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急成長する植物性食品ビジネスの創出
2023/01/16

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概要

ラテシャ・ランドールは、自宅の台所を使って始めた、乳成分を含まないヨーグルト作りを、おいしさとサステナビリティ(持続可能性)とを融合させ、世界中で高い評価を得る植物由来の食品製造事業へと発展させました。



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「気候変動は足元に忍び寄り、地域社会にも国土全体にも、また、モノの値段にも影響を及ぼしています。あらゆるものに影響を及ぼしているのです。」

ラテシャは、オーストラレーシア(オーストラリア、ニュージーランド、ニューギニア島、およびその周辺海域の諸島)に拠点を置く、サステナブル(持続可能)で小規模な食品事業の中で、最も評価の高い企業の一つを経営しています。ラテシャの会社の原点は食物アレルギーです。パートナーに乳製品アレルギーがあったことに加えて、ふるさとであるニュージーランドのスーパーマーケットには、乳成分を含まない、おいしいヨーグルトが売られていなかったことが、ヨーグルト作りを始めたきっかけとなりました。2014年創業のラグランド・フード・カンパニーは、植物由来の食品製造業界を率いる企業に成長し、今ではシンガポール、香港、アラブ首長国連邦(UAE)に製品を輸出しています。また同時に、業績、説明責任、ならびに透明性に係る高い基準を満たしていることが要件の「Bコーポレーション」認証を取得しています。同社は、炭素中立を目標に掲げるカーボン・ニュートラル企業でもあり、2015年にはニュージーランド食品賞のグルメ部門賞およびピープルズ・チョイス部門賞、2016年にはウェストパック・ワイケイトー賞のマイクロ・ビジネス部門賞等、数多くの賞を受賞しています。

ラテシャは、主力製品の植物性ココナッツ・ヨーグルト、「ナチュラル・ギリシャ・ヨーグルト」について、「食生活を通じて環境に与える影響を改善し、動物を傷つけず、プラスチックの使用量を減らしたいと考える人が増えていることが事業の原動力になっています。もっとも、味という肝心の要素が欠けていれば事業は成り立ちません」と話しています。ラテシャは、自分の製品が乳成分を含む普通のヨーグルトと同じくらい、あるいは、それ以上においしいことを確信しています。

                                                  

                                                   

ラテシャは会社を興した時、乳成分を含まず、かつ、おいしいヨーグルトが買えないことを不満に思い、自分で作ることを決断しました。材料や製法を調べ、試行錯誤を繰り返した後、完成させたヨーグルトの一つがココナッツクリームをベースにしたヨーグルトだったのです。ラテシャは、大量に作ったヨーグルトの残りを、ニュージーランド北島の小さな海岸沿いの町ラグランで、地元の住人に販売することを思い立ち、フェイスブック・グループに宣伝を兼ねて投稿しました。60人から返信があり、全員がヨーグルトを食べてみたいとコメントしていました。

ラテシャはあわててしまいました。手元にはヨーグルトの瓶が2つしか残っていなかったからです。同時に、フェイスブック・グループから寄せられた返信が、満たされていない需要を示唆していることにも気付きました。そこで、需要を満たすべく、手作業でヨーグルト作りを続けました。また、プラスチック製の容器を買わずに、リサイクル・センターで入手した瓶のラベルを剥がして洗浄し、自分の台所にあった調理器具を使って、一定量ずつ、ヨーグルトを作りました。「売れ行きは上々で、とても好評でした」。趣味が高じて、瞬く間に仕事になったのです。ラグラン・フード社と名付けられた会社は、作業場を自宅の台所から輸送用コンテナを改装した大型キッチンに移し、その後は、近所の床面積が200平方メートルの建物、次に800平方メートルの建物に移して、今では1,500平方メートルの建物を拠点としています。

同社は30人の従業員を擁し、乳成分を含まないヨーグルト製造ではニュージーランド国内で最も大きな会社ですが、同時に、ヨーグルト製造業では国内初の「ゼロ・カーボン」企業です。1  目的よりも利益を優先する起業家は、ラテシャの立場にいたとしても、こうした決断をしなかったかもしれませんが、彼女には選択の余地はありませんでした。「事業の運営方法には、長い間、欠陥があったのですが、その代償を私達は今、社会全体で払っているのです。気候変動は足元に忍び寄り、地域社会にも国土全体にも、また、モノの値段にも影響を及ぼしています。あらゆるものに影響を及ぼしているのです。」

ラテシャは、問題が深刻化しつつあることも懸念しています。「私達は、長い間、自分達の問題を地球に押し付け、地球に代償を払わせてきたのだと思います」と、述べる彼女は、「気候変動という非常事態下での生活、という厳しい現実を考えると、今後は、より多くの企業が目的志向の経営モデルを追求すべきであって、それは社会と政府からも期待されることになる」と、考えています。

                                                   

                                                       

もっとも、こうした取り組みには困難が伴います。「くじけそうになることもあります」と、ラテシャが認めているのは、最善の意図を持ってしても、存在意義のある企業を、環境に配慮して運営する方法を見つけることは容易ではないからです。ラグラン・フード社のヨーグルトの主な原料はココナッツクリームですが、ココナッツはニュージーランドでは栽培されていないため、インドネシアから輸入しています。従って、輸入の過程で二酸化炭素(CO2)が排出され、CO2排出量を相殺するためのコストが発生します。また、ラテシャの果たすべき仕事のリストにある海外事業の拡大についても、ヨーグルトの容器にしているガラス瓶が、ニュージーランド以外の国でリサイクル出来るかどうかを確認しなければなりません。

ラグラン・フード社の輸出先、すべての国に、ニュージーランドと同じようなリサイクル制度があるわけではありません。「ニュージーランドでは、使用済みのガラスの75パーセントを回収しており、欧州には回収率が95%に達する国もありますが、一方、米国の回収率の全国平均は33%前後と世界平均を大きく下回り、アジアでは、中国やシンガポールの20%から台湾の92%と格差が顕著です。

ラグラン・フード社は、お弁当用のパウチ入りヨーグルトの販売を計画していますが、信頼性が高く、丈夫で、生分解ならびに堆肥化が可能なパウチを見つけるのは至難の業です。従って、適切なパッケージが見つかるまでは製品開発が進まず、チャンスをみすみす逃しているのです。

とはいえ、同社は成長を続けており、数年以内にも海外事業の拡大を見込んでいます。志を同じくし、「残り少ない時間で地球を救うこと」という目的が利益よりも重要だと考える従業員に支えられているからです。「人間は賢明ですし、やる気を持っています。世間が思っている以上にこうした取り組みに関心を持っていて、しかも強い勢いが感じられます」。ラテシャは勢いを最大限に活かそうと決意しています。

 

1 https://www.springwise.com/innovation/food-drink/carbon-zero-bcorp-yoghurt/

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