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2022年11月の新興国株式市場と今後の見通し
2022/12/08

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概要

11月の新興国株式市場(MSCI新興国株価指数、現地通貨ベース)は月間で上昇となりました。主要国別の市場動向、今後の見通しについてご紹介いたします。
※記載内容はすべて海外市場の月末1営業日前ベースでのコメントになります。



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2022年11月の新興国株式市場

新興国株式市場は月半ばにかけて、中国当局がゼロコロナ政策の段階的な脱却に向けて準備を進めつつあるとの観測が強まったことや、米消費者物価指数(CPI)の伸びが予想以上に鈍化したため、米金融当局が利上げペースを減速させるとの期待などから上昇基調となりました。また、低迷する中国の不動産業界に対して中国当局が救済策を打ち出したことなども追い風となりました。月後半には中国で新型コロナウイルスの感染が急拡大し、再び経済活動の規制が強化されるとの懸念が高まったほか、ゼロコロナ政策に対して中国各地で市民の抗議活動が発生したこと、米国の金融政策動向を見極めようとする動きなどを受けて下落する局面もありましたが、月間では上昇となりました。

 

主要国別、セクター別の動き(現地通貨ベース)

国別(現地通貨ベース)では、中国は、ゼロコロナ政策の緩和や、不動産業界の救済措置を打ち出したことなどがプラス材料となり、大幅上昇となりました。台湾は、主力の半導体関連企業などを中心に大きく上昇しました。南アフリカは、主力のインターネット・メディア企業の株価が大幅上昇したほか、金価格の上昇などを受けて金鉱企業の株価も堅調であったことなどから、上昇しました。韓国は、主力の情報技術セクターを中心に上昇しました。インドは、米金融当局が利上げペースを減速させるとの期待から、資金流出懸念が後退したほか、ルピー安の一服などがプラス材料となりました。また、原油安となったことや、足元の国内インフレ率も鈍化しつつあることなどが安心材料となり、堅調な推移となりました。一方、ブラジルは10月から一転し、下落となりました。原油安に加えて、来年1月に大統領に就任するルラ氏の政策を巡って、財政悪化懸念が高まったことなどがマイナス材料となりました。

セクター別(現地通貨ベース)では、全セクターが上昇となる中で、不動産が大幅上昇となったほか、コミュニケーション・サービスや一般消費財・サービスなども上昇率が大きくなりました。一方、エネルギーは小幅な上昇にとどまったほか、公益事業や金融も市場平均を下回る上昇率となりました。

今後の見通し

長期的には、新興国経済は、若い労働人口が豊富であることなどを背景に、中間所得層の持続的な拡大や構造変化に後押しされ、先進国を凌ぐ成長力を有しているとの見方には変更ありません。

足元では、ウクライナ情勢の長期化や、世界的なインフレ率の高止まり、米国をはじめとした主要中央銀行による金融引き締めの動きなどを背景に、世界経済の先行き不透明感が増しています。こうしたことは、短期的には新興国にもマイナスの影響を与える懸念があります。また、中国などを中心に、新型コロナウイルスの感染再拡大による経済活動への影響に対する懸念も、依然として残っています。しかし、これらのことは、新興国の中長期的な経済成長見通しに大きな影響を及ぼさないと考えています。

 

アジアを中心に新興国は「デジタル化」や「テクノロジー」の分野をけん引する存在であるとともに、脱炭素など世界的な環境課題においても、CO2(二酸化炭素)排出削減などで重要な役割を担いつつあるとみており、これまで見過ごされてきた、あるいは新たな価値の発掘につながる可能性があると期待しています。

 

新興国株式のバリュエーション(投資価値評価)については、先進国株式に比べて依然として魅力的な水準にあり、新興国株式市場を下支えする材料になると考えられます。新興国通貨についても、引き続き米ドルに比べて相対的な割安感があるとみています。


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