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中国の経済再開で、期待が高まるプレミアム・ブランド
2023/02/22

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概要

ゼロコロナ政策の終了を受けて中国の経済再開が期待される中、中国の消費需要が大きく回復することが期待されます。この流れの中で、中国の高級ブランド品市場は恩恵を受けると期待されます。



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高級ブランド品市場の成長をけん引する「中国」の今

中国政府は、2023年1月にゼロコロナ政策を終了し、景気支援へと政策の舵を切ったことは、プレミアム・ブランドの代表格である高級ブランド企業にとって、大きな恵となるとみられます。多くの高級ブランド企業は、中国のゼロコロナ政策下の経済低迷という難局でも、相対的にはうまく乗り越えてきましたが、今回の中国政府の政策転換により、これまで消費者が控えてきた需要が大きく回復に向かうと予想されることは、大きなプラス材料となるでしょう。

中国の高級ブランド品需要は、コロナ禍において減少傾向もみられましたが、中国の富裕層については引き続き旺盛な需要を示しました。彼らの一部は、海外で高級ブランド品の購入を続け、世界的な高級ブランド品市場(販売額、以下同様)の回復に貢献したとみられます。

また、中国の消費者は、これまで経験したことのないスポーツや学びの機会(例えば、カヤックに挑戦する、絵画教室に通うなど)への関心を高めている模様です。加えて、中国独自のプレミアム・ブランドへの関心も高まりつつあります。主要なプレミアム・ブランド企業のいくつかでは、中国が2025年までに世界最大の高級ブランド品市場に成長すると予想しています(注1)。

ただし短期的には、依然として残る政策動向や景気動向の先行き不透明感や、消費者の嗜好の変化などが、高級ブランドをはじめとしたプレミアム・ブランド企業にとって乗り越えなければならないハードルとなる可能性もあり、その動向を注意してみていく必要があるでしょう。中国の高級ブランド品市場は、コロナ禍であった2021年までは拡大を続けたものの、2022年は減少に転じました(注2)。

先の中国共産党大会では、習体制のさらなる強化が図られ、中央政府による統制が強まる可能性が高まりました。こうした流れは、中国の民間部門を弱体化させることが懸念されます。また、ゼロコロナ政策によって、中国経済は大きなマイナスのインパクトを受け、渡航制限などにより世界との人の行き来も事実上ゼロとなりました。さらに、不動産セクターの低迷もマイナスの影響となりました。というのも、中国の家計における資産の約7割は不動産であるからです。中央政府による民間部門(例えば、教育サービス企業やネット関連企業)への規制強化も、こうした企業が人員削減などを行ったことにより、消費者心理にマイナスの影響を及ぼしました。さらに懸念されるのは、若年層の失業率が高水準であることです。

高まる消費回復期待

しかし、ゼロコロナ政策が終了し、不動産セクターへの支援策を打ち出すなど、中国政府が政策転換する中で、中国経済はその恩恵を受けて回復に向かうとの期待は高まっています。ピクテでは2023年の中国経済について、先進国経済を上回る成長を予想しています。また、2022年年末時点では、中国の家計における余剰貯蓄(ここでは過去6年間のトレンドとの比較した試算)は可処分所得の約8%にまで拡大しており、GDP比では同20%に匹敵する規模にまで積み上がっていると推定しています。

中国の家計に積み上がった余剰貯蓄は、消費拡大の原動力となり、高級ブランド商品の消費拡大につながるとも期待されます。前述の通り、2025年までに中国は世界最大の高級ブランド品市場になるとの予測もあります。中国市場の拡大は、世界の高級ブランド品市場の成長をけん引すると期待されます。また、伝統的で高価な漢方薬や伝統技法などをベースとした中国独自の高級ブランド品についても見直す動きもあり、需要が拡大する可能性があるとみています。こうした中国独自の高級ブランド品については、中国政府による政策的な後押しもあるとみられます(注3)。

中国の消費者は、消費行動を変化させています。高級ブランド品に対しては根強い需要があるものの、それ以上に質の高い「経験」への関心が高まっています。特に、超富裕層では、高級ブランドのバッグや時計を追加購入するよりも、教育、ヘルスケア、絵画や楽器演奏などの習い事やスポーツ体験などによりお金をかけるようになる可能性もあります。中国政府も、国民に対して様々なスポーツの普及に力を入れてきましたが、こうした動きが実際に一部のプレミアム・ブランド企業に恩恵をもたらしています。足元では特に、ヨガ人気が高まっています。

中国で事業を展開する高級ブランド企業には、依然として大きな改善余地が残されています。2022年の困難な局面でも、高い増収率を継続できたのは、一部の超高級ブランド企業だけでした。その一方で、中国の消費者の高級ブランドに対する需要は依然として旺盛です。

過去数十年間の景気回復期待が高まった局面で、高級ブランドをはじめとしたプレミアム・ブランド企業は一様に需要を回復させてきましたが、それが今回も繰り返されるかはわかりません。しかし、少なくとも、特に強力なブランド力を有する企業、ニッチな分野で活躍する特色ある企業にとっては、明るい展望が持てると考えています。

 

注1: https://www.scmp.com/lifestyle/fashion-beauty/article/3164527/china-be-biggest-luxury-market-2025-say-consultants-after?module=inline&pgtype=article

注2: https://www.assemblyglobal.com/reports/china-luxe-report-2022

注3:https://daxueconsulting.com/chinese-luxury-brands-report/

 


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