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サプライチェーンの分散が進んでもアジアの優位は変わらず
2023/07/10

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概要

コストよりもサプライチェーンの回復力を優先させることが、新たな産業拠点に利益をもたらすかもしれない。




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海外の生産拠点等を自国に戻す、または、近隣国に移転する「リショアリング」や「ニアショアリング」、あるいは(同盟国や友好国に限定したサプライチェーンを構築する)「フレンドショアリング」のいずれの形態を取るにせよ、サプライチェーンの地域化は今後も勢いを増していくものと、ピクテでは考えます。
コストの最適化から強靭なサプライチェーンの構築へと焦点がシフトするにつれて、企業は生産拠点の移転の必要性をこれまで以上に感じることになると思われます。このことは、海外直接投資(FDI)による持続的な資金の流入と、生産拠点が移転、あるいは構築される国における設備投資の増額の可能性を意味します。

例えば、半導体世界最大手のサムスン電子(韓国)は、2042年までに、2,280億米ドルを投じ、国内に大型の半導体生産施設を新設する計画を明らかにしています。
アジアへの海外直接投資による資金流入は、過去10年間と変わらず、世界の2大経済圏、即ち、欧州および米州への資金流入を上回って堅調に推移することが予想されます。



東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国、インド、メキシコを含む新興国の産業拠点は、特に労働集約産業における輸出市場のシェアを拡大する可能性があると考えます。(海外拠点の中国集中に起因して生じるリスクを回避し、中国以外の国・ 地域にも分散投資する)「チャイナ・プラスワン」戦略を実行する企業が生産拠点の分散を図っているためです。

とはいえ、中国への依存度を減らすことは、(高密度相互接続回路基板、精密鋳造品、高品質の合成繊維等)中国がバリュー・チェーン上で優位に立つ、先端技術を駆使した部品に大きく依存する産業にとっては、「言うは易く行うは難し」と言えるでしょう。中国に匹敵するエコシステムや供給基盤を新たに構築するには、膨大な時間と資本を要するからです。
更に、拡大基調が続く中国の巨大な消費者市場は、中国での存在感を維持、または、増し続けるよう、海外企業を促す公算が大きいと考えます。その結果、労働集約産業の一部が高付加価値産業に置き換わるとしても、中国は、世界トップの製造大国としての地位を維持する可能性が高いと考えます。

また、サプライチェーンの移転が進む中、中国とASEAN各国間の補完的な貿易関係が更に強まる可能性があることにも留意が必要です。2022年1月設立の地域包括的経済連携(RCEP)協定が、こうした動きを加速させる可能性も考えられます。世界のGDPと貿易の約3分の1を占めるRCEPは、世界最大の自由貿易協定として歓迎され、事業環境の改善、関税の段階的な撤廃、海外直接投資を増やすための取り組みの調整等を通じて、アジア地域経済の統合の深化に資するものと期待されます。


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