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持続可能な食料安全保障に向けた取り組み
2022/06/01

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概要

ウクライナ危機の影響を受け、食料の安全保障は今まで以上に喫緊の課題となっています。私たちは、幅広い投資を通じて、農場から食卓まで、幅広い分野での食料問題の解決に向けて貢献することができると考えています。



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食料安全保障に対する懸念の高まり

食料安全保障に対する懸念は、以前より世界的に大きな問題となっていましたが、ロシアによるウクライナ侵攻により、食料価格の高騰と供給問題が悪化したことで、改めて注目が集まっています。

2050年までに食料需要は60%増加すると予想されています。しかし、耕作可能な土地や水資源の減少、また、現在すでに約20億人が栄養不足に陥っていることを考慮すると、供給が追いつくのは難しい状況です。

ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、穀物や肥料の不足が生じており、すでに加速しているインフレに拍車をかけているため、食料安全保障の進展は10年先送りされると推定されています。南アジアやアフリカでは、所得の20%以上を食費に費やす人々が増えており、食品価格の高騰は新型コロナウイルスの感染拡大による様々な社会問題を悪化させています。

食料の不足と食品価格の高騰は、大規模かつ複雑な社会的、環境的課題であり、すぐに解決に導く特効薬はありません。この問題を解決するためには、食品の供給網全体で様々な解決策を講じる必要があります。一方、この危機は、穀物や効率の悪い動物性タンパク質の代替品の採用、効率的な食料生産と、より短く安全なサプライ・チェーンの開発の両方の発展を加速させるとみています。これは、私たちが健康と成長のために必要とする食品の持続可能性、入手のしやすさ、品質を共に向上させることにつながり、革新的な事業を行う企業と投資家の双方にとって好機となるといえます。

各国の消費支出に占める食費の割合

出所: 米国農務省(USDA)経済調査局、 Our World In Data。期間: 2015-2016年

 

 

食料問題解決に向けて

有望な解決策のひとつが、より少ない資源で農作物の収穫量を向上させることができる技術、アグテック(IT関連の最新技術を農業に応用させること)です。ロシアとウクライナを合わせると、世界の窒素肥料輸出の約20%、カリ肥料輸出の約30%を占めており、現在の供給途絶を考えると、農業界全体で肥料への依存を減らすことに、より焦点が当てられるとみられます。この問題は、垂直農法( 高層建築物の階層、及び傾斜面を使用する農業)や精密農業(農地・農作物の状態を良く観察し、きめ細かく制御し、農作物の収量及び品質の向上を図り、その結果に基づき次年度の計画を立てる農業管理手法)によって解決に向かうことが期待されています。垂直農法には、公害を減らすという利点もあります。

一方、穀物不足の影響を受けて、畜産業は、ビタミン、ユービオティクス(腸の健康および免疫力の向上などを促進するために動物に与えられる飼料サプリメント)、酵素、ワクチンなど、優れた健康管理によって、飼料吸収率と収穫量を改善し、より効率性を高めることができます。

不足を解消するもう一つの方法は、すでにある資源を最大限に活用することです。この点については廃棄物の削減が優先すべき課題となっています。廃棄物は現在、生産される全食品の約3分の1(年間約13億トン)となっています。廃棄物を減らすためには、物流、流通ネットワーク、食品の安全性をより向上させる必要があります。これらはすべて、技術によって改善することが可能な分野です。例えば、無菌包装とは、食品を包装する前に高温で殺菌し、化学薬品や冷蔵機能を使わずに賞味期限を延長する方法です。また、伝統的な発酵の原理を応用し、特別に開発された培養液を使ってヨーグルトやチーズを保存する「ナチュラル・バイオ・プロテクション」という新たな手法も活用されています。

また、廃棄される食品については、余分な油や動物性脂肪の飼料をバイオ燃料に換える、チーズ製造のホエイ(乳清)を食品の包装に利用するなど、再利用可能な分野が増えています。

食料の生産については、食品製造業者にとって、食品をより栄養価が高く、手頃な価格で、かつ持続可能なものにしていくにはどうしたらよいかということは切実な課題となっています。一部の食品会社は、実験室で育てられた肉の開発、オーツ麦やジャガイモなど、植物由来の牛乳の代替品の発見、価格の改善などに取り組んでいます。また、合成原料とは異なり、石油への依存が少ない天然原料への需要も強くなっています。

 

地産池消、最新技術がもたらすメリット

地産地消は、より安定した供給、廃棄物の削減、二酸化炭素排出量の削減、トレーサビリティの向上など、さまざまなメリットをもたらす解決策の一つです。また、地元で生産された食品は、淡水源や耕作地など、縮小している資源への負担を軽減することができます。一方、屋内型の垂直農園も急速に拡大しており、農業用地が限られている地域や厳しい気候条件の地域においても、質の高い地元産の食品を提供できる可能性が広がっています。このような農場を運営する企業は、多額の投資を行っています。例えば、垂直農法を行っているノルウェー企業は今年、シンガポールに新しい巨大農園の建設を予定しています。この農園では、2030年までにシンガポールの栄養需要に対して現在の約10%から30%を賄うという計画の一環として、年間約50万kgの葉物野菜を栽培することを目指しています。

これらの技術を活用することで、水と肥料を必要な場所に的確に散布できるようになり、淡水と肥料の使用量を最大80%削減することができます。また、収量の向上、希少資源の保護、窒素酸化物排出量の削減も可能になります。

 

食品流通の見直し

また、食品の物流に関しても変革の時を迎えています。複雑なグローバル・サプライ・チェーンを短縮し、物流問題、腐敗、汚染のリスクを低減できる、農場直送のミールキットなどの消費者直送の食品サービスを含む、新世代の食品生産・物流モデルへの関心が高まっています。

 

持続可能な食料供給システムの構築を目指して

政府と消費者が、より高品質で持続可能な食品と農法の開発に向けて足並みを揃えるというかつてない状況が実現されようとしています。また、食品供給全体で事業を展開する企業が、すでに持っている技術を活用し、今後必要とされる課題に応えていく未来も期待されます。

ピクテ・グループのニュートリション戦略は、長期的かつ個別企業の分析を重視したボトムアップ・アプローチで、持続可能な食料供給システムを構築するために不可欠な企業を選定し、投資を行っています。


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