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2022年5月の新興国株式市場と今後の見通し
2022/06/07

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概要

2022年5月の新興国株式市場(MSCI新興国株価指数、現地通貨ベース)は月間で上昇となりました。
主要国別の市場動向、今後の見通しについてご紹介いたします。
※記載内容はすべて海外市場の月末1営業日前ベースでのコメントになります。



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2022年5月の新興国株式市場

新興国株式市場は月前半、世界的にインフレが加速する中、米国ではより積極的な金融引き締めが行われるとの見方や、中国都市部の都市封鎖(ロックダウン)が続いていることを受けて、世界的な景気減速懸念が強まったことなどから下落基調となりました。その後は、中国の景気下支え策や金融緩和への期待の高まりに加えて、上海のロックダウン解除による経済活動再開への見通しなどが追い風となり、月末にかけて上昇基調に転じました。

主要国別、セクター別の動き(現地通貨ベース)

中国は、景気下支え策や金融緩和への期待がプラス材料となったほか、上海の段階的なロックダウン解除計画が示され、経済活動再開への期待が高まったこと、さらに、中国のネット関連企業の好決算なども追い風となり上昇しました。

台湾は、月後半に米ハイテク銘柄が反発したことなどを受けて、主力の情報技術セクターを中心に上昇しました。

韓国は、急速なウォン安進行を受けて、輸入原材料価格の上昇や外貨建て債務の返済負担増などが、企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)を圧迫するとの見方などから、月前半は下落基調となりましたが、月後半は米ハイテク銘柄の反発などを受けて、主力の情報技術セクターを中心に値を戻しました。

ブラジルは、主要新興国株式の中でもバリュエーション(投資価値評価)水準に相対的な割安感があることなどもあり、海外からの投資資金流入などが下支えとなりました。特に、主力の素材セクターや金融セクターなどが堅調な株価推移となりました。

南アフリカは、資源価格の上昇の恩恵を受けると期待される素材セクターや、主力のメディア企業を中心に月後半にかけて上昇基調となりました。

インドは、消費財関連のセクターは相対的に底堅く推移した一方、国内供給を優先させるために鉄鋼製品への輸出関税導入などが発表されたことを受けて鉄鋼企業を中心に素材セクターが下落したほか、ITサービス関連企業を中心とした情報技術セクターなども下落し、市場全体でも下落となりました。また、インド準備銀行(中央銀行)は、月前半に国内のインフレ抑制のために緊急利上げを実施しました。その後も、追加利上げの観測が高まっており、インド株式市場の重荷となりました。

セクター別(現地通貨ベース)では、一般消費財・サービス、情報技術、資本財・サービスなどが、相対的に大きく上昇した一方、不動産、ヘルスケア、金融などは下落しました。

今後の見通し

長期的には、新興国経済は、若い労働人口が豊富であることなどを背景に、中間所得層の持続的な拡大や構造変化に後押しされ、先進国を凌ぐ成長力を有しているとの見方には変更ありません。

短期的には、引き続きウクライナ情勢の行方や、インフレ抑制に向けた米国のより積極的な金融引き締めなどが、今後の世界経済の動向にマイナスの影響を及ぼす可能性があり、注視が必要であると考えます。また、ゼロコロナ政策による中国経済停滞の影響も懸念されています。しかし、これらのことは、新興国の中長期的な経済成長見通しには大きな影響を及ぼさないと考えています。

アジアを中心に新興国は「デジタル化」や「テクノロジー」の分野をけん引する存在であるとともに、脱炭素など世界的な環境課題においても、CO2(二酸化炭素)排出削減などで重要な役割を担いつつあるとみており、これまで見過ごされてきた、あるいは新たな価値の発掘につながる可能性があると期待しています。

新興国株式のバリュエーション(投資価値評価)については、先進国株式に比べて依然として魅力的な水準にあり、新興国株式市場を下支えする材料になると考えられます。新興国通貨についても、引き続き米ドルに比べて相対的な割安感があるとみています。足元の資源価格の高騰は、新興国の中でも資源国にはプラス材料となるとみています。


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