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クレジット市場回帰への第一歩か
2023/01/23

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概要

債券市場に復活の兆しが見えつつある中、短期投資適格債券はクレジット市場に回帰する投資家にとって、魅力的な投資先になると考えます。



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債券の投資妙味は高まっています。低金利と量的緩和が続いた環境下で、債券投資家は利回りに飢えていましたが、潮目は変わりつつあると思われます。インフレ対策として中央銀行が金利を引き上げ、債券が売り込まれたことから、債券のバリュエーションは魅力的な水準に達しました。例えば、世界の投資適格債の利回りは現在5%を超えており、世界金融危機以来の水準となっています。

その結果、投資適格社債の利回りは相対的に見ても再び強い競争力を持つようになっており、一部の世界の高配当株式を上回るインカムを提供することができると考えます(図1)。

図1:株式指数配当利回りと債券指数利回りの推移(%)

出所:ICE indices, Bloomberg, Pictet Asset Management 2009年12月31日~2022年12月31日

しかしながら、複雑なマクロ経済環境と金融情勢を背景に、投資家は慎重な対応を迫られています。インフレが長期化する可能性は依然として残っており、米国連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が金融引き締めを終了する時期も不明です。さらに、世界経済の低迷は、企業のファンダメンタルズに大きな圧力をかける可能性があります。特に低格付けの(CCC格付け)ハイ・イールド債券市場にネガティブな影響を与えると考えられます。

魅力的なリターンを提供する先進国短期投資適格社債

投資家は、クレジット市場へ回帰する最初の一歩をどのように選択するべきなのでしょうか?リスク対比で利回りの魅力度が相対的に優れているのは、先進国の短期社債だと考えます。

図2:フラット化するカーブ

10年超と1-3年のユーロ建て投資適格債券の年限間スプレッド(bps)

出所:ICE indices, Bloomberg, Pictet Asset Management 2012年12月31日~2022年12月31日

金利上昇と金融引き締めの結果、投資適格債のイールドカーブはフラット化しており、一部のセグメントでは逆イールドも見られています。

これは、投資家が短期債に投資することで、デュレーション・リスクを軽減しつつ、より高い利回りを確保できることを意味しています。

短期のハイ・イールド社債のバリュエーションも魅力的な水準となっていますが、今後数ヶ月の間に経済が悪化する可能性があることから、投資家は高格付けの社債や、よりディフェンシブなセクターに注目するべきだと考えます。

投資適格社債の中でも、小売業などのシクリカルなセクターへの投資は控えるべきだと考えられます。今後の市場環境を乗り切るためには、セクターと格付けの選択に慎重になるべきでしょう。

スプレッド・プロテクション

1-3年の投資適格債は、相対的に高水準にある利回りと短いデュレーションにより、スプレッドがさらに拡大した場合でも、魅力的なリターンを提供できると考えられます(図3)。このような性質は、不透明な金融・マクロ環境において特に貴重だと言えるでしょう。

図3:世界1-3年投資適格社債の1年期待リターン(%)

出所:ICE indices, Bloomberg, Pictet Asset Management 2017年12月31日~2022年12月31日
指数(G1BC)の利回りとスプレッド・デュレーションから算出

ソブリン債券に投資するメリット

短期ソブリン債券の投資妙味も増しています。例えば、米国では2年国債の利回りが10年国債より約70bps高く、過去40年間見られなかった水準に達しています。ユーロ圏やスイスの国債市場でも同様の傾向が見られています。

図4:米国投資適格社債と米国債の利回り(%)

出所:Bloomberg, Pictet Asset Management 2022年12月31日時点

クレジット投資家にとって、短期のソブリン債券への投資は、分散効果を高め、リスクを低減させるだけではなく、ソブリン債券のイールドカーブが反転する中で、新たなリターン源泉ともなり得ます。

短期の社債とソブリン債券に投資することで、投資家は短いデュレーションを保ちつつ、高い利回りを確保することができると考えられます。これは、クレジット・サイクルが不安定な局面において、魅力的なリスク・リターンを提供するアプローチであると考えます。短期債券はクレジット市場に回帰する投資家に適したエントリーポイントの一つだと言えるでしょう。


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