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気候変動期における水関連株式運用チームのスチュワードシップ
2022/04/14

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概要

世界は気候変動課題の解決の誓約から計画の策定段階に移行しつつありますが、課題の達成に向けた取り組みは総合的な観点に立って行うことが重要です。気候変動の時代に生きることとは、居住する地域や国内経済の脆弱性を軽減するために気候変動が水に及ぼす影響に対処し、必要な措置を講じていくことを意味するからです。



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世界各国は無謀にも、水が無限の資源であり殆ど価値のないものであるかのようにみなして、大量の水を浪費あるいは濫用してきましたが、その結果、生態系、人の健康、長期的な経済の持続可能性等が危機的な状況に陥っています。人類の繁栄には、安全に飲むことが出来、病気を媒介することのない清潔な水への持続可能なアクセスが必要です。ところが、1981年から2015年にかけては、28億人が水へのアクセスの改善を享受した一方で、21億人が安全な水にアクセス出来なかったのです。

ご存知でしたか?

2015年には、世界の総人口の61%に当たる45億人が安全な衛生施設へのアクセスが出来なかったものと推定されています。

1960年代には、世界の総人口の24%が(水需給の逼迫や水質の悪化のため、水の使用が不自由な)「水ストレス」を感じているか、あるいは水不足の地域に住んでいましたが、2000年代にはこの比率が58%に上昇しており、うち17%は「水ストレス」を感じつつも水不足の地域に住んでいます。これは気候変動や都市化に起因するものであり、農村地域よりも都市部住民の水消費量が多く、豊かな生活を送る中で水需要が増しているためです。

「国内外の公共政策の立案に際しては、絶対的な水不足が常態化しつつあることを勘案し、あらゆる側面に、水管理のニーズを組み込む必要があると考えます。」

ピクテ・ウォーター戦略アドバイザリー・ボード、デイヴィッド・ロイド・オーエン

 2022年の北京冬季オリンピックは、経済、環境、社会面の課題と比べて、水課題がなおざりにされてきたことを明らかにしました。組織委員会が「最も環境に優しい」オリンピックとして売り込んだ北京オリンピックでは、既存の施設の利用、省エネ輸送、再生可能エネルギーに限定したエネルギー利用、アフリカでの植林等が注目されましたが、その一方で中国国内でも最も水不足が深刻な地域で、オリンピック開催に必要な雪の全量を人工雪に頼ったことの弊害については殆ど言及されませんでした。年間の平均降雪量が僅か21cmに留まる地域で人工雪を作るには、オリンピック・プール1,000個を満たす水量に相当する280万立方メートルの水が必要であるとの試算がなされています。

「私達は水使用量の削減や水関連サービスの質の改善を通じて、水管理システムを決定的に変える可能性があるデジタル革命期のスタート地点に立っています。」

 

 廃水が資源と見なされるようになり、自然由来のソリューションが有効であるとの見方が増えつつある状況下、妥当な価格で入手出来る持続可能な水資源の将来像が現実味を帯びつつありますが、変革の取り組みのペースを加速させることが必要です。投資家であり、慈善活動家であるピクテは、水課題を解決し、社会に前向きな影響を与えるために必要とされる多くの手段を有しています。また、株主としての権利を積極的に行使するアクティブ・オーナーとして、気候変動を考える際には、二酸化炭素と並行して水の課題を確実に議題に載せるよう配慮しつつ、(持続可能な水資源を確保するための)移行を促し、水循環に大きな影響を及ぼす企業幹部との建設的な対話を行うことも可能です。

 移行に寄与する企業に直接資金を提供するための投資ソリューションを顧客に提供すること、あるいは、水課題を解決するソリューションを開発することも可能です。一方、利益が見込まれないプロジェクト、あるいは、利益の創出に時間を要する重要なプロジェクトの資金調達には、慈善団体の支援や助成金の授与を検討することも重要な手段だと考えます。

マリー・ロール・ショーフェルベルガー

ピクテグループ、ESG&スチュワードシップ、ヘッド

 

※当資料はピクテ・グループの海外拠点が作成したレポートをピクテ投信投資顧問が翻訳・編集したものです。


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