Article Title
投資家は「ウォーター・スチュワードシップ」をどう実践したらよいか?
2023/04/18

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

国連が3月22日に設定した「世界水の日(World Water Day)」は、淡水が私達一人一人にとっていかに重要なものであるかを思い起こさせてくれます。国連の持続可能な開発目標(SDGs)6が掲げる「安全な水と衛生の普遍的、持続的、かつ手頃な料金でのアクセス」は、私達が追求し続けなければならない喫緊の課題の一つです。



Article Body Text

「水を巡る課題は、環境や社会の問題であるだけでなく、経済の問題でもあるのです。」

水を巡る課題は、環境や社会の問題であるだけでなく、経済の問題でもあるのです。水を巡る課題が原因の病気や死亡を減らし、生産性を改善することで得られる経済的利益は、年間1,700~5,600億米ドルに達するものと試算されています1

淡水循環が気候変動の脅威に晒される一方で、世界の淡水システムの機能と分配を左右しているのは、人間活動の直接的な影響です2。淡水が両面で課題に直面する中、投資家は複数の手段を用いて自然のシステムを尊重する、持続可能な水へのアクセスを実現する取り組みを推進することが可能です。



「未公開企業に効果的に資金を投じることで、安全な水と衛生の普遍的なアクセスへの移行を支援することが可能です。」

巨額の資産を保有するアセット・オーナーや投資家は、以下の手段を通じて、ウォーター・スチュワードシップに参加することが可能です

1.  上場企業投資

アクティブ・オーナーシップ活動(議決権行使とエンゲージメント(対話)):上場企業の投資家は、企業のデューデリジェンスやアクティブ・オーナーシップを通じて、水へのアクセスに係る基本的人権に整合する、自然由来のソリューションに事業を転換するよう企業を促すことが可能です。アクティブ・オーナーシップの実践は、年次株主総会における議決権行使や企業経営陣との直接的なエンゲージメントを通じて行うことが可能であり、後者については、一対一のエンゲージメントまたは「Valuing Water Finance Initiative(バリューイング・ウォーター・ファイナンス・イニシアティブ)」等の、協働エンゲージメントのいずれの形態で行うことも可能です。

ウォーター・ソリューション:投資家は、水ソリューションを提供する上場企業への投資を行うことも可能です。例として挙げられるのは、水質の改善、水道管の改修、無収水量低減のためのシステムのモニタリングや機能の改善など、効率的で費用対効果の高い水処理システムや水インフラに必要な部品を開発する企業への投資です。

2.ソブリン債

大口投資家は、ソブリン債を新規に発行する政府や政府機関との間で、水と衛生に係る基本的人権ならびに国連のSDGs6の支持に重点を置いた建設的な水政策の立案を目標とするエンゲージメントを行うことが可能です。

3.グリーン・ボンド(環境債)

グリーン・ボンド(環境債)等、インフラ債の一部は、目標の達成度に連動した魅力的な価格設定が可能となる債券の発行を通じて、水処理施設の建設や給水網の敷設を支援します。また、グリーン・ボンドの発行体とのエンゲージメントを通じて、SDGs6の効果的な実践と、水と衛生のアクセスに係る基本的人権の尊重を実現するための取り組みに資することが可能です。

4.アーリーステージのプライベート・エクイティ

スマート・メーターの開発や、データのリアルタイムの収集、送信、分析、表示のモニタリングなど、最も革新的なソリューションが未上場企業によって提供されることがあります。こうした企業への投資は、本質的に高いリスクを伴う一方で、成功した場合には大きな金銭的リターンが得られます。

5.  慈善事業

慈善家は、低所得者層向け仮設住宅用の上下水道管の敷設や、給水管引き込み費用の引き下げならびに持続可能な水道料金の設定等、使途を絞ったプロジェクトを支援することが可能です。また、水管理のベスト・プラクティスを導入・共有すると同時に、国連のSDGs6に対する意識を高めるために、上下水道業者の管理職や現場作業員向けの研修や能力開発プログラムを支援することも可能です。

未公開企業に効果的に資金を投じることで、安全な水と衛生の普遍的なアクセスへの移行を支援することが可能です。プライベート・エクイティ投資に伴うリスクとリターンのトレード・オフは、主流の上場株式投資と同様に魅力的です。また、水循環に及ぶ負の影響の軽減に焦点を当てた積極的なオーナーシップ活動を実践することで、プライベート・エクイティ投資に伴う長期的なリスクを低減することも可能です。



「水のソリューションに関しては、上場株式の投資家と未上場株式の投資家が同じ課題を共有しています。」


 

■ ピクテのWater Stewardship Principles(ウォーター・スチュワードシップ・プリンシプル)

ピクテは、人間の基本的人権である水と衛生への普遍的なアクセスの実現を掲げる国連の持続可能な開発目標(SDGs)6を、ピクテ・グループを通じて、支援し、促進します。

上場株式を対象とするインパクト投資

水や環境関連企業に資金を投じ、アクティブ・オーナーシップ活動を通じて、国連SDGsの促進を図る株式戦略を用いた運用を継続します。

国債投資

ソブリン債の発行体である政府および政府機関とのエンゲージメントを通じて、SDGs6を実践するための政策を支援します。

社債および上場株式投資

水循環に重大な影響を及ぼす民間発行体に対し、Valuing Water Finance Initiative(バリューイング・ウォーター・ファイナンス・イニシアティブ)等の協働エンゲージメントを通じたエンゲージメントを行って、SDGs6を支援し、持続可能な水資源の利用に係るベスト・プラクティスを導入するよう促します。

プライベート・エクイティ(未公開企業)投資

未公開企業やベンチャー・プロジェクトへの投資に際し、水分野あるいは水循環の影響を被る、または、水循環に好ましいインパクトをもたらす分野の双方で、水管理のベスト・プラクティスを体系的に実践するよう働きかけます。

慈善活動

ピクテ・グループ財団を通じ、国連のSDGs6を支援する水関連プロジェクトのうち、金銭的リターンが見込まれないプロジェクト、または、金銭的リターンとは関連性のないプロジェクトへの資金提供を継続すると同時に、立ち上げ時に資金を必要とするプロジェクトに助成金を支給します。

 

 

注1       Stockholm Resilience Centre. Planetary Boundaries
(ストックホルム・レジリエンス・センター 、「地球限界の枠組み:プラネタリー・バウンダリーズ」)

注2       WHO(世界保健機関)2012年

 

 

 


●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら

個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。


MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。



関連記事


AI(人工知能)の普及に伴い、その将来性を精査する時が来ている

新興国市場:AI投資への別ルート

半導体業界が環境に及ぼす影響 

中国債券市場の振り返りと見通し(2024年3月)

新興国社債市場の振り返りと見通し(2024年3月)

新しい産業革命