期的には新興国にもマイナスの影響を与える懸念があります。しかし、中長期的な経済成長見通しに大きな影響を及ぼさないと考えています。

中国に関しては、不動産セクターの低迷やゼロコロナ政策によるロックダウン実施などを受けて、景気減速懸念が高まっていますが、こうした状況に対して、10月半ばに開催される中国共産党全国代表大会でどのような政策の方向性が示されるかが注目されます。

アジアを中心に新興国は「デジタル化」や「テクノロジー」の分野をけん引する存在であるとともに、脱炭素など世界的な環境課題においても、CO2(二酸化炭素)排出削減などで重要な役割を担いつつあるとみており、これまで見過ごされてきた、あるいは新たな価値の発掘につながる可能性があると期待しています。

新興国株式のバリュエーション(投資価値評価)については、先進国株式に比べて依然として魅力的な水準にあり、新興国株式市場を下支えする材料になると考えられます。新興国通貨についても、引き続き米ドルに比べて相対的な割安感があるとみています。


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