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一見好調な米国企業決算の実態
2022/05/26

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概要

2022年第1四半期の企業決算は好調であったものの、実態としてはコロナ禍からの反発による昨年の高水準からの正常化の兆しも見られます。



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一見すると今期も予想を大きく上回った企業決算

最近の決算期において、多くの企業が予想を上回る業績となる傾向が続いています。米国の消費者の商品やサービス関連への需要の高まりが2021年を通して力強い経済成長を支え、多くの米国企業が過去最高水準の業績を達成しました。しかしながら、多くのエコノミストが米国のGDP(国内総生産)は今年も堅調に推移すると予想する中、決算報告書からは、コロナ禍からの反発による高水準からの正常化の兆しがみられ、今後は予想を上回ることが難しい状況になるとみられます。

 

米国企業の現状

下のグラフは、S&P500における現在の売上高とEPS(一株当たり収益)のビート率(実績が市場予想を上回った比率)を示しており、決算を発表した企業の78%がEPS予想値を上回り、73%が売上高の予想値を上回りました。いずれも長期平均を上回っているものの、ピークは超えていることが見受けられます。

S&P500 EPSと売上高のビート率(%)

出所: FactSet、Pictet Trading Strategy 2022年5月19日時点

 

さらに、企業業績がアナリストの予想をどの程度上回ったかを示す指標についても、現在、急速に正常化しつつあります。第1四半期のEPSの予想値との乖離率は+5.3%であり、長期平均の+5.89%を下回り、前四半期の+10.28%から大きく低下しています。コロナ禍で落ち込んだ昨年との比較により大きな上昇となったベース効果が過ぎ去り、インフレに伴いコスト上昇が進むにつれ収益が圧迫されたことなどが重石となり、下落傾向にあります。一方、売上高については予想値との乖離率は+2.9%となり、低下に向かい始めているものの、依然として平均値の+1.2%を上回っています。

S&P500 EPSと売上高における予想値からの乖離(%)

出所: FactSet、Pictet Trading Strategy 2022年5月19日時点

 

欧州企業の現状

欧州では、景気回復が米国と比較し遅れている上、正常化プロセスが始まっているにもかかわらず、欧州企業の業績は米国の同業他社よりもかなり堅調に推移しています。

欧州市場における売上高およびEPSとともにビート比率は、前四半期から大きく回復しており、第1四半期において予想を上回った企業は、それぞれ67.7%、77.8%となり、いずれも過去数十年間で最も高い水準となりました。

ストックス欧州600 EPSと売上高のビート率(%)

出所: FactSet、Pictet Trading Strategy 2022年5月19日時点

 

また、予想値を上回ったEPSの平均は+13%、売上高については+2.5%となっており、いずれも過去の水準を大きく上回っています。

ストックス欧州600 EPSと売上における予想値からの乖離(%)

出所: FactSet、Pictet Trading Strategy 2022年5月19日時点

 

収益拡大のピークは過ぎ去った

一方、EPSの上昇を報告する企業は減少しています。下のグラフは、S&P500のEPS成長率が2019年以降どのように推移してきたかを示しています。2020年には新型コロナ・ウイルスによる世界的なパンデミックの第一波により悪化しましたが、その後反動から上昇し、2021年第2四半期に約91%のピークに達しました。その後正常化に向かい、今期は10%未満になると予想されています。

S&P500 2019年からのEPS成長率(%)

出所: FactSet、Pictet Trading Strategy 2022年5月19日時点

 

このような正常化は予想の範囲内であるものの、懸念されるのは、今期、利益がプラス成長となった企業の割合が 60%を下回っていることです。この水準は、パンデミック後の時期を除けば、長期的な過去平均をやや下回る水準となっており、利益成長のピークが過ぎたことを示しているといえます。

S&P500 EPSが上昇した銘柄の比率

出所: FactSet、Pictet Trading Strategy 2022年5月19日時点

 

 

 

 

 


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