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- 中国:2022年に財政収入の大幅な減少が予想される
ロックダウン(都市封鎖)と不動産セクターの継続的な低迷により、中国政府の財政収入は大幅に減少し、2022年には目標値を下回る可能性があります。中国政府の財政状況がより厳しくなることで、短期的にはさらなる財政刺激策の展開が制限される可能性があります。このような財政資金の不足を補うために、中国政府が利用できる手段は多数存在しますが、実施の難易度には差があります。しかしながら、どの手段であれ、デットファイナンスによる債務の増加は避けられません。
全体像ー中国政府の財政収入
中国政府の財政収入は主に一般公共予算と政府性基金予算から構成されています。一般公共予算収入は付加価値税(VAT)、法人所得税、個人所得税、不動産関連税などの税金が主な収入源となっており、収入全体の約85%を占めています。残りの15%は、行政手数料などの税以外の収入です。政府性基金予算収入は土地の売却から得た収入が約90%の割合を占めています。
全体として、土地売却と不動産関連税からの財政収入は、2021年の中国政府の予算内外を含めた総財政収入の37%という大きな割合を占めています(図1)。
図1:中国政府の連結財政収入の内訳
出所:Pictet Wealth Management, Wind(2022年6月時点)
中国の財政収入は2022年に大幅に減少する可能性が高い
ロックダウン(都市封鎖)と不動産セクターの低迷により、3月以降の中国経済は急減速し、政府の財政収入は大きな打撃を受けました。
2022年1月から4月の中国政府の一般公共予算収入は、3月の全国人民代表大会(NPC)で発表された2022年の年間目標である3.8%の増加に対して、4.8%の減少となりました。特に4月では、コロナ感染拡大を受けてロックダウン(都市封鎖)政策が導入されたことや政府の救済策の一環として付加価値税の還付を進めたことにより、財政収入は大幅に落ち込みました(図2)。
図2:中国政府の財政収入成長率
出所:Pictet Wealth Management, Wind(2022年6月時点)
政府性基金予算収入はさらに急激に減少しており、年初4ヶ月で前年同期比27.6%減となりました。不動産市場で下落が続く中、土地売却の不調が主な足かせとなりました(前年同期比29.8%減)。多くのデベロッパーを悩ませている流動性問題は、土地売買の取引に大きな悪影響を及ぼしました(図3)。住み替えや消費者需要が抑制される中、長期化するコロナ関連規制がデベロッパーの重荷となっています。
図3:土地売買額の増加率(主要100都市)
出所:Pictet Wealth Management, Wind(2022年6月時点)
中国政府の主要収入源である税金と土地売却収入の急減少を考慮すると、2022年の中国政府の実質財政収入は年間目標を大幅に下回る可能性があります。土地売却による収入が通年で20%減少した場合(売却額ベース)、目標値を約3.4兆元(2021年の中国GDPの約3.0%)下回る結果となります。土地売却による収入が通年で25%減少した場合、目標値を約3.9兆元(2021年GDPの約3.4%に相当)下回る結果となります(表1)。
表1:中国政府の目標財政収入額とその不足額の推定値
出所:Pictet Wealth Management, Wind, Ministry of Finance(2022年6月時点)
さらなる財政刺激策には、政府のデットファイナンスによる資金調達の大幅な拡大が必要
経済成長の低迷を受け、中国政府は政策支援を強化する姿勢を明らかにしています。鉄道建設への支援金として3,000億元、航空産業への支援金として2,000億元の債券が発行され、インフラ投資支援のため、政策銀行は融資枠を8,000億元増加しました。この数週間で、合計1.3兆元の資金が新たに投入されました。
しかしながら、これまでに発表された支援策では、ロックダウン(都市封鎖)による経済へのダメージを十分に緩和することができない可能性があります。その一方で、財政資金の不足を補うために、政府が利用できる手段は他にも存在します。短期的には、NPCの承認を不要とする国有企業(政策銀行など)からの借入の増額を行うことができます。また、財政刺激策をさらに強化するために、特別国債の発行や財政赤字の大幅な拡大も考えられますが、NPCの承認が必要であるため、実施まで時間がかかります。ただし、景気減速の深刻さを考慮すれば、これらの選択肢は今年の下半期に検討される可能性は十分にあると思われます。
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