Article Title
新興国債券市場の動向
2022/08/22

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

新興国の経済と債券市場の動向についてピクテが紹介します。



Article Body Text

新興国債券市場におけるサステナビリティ投資は増加傾向

2022年上半期の新興国ESGラベル付き債券の発行額は前年同期比で2%増加し、819億米ドルとなりました。

ESGラベル付き債券の中でも、新興国投資適格格付けの発行体(上半期の発行額の半分以上を占める)の債券は投資家の間で高い人気を集めています。先進国のハイ・イールド債券に匹敵する利回りを持ちながら、信用リスクは相対的に低いため、金利の上昇や、ボラティリティの高まりに晒されている市場環境下では、魅力的な投資先となっています。

直近2年間でESG債券の発行が急増した結果、JPモルガン新興市場社債インデックス(CEMBI)の約7.5%をESG債券が占め ています。投資ユニバースが拡大した結果、一般的には「グリーニアム」の縮小が見られています。

チリは新興国ESGソブリン債券市場のリーダーとして、グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドをすでに発行しています。

新興国ESGラベル付き債券のタイプ別発行額(単位:10億米ドル、各年上半期データ)

出所:Pictet Asset Management, Bloomberg(2015年1月1日~2022年6月30日)

中国ー中期貸出制度(MLF)10bps引き下げ

直近数週間、中国人民銀行はインターバンク市場の過剰なレバレッジを抑制するため、市場の流動性を吸収してきましたが、MLF引き下げは経済減速を回避する当局の姿勢に変化がないことを意味しています。

小規模なロックダウンの継続や不動産セクターへの懸念が消費を抑制していることを考慮すると、低調な経済データは完全に想定外とは言えないでしょう。

10bps のMLF引き下げによる経済への支援は限定的ですが、これにより、最優遇貸出金利(LPR、住宅ローン金利などの目安)引き下げの道筋は立てられたと考えています。住宅ローン金利の平均値は12月末の5.63%から4.62%へ、すでに-101bps低下しています。住宅ローンと5年物LPRの金利差は98bpsから17bpsに縮小しており、住宅ローン金利をさらに低下させるにはLPR金利の引き下げは避けられないと思われます。

金融システムにはすでに過剰な流動性が蓄積されており、翌日物レポ金利は1%、7日物レポ金利は1.5%を大きく下回っている状態が長期化しています。マネーサプライM2の伸び率が12%であるのに対し、融資が急減速していることは、流動性の供給不足や、信用スコアの体系に問題があるのではなく、借入需要の低迷が課題となっていることを示唆しています。

輸出とインフラ投資の好調は続いており、今後も景気を下支えすると思われます。政策に十分な効果を発揮させるためには、借入需要の喚起に注力する必要があると考えています。

経済データ

GDP

  • フィリピンの第2四半期のGDPは、主に輸出の減速に伴う貿易収支赤字により、市場予想を大幅に下回りました。ヘッドラインGDPは予想を下回ったものの、公共投資と設備投資が2桁成長し、民間消費も前年同期比+8.6%と高い成長率を維持していることから、内需が堅調に推移していることが分かります。
  • マレーシアの第2四半期のGDPは、堅調な個人消費に牽引され、予想を大幅に上回りました。総固定資本投資と純輸出の伸びもGDP成長に寄与し、政府支出と在庫投資の減少を相殺しました。

 

中国-社会融資規模

中国の社会融資総量(TSF)は市場予想を大幅に下回りました。これは、景気回復の脆弱さと不動産市場の低迷を背景に、銀行の企業、消費者向け融資が引き続き低調であったことに起因しています。家計および企業向け長期融資が急減する一方、短期貸付が増加していることは、融資需要の低迷により資金が実体経済から金融市場へ流出していることを示唆しています。また、これまで経済を支えていた政府債の発行も年初に特別国債を前倒し発行したことから減速しました。

消費者物価指数(CPI)

  • 中国のCPIは予想を下回りました。エネルギー価格の下落が、豚肉や野菜の価格上昇に伴う食品価格高騰の影響を相殺したことが物価の伸び幅を抑えました。コアCPIも同様に予想を下回り、前年比0.8%の上昇に留まりました。これは、長期化するゼロコロナ政策と、世界需要の軟化による生産者物価指数(PPI)の急激な鈍化による影響を示しています。
  • インドのCPIは、世界的なコモディティ価格の低下と輸送コストの低下(後者は燃料税引き下げが寄与)により、予想をわずかに下回る結果となりました。
  • ハンガリーのCPIは予想を大幅に上回り、食品インフレ率の上昇とコア指数の広範な上昇に牽引されました。
  • チェコ共和国のCPIは予想をわずかに下回り、前年同期比+17.5%の結果となりました。市場のサプライズとなったのは、エネルギーインフレの加速が予想を下回ったことですが、規制当局とエネルギー供給企業の発表によると、年内にエネルギー価格の引き上げが予定されているため、これによる影響は薄れていくと思われます。エネルギー以外では、食品と非アルコール飲料、住宅、水、電気、ガス、その他の燃料のインフレ率が2桁の上昇となり、ヘッドラインインフレ率を牽引しました。
  • ルーマニアのCPIは、干ばつに伴う食品インフレに牽引され、予想を上回りました。エネルギー価格の上昇は相対的に緩やかでしたが、依然として高止まりしています。また、その他の商品カテゴリーの価格上昇は、サプライチェーンの混乱が輸入価格に影響を与えていることを示しています。
  • ブラジルの7月のIPCAは予想をやや下回り、高水準を維持しましたが、前月比では1980年以来のインフレ率の急速な低下が見られました。直近で承認された燃料費、電気料金、輸送費、通信費に対する州税の上限を定めた財政措置が、予想を下回った主な要因となります。
  • メキシコの7月後半のCPIは予想をやや上回り、コアインフレ率の上昇に牽引され、インフレ圧力はサービス業全体に拡大しました。
  • チリの7月のCPIは、コア指数の上昇と為替変動の影響を受け、予想をわずかに上回りました。

 


●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら




関連記事


AI(人工知能)の普及に伴い、その将来性を精査する時が来ている

新興国市場:AI投資への別ルート

半導体業界が環境に及ぼす影響 

中国債券市場の振り返りと見通し(2024年3月)

新興国社債市場の振り返りと見通し(2024年3月)

新しい産業革命