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不確実性の高い環境下におけるダイレクト・レンディング投資
2023/07/20

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概要

資金の貸し手にとって足元の経済環境は非常に厳しいと感じられるかもしれませんが、ダイレクト・レンディングにおいては新な投資機会が期待できます。銀行との競争が限られる市場環境、バランスシートの改善を進める企業、相対的に高い利回りが、ダイレクト・レンディングの投資家に非常に魅力的なエントリー・ポイントを提供すると考えています。



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金利の上昇、高いインフレ率、低迷する経済成長など、市場を取り巻く環境は理想的だと言い難いかもしれません。しかしながら、企業に直接融資を行うプライベート・デットにとって、足元の投資環境は相対的に良好だと考えます。

直近20年間の景気サイクルを対象とした投資リターンの分析によると、厳しい経済局面(「イン・サイクル」期間)をエントリー・ポイントとしたダイレクト・レンディング戦略は、平均を上回る投資リターンを達成しています(図1)。

図1:「イン・サイクル」期間に投資を開始した場合と長期平均リターンの比較

※先進国市場のシニア担保付きダイレクト・レンディングファンドのデータを使用
出所:Preqin, Bloomberg, Pictet Asset Management。期間:2000年1月1日~2021年12月31日

その背景には、以下の理由があると考えられます。まず、中央銀行が金利を引き上げ、景気が減速することにより、投資家はより有利な条件で融資を行うことができます。また、銀行の貸出条件が厳格化されるにつれ、企業はバランスシートの改善を進めるため、結果的にレンダー(貸し手)のリスクを低減することにつながります。加えて、不透明感の高い経済環境下に行われた融資は、より強化されたプロテクションを享受することができます。

有利な貸付条件とディフェンシブ・セクター

足元の市場環境はより魅力的なリターンを得るための上記条件をすべて満たしていると考えています。まず、投資家に提供される金利は上昇しています。欧州ローンの利回りは、昨年同期の7%に対し、12%超の相対的に高い水準となっています。欧州の金利が高止まりする中、プライベート・デットの融資は変動金利型が多く、30日~90日ごとに金利が見直されることが、この高利回りの主な要因となっています。

次に、ダイレクト・レンディングによる融資を求めている企業が財務的な健全性を高めていることも投資家に大きなメリットをもたらすと考えられます。多くの欧州企業は相対的に強固なバランスシート、または2~3倍程度の有利子負債/EBITDA倍率を維持しています。この水準は、今回の利上げサイクルが開始される以前の水準が約7倍であったことを考慮すると、大幅に改善されたと言えるでしょう。

今後の欧州企業の活発なリファイナンスは、強固なバランスシートを持つ財務的に健全な企業に、より魅力的な利回りで融資を行う機会を提供すると考えています。270億ユーロの融資が今後3年の間に償還を迎えることは、2023年及び2024年に組成されるダイレクト・レンディング投資のさらなる追い風となるでしょう。その結果、ダイレクト・レンディングは2年前、あるいは1年前より魅力的な投資先となっていると考えます。

最後に、レンダーにとっての融資条件もより貸し手優位になるでしょう。今までとは対照的に、企業が銀行からコベナンツ・ライト・ローン(財務制限条項が緩和されたローン)を受けることは難しくなっています。欧州の商業銀行は融資の縮小を進めており、欧州中央銀行のデータによると、与信基準は2011年の欧州債務危機以来のペースで引き締められています。2023年第1四半期には、企業融資の約15%が却下されています。そのため、多くの企業はプライベート・デット・ファンドの厳しい融資条件を受け入れざるを得ない状況に追い込まれています。

融資条件には、負債、支出額の制限に関する規則やコベナンツの厳格化などが含まれます。これらはすべて、債権者の保護を強化するためのものであると同時に、企業が強固で持続可能なビジネスモデルを構築することを支援するものでもあります。貸し手のプロテクションが強化され、借り手の信用力が向上し、利回りがより魅力的になっていることから、ダイレクト・レンディングはここ数年の中でも非常に魅力的な投資先となると考えます。

以上の理由から、ピクテは、プライベート・デットを今後5年間の最も有望な投資先の一つと位置付けています。また、欧州プライベート・デットの平均リターンは1桁台後半となると予想されており、この水準はハイ・イールド債券が提供するリターンを絶対値ベース、リスク調整後ベース両者において、大きく上回ると考えられています。

ファースト・ヴィンテージのメリット

ファースト・ヴィンテージ(第1号ファンド)のプライベート・デット戦略に投資する投資家は、より高いリターンを期待できる可能性があります。ファースト・ヴィンテージはより多くの投資機会を提供するニッチなセクターに注目することができます。ピクテは、スポンサー(主にプライベート・エクイティ・マネージャー)なしの欧州の中堅・中小企業がニッチなセクターだと考えます。従来のプライベート・デット・ファンドではこのような企業は見過ごされることが多く、プライベート・エクイティ・マネージャーがオーナーとなる大型案件が選好されています。

図2:先進国市場におけるシニア担保付きダイレクト・レンディングファンドのIRR(費用控除後)

出所:Preqin, Pictet Asset Management。期間:2010年1月1日~2020年12月31日

さらに、金利上昇前に組成されたダイレクト・レンディングファンドは、借り入れコストの上昇に苦しむ債務者に対処しなければなりません。中央銀行の急速な利上げを考慮すると、従来の大型案件を多く含むダイレクト・レンディングのポートフォリオの中に、大きなストレスにさらされている投資先企業が含まれている可能性は高いでしょう。

その結果、ポートフォリオ・マネージャーはこのような課題の対処に多くの時間を使わなければならず、長期的な投資リターンの獲得に不可欠な新しい投資先のオリジネーションや案件の選別に利用できる時間が減少してしまいます。


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