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中国コロナ感染対策の見直し オンショア債券の継続的な安定性を支える
2022/07/05

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概要

中国のコロナ感染対策の見直しは、感染を徹底的に抑え込む方針に変化はありませんが、政策に対する信認を高めるための重要なステップとなりました。中国のオンショア債券は、投資家にとって困難な年であったにもかかわらず相対的に良好なパフォーマンスを提供してきましたが、今後も相対的に高い利回りと低いボラティリティを持つ魅力的な投資先であり続けると考えています。



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中国は、ゼロ・コロナ政策と完全に決別したわけではありませんが、海外からの入国者の隔離期間を短縮するなど、コロナ感染対策の緩和に踏み切りました。

今回の政策緩和による直接的なマクロ経済への影響は、緩和の内容が限定的であることを考慮すると、それほど大きくないと思われますが、この動きは、コロナ感染拡大の抑制と経済成長の支援のバランスをとるべく、政策に柔軟性を持たせる方向に向かおうとしている意思の表れであり、ポジティブに評価できます。また、下半期にさらなる政策緩和が実施されるかという疑問も生じますが、現時点で市場では今後の政策緩和については考慮されていません。しかしながら、今回の政策見直しにより、ダウンサイドリスクは低減され、リスクセンチメントが改善傾向に向かう可能性があると考えています。中国のマクロ経済に急激な回復がみられないとしても、繰延需要が不動産市場を支えることや、株式バリュエーションの回復、財政・金融支援の拡大等が予想されます。

オンショア債券の利回りはほとんど変化しておらず、ここ数カ月レンジ相場が続いています。経済活動の再開によってデータが改善された場合、マクロ経済の回復とコロナ政策のさらなる緩和に伴い、利回りが上昇する可能性があります。しかしながら、雇用市場の悪化(16-24歳の調査対象者の失業率は18.4%)が際立つ中で、中国人民銀行(PBoC)は緩和姿勢を維持し、10年債利回りが2.9%に達した場合はデュレーションの長期化を図ることになるため、金利の上昇余地は限定的になると考えています。

人民元への影響は明確ではありませんが、ネットでは若干ながらポジティブな効果がもたらされると考えられます。政策見直しの公表後、為替市場は即座に反応しており、対米ドルで目立った動きはみられなかったものの、その他広範な通貨に対して、オンショア人民元レートが大きく反発しました。センチメントの観点からはこの動きは明らかにポジティブであり、今後予想される人民元建て資産への資金流入が、人民元レートをサポートすることになるでしょう。その一方で、アウトバウンド観光が増加し、中期的に中国の国際収支に影響を与える可能性があります。もっとも、直近で海外からの入国者の隔離期間を14日から7日に短縮した香港の例からも、国際収支の悪化による為替レートへの影響は限定的であると言え、人民元の上昇圧力は短期的に継続すると思われます。

オンショア人民元 対通貨バスケット推移(貿易加重ベース)

出所:CFTC, Bloomberg(2022年6月30日時点)

コロナ感染対策概要

海外からの入国者と濃厚接触者に対しては、従来の14+7日の隔離から、7日間の集中隔離と3日間の自宅での健康観察期間(7+3)が適用されることになりました。また、二次濃厚接触者については、集中隔離の対象外となり、7日間の自宅健康観察のみが義務付けられます。

高リスクおよび中リスク地域の感染対策に関する基準も全国で統一されました。高リスク地域の住民は自宅から出ることができず、中リスク地域の住民は地域ごとのロックダウン政策に従うことになります。高リスク地域への旅行歴がある住民は、集中隔離の対象となります。

地域内で感染者が発生し、感染リスクが高まっている都市では、原則として、3日間連続で新たな感染者が発生しなくなるまで、毎日集団検診を行う必要があります。

海外からの旅行者や輸入品に接触する場合、より頻繁に検査を行うことが求められるようになりました。抗原検査は、症例の早期発見のために使用することが認められています。


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