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脱炭素社会への移行 ~イノベーションの種を蒔く~
2022/11/29

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概要

最近発表されたデータが示唆しているのは、世界がクリーンエネルギーのイノベーション(技術革新)期の初期段階にあり、この10年を通じて進めてきた集中的な研究開発の成果を手にし始めているということです。



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1970年代は、社会、経済、政治に様々な変革がもたらされた転機の10年でした。また、1973年および1979年の2度の石油危機を受け、環境や資源不足に対する意識が高まった時代でもありました。

当時は、原油価格が5ヶ月で4倍に急騰し、消費者はエネルギーの使い方を根本的に変える必要に迫られました。クリスマスのイルミネーションを消し、ガソリンスタンドの長蛇の列に並ぶことを余儀なくされた人もいましたが、一方で、明るい兆しも見られました。代替エネルギーを発掘するために政府支出を大幅に増額してきた欧米政府が、その成果を手にし始めていたからです。米国では、当時の研究開発が、1980年代初頭の「風力発電ブーム」につながって、大規模な集合型風力発電所が初めて建設されました。

また、同じ時期に、イスラエルは太陽光発電技術の開発、一方、デンマークは風力タービンの製造に着手しています。エコノミスト・グループが官民の組織と提携し、社会改革を実現するために立ち上げた「エコノミスト・インパクト」がデータサイエンス分析のフラミンゴと共同で行った調査によると、1970年代はイノベーションが次々と生まれ、科学雑誌の引用や特許案件に新しい概念が急増した時代でした。

「エコノミスト・フラミンゴ」モデルは、約60年前からの科学雑誌と特許申請書から集めた膨大なデータの解析に基づくもので、自然言語処理によって言語学上の傾向を見極め、文献中の新しい言葉を検出するものです(「方法論」参照)。当モデルを使った分析は、画期的な概念が短期間のうちに次々と学術論文に掲載される状況が、イノベーション活動の波や新規の特許出願件数の増加に先行する傾向があることを突き止めました。「エコノミスト・フラミンゴ」モデルは、私達がクリーンエネルギーのイノベーション期の入り口に立ち、この10年で、再生可能エネルギー発電の送電、使用、貯蔵に関連する新しい言語構造が発生したことの成果を手にしている可能性を示唆しています。

                                                                                      

出所:https://impact.economist.com/projects/innovation-matters/articles/fuelling-the-green-transition/

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          

例えば、ペロブスカイト太陽電池はその好例です。

ペロブスカイトは、シリコンよりも持続性の高い半導体物質として、シリコンの代わりに太陽電池に使われることが期待されています。ペロブスカイトをめぐる研究活動は、2014年から2016年にかけて、急増しています。現在、ペロブスカイト電池は、変換効率が2006年の僅か3%から25%に上昇しており、生産コストも低いことから、商業面での魅力が増しています。ペロブスカイトなどの技術は、化石燃料後の時代を生きる私達にとって再生可能資源を活用し、その規模を拡大するために不可欠です。

革新的な技術分野における最新の研究ブームは、脱炭素化に対応出来る驚異的な一連の技術が既に存在することを示唆しています。「ネットゼロ目標の実現に向けた道のりの70~80%は、既存の技術で踏破可能です」と、世界エネルギー会議(WEC)のアンジェラ・ウィルキンソン事務局長は述べていますが、国際エネルギー機関(IEA)のデータもウィルキンソン氏の発言を裏付けています。次世代技術は、まだ商業化されていない技術も含め、2070年までに世界のエネルギー部門の二酸化炭素排出量を35ギガトン近くまで削減できる可能性がありますが、これは、現時点でのネットゼロの誓約を100%実現出来る量に相当します1

今、欠けているのは、研究部門での革新的な技術革新と現実世界での技術の導入との時間差を短縮すると同時にコストを削減するための製造および生産部門の改善です。太陽光パネル事業は、技術革新と技術の導入のサイクルを既に一巡しています。ペロブスカイト太陽電池を使った太陽光発電のコストは、この10年で89%下落していますが、火力発電用の一般炭の価格は僅か2%の下落に留まっており、発電所の建設コストや運転コストを勘案した均等化発電原価で見ると、太陽光発電のコストを石炭価格が上回っています。その他の基幹技術にも、商業化と普及の促進のために多額の投資が必要です。

投資家のための見通し

・ 技術革新は、クリーンエネルギー業界に大きな変化をもたらしています。過去10年で、太陽光発電のコストは80%、陸上風力発電のコストは45%下落しています。

・今後10年以内に温室効果ガス排出量を削減するには、技術革新の進展が必須であり、そのためには、投資の拡大が求められます。クリーンエネルギー業界は、2030年までに現行の3倍の投資(年間4兆ドル強)を必要としています。

・脱炭素世界への移行は、世界のGDP成長率を0.4%パーセント・ポイント押し上げ、約3,000万人の新規雇用を生むとの試算もあり、世界経済に恩恵をもたらす公算が大きいと思われます。また、発電事業に限らず、運輸、製造、建設、情報技術、送配電網等のエネルギー・インフラを含む広範な分野への投資の機会をもたらすことが期待されます。

 

 

 

[方法論]「エコノミスト・インパクト」は、データサイエンス分析のフラミンゴと共同で、60年以上にわたる科学論文と特許のビッグデータ分析(3億4千万データポイントに相当)を行い、自然言語処理によって言語の傾向を見分けました。遺伝子治療、CRISPR(遺伝子改変技術)、ディープラーニングなどの新しい概念がいつ出現するかを特定し、その後の使用状況によって長期的な重要性を測定します。より頻繁に登場するキーワードは、より影響力がある、あるいは「革新的」であるとみなされ、より高いスコアが付けられる。スコアは、そのキーワードが最初に言及された年に割り当てられ、この調査結果は、二次調査や専門家への詳細なインタビューによって補完されています。

[1] 国際エネルギー機関(IEA)の「持続可能な開発シナリオ」では、先進国は2050年までに、中国は2060年頃に、それ以外の国は遅くとも2070年までに、それぞれネットゼロに到達すると想定している。このシナリオは、ネット・マイナス排出を想定しない場合、50%の確率で世界の気温上昇を1.65℃に抑えることを示している。2070年以降にある程度のネット・マイナス排出があれば、2100年の気温上昇を1.5℃に抑えることができる。

 

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