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新興国債券市場アップデート
2022/05/12

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概要

2022年新興国ソブリン債券指数のトータルリターンがマイナスとなったことを踏まえ、現在のマーケットの動きから、今後の新興国ソブリン債券のリスクに関して、現状の市場価格が何を示唆しているのかを注視しています。



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リスクを評価する一つのアプローチとして、EMBI指数に含まれている債券のうち、どの程度がディストレス水準で取引されているのかという割合を測る方法があります。一般的に、リスクフリー資産に対するスプレッドが1,000bpsを超えている債券の場合、ディストレス債券とみなされます。

この指標によると、現在の市場における新興国ソブリン債券のデフォルトリスクのプライシングは極端な水準にあり、指数に含まれる国の22%弱がスプレッド+1,000bpsで取引されています(図1)。一つの指数の中でこれほどにディストレス債券が集中するのは、リーマンショック後のような世界的な金融危機後にのみ顕著に観測される事象です。

図1:EMBI対象国のうち、各スプレッドで取引されているソブリン債の割合(国数)

出所:ピクテアセットマネジメント

もう一つのアプローチとして、各スプレッド水準(またはそれを上回る水準)で取引されている債券が占める割合を計測する方法が挙げられます。このアプローチでは、スプレッドが+700 bps または+800bps を超えるような高い水準で取引されている債券の多さが目立ちます。この点に関して、以下の図2では、ストレス水準で取引される債券の割合が増加していることを表しており、+700 bpsを超えて取引されている債券が14%、+800bpsを超えて取引されているが11%まで増加しています。この点からも、現在の市場の状況は、リーマンショックや2020年のパンデミック初期ほど悲観的ではないものの、ソブリン・デフォルト・リスクに対する市場のプライシングが上昇していることが観測されます。

図2:EMBIインデックスのうち、一定スプレッド以上で取引されている割合(%)

出所:ピクテアセットマネジメント

大きな課題は、ファンダメンタルおよびマクロ経済に関するリスクを考慮した上で、現在の市場のプライシングが適切かどうかを判断することです。現在の市場のバリュエーションは極端ではあるものの、新興国のソブリン債券に関してファンダメンタルズを短期的に良化させるカタリストは現状見出せず、金利ボラティリティの上昇と世界経済の成長見通しに関する懸念が困難な市場環境を創出しており、新興国ソブリン債券の見通しに対して、引き続き慎重な判断を行っています。

しかしながら、マーケットのリターンに影響を与え得る異なるドライバーを検討するにあたり、市場における投資家の現状の弱気なポジショニングについて認識すると共に、それがネガティブなプライス・アクションおよびトータル・リターンにどの程度影響を与えるかを注視しています。このことは、体系的かつ客観的にトップダウンでマクロ経済動向を分析する手法と、ボトムアップで新興国のファンダメンタルズを分析する手法を組み合わせるアプローチの有効性を示しています。ボトムアップの手法は急速に変化するマクロ経済は各国の情勢、及び債券や通貨への見通しの相互関係を分析することができます。


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