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実践的基礎知識 金融/経済史編( 1 )<プロローグ>
2020/05/01

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概要

「温故知新」、故きを温ねて新しきを知る(ふるきをたずねて、あたらしきをしる)という意味です。昔の出来事を学んだり、調べ直したりして、道理や知識を得て、現在の仕事や生活に生かしていこうという考え方です。現在の私たちを取り巻く、日本と世界の金融・経済情勢、政治動向、国際問題等のそもそものルーツがどこにあるのか、スタート地点を第二次世界大戦が終わった1945年として、さまざまな出来事を振り返ってみましょう。




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金本位制

まずは前置きとして、戦前の出来事で重要なポイントを押さえておきましょう。

明治元年の1868年、政府紙幣「大蔵省兌換証券(太政官札)」が発行され、その後様々な紙幣が発行されましたが、いずれも不換紙幣(金貨と交換できない紙幣)で、大量発行により紙幣価値は下落していきました。1871年、「新貨条例」が制定(1897年の「貨幣法」制定まで有効)され、【1両=1円=1米ドル=金1.5g(0.0482オンス)】(金貨本位制)と定められました。現在の金価格が1グラム4,500円程度とすると、当時の1円は現在の6,800円程度に相当します。

1872年、政府は民間銀行に兌換銀行券を発行させ殖産興業資金を供給するため「国立銀行条例」を制定しましたが、民間銀行設立は4行にとどまったため政府は1876年に兌換義務を廃止します。すると不換紙幣を発行する民間銀行が一気に設立され、1879年にはその数は153行に達します。こうした中、政府が1877年の西南戦争の戦費を大量発行された不換紙幣で支払ったため、紙幣価値は大きく下落しました。1882年に兌換制度の確立と近代的な通貨・金融制度の確立を目的として日本銀行が誕生し、1885年には銀貨と交換できる兌換紙幣である日本銀行券「大黒札」が発行されました。

一方、世界の主要先進国は19世紀後半に銀本位制から金本位制への移行を進めました。日本もこれに従い1897年に金本位制を採用し「貨幣法」を制定、金0.75g=1円と定めした。

 

 

金本位制の崩壊

この当時、なぜ各国が金本位制を採用したのかというと、お互い他の国の通貨が信用できず、他国から物を買ったり、他国に物を売ったりして、その代金をやり取りするのに支障があったからです。

ただし、金本位制といえども、各国の信用力を完全にカバーできるわけではありません。例えば、A国が経済的にあるいは政治的に混乱したとします。他国はこのA国の混乱を見て、手持ちのA国の通貨を金に交換したくなるでしょう。そうなると、我も我もと金への交換が殺到して、A国から金が流出し、結果的にA国は金本位制が維持できなくなります。

実際、1929年に発生した世界大恐慌の後、金本位制を維持できない国が続出、1937年に最後まで頑張っていたフランスが諦めて金本位制を採用する通貨はなくなりました。

金本位制が廃止となって、再び他の国の通貨は信用できない、受け取りたくないという世界に戻ってしまいました。一方、世界経済は着実に成長し、貿易はどんどん活発に なっています。今さら貿易をしないとか、物々交換で対応することも現実的ではなくなっています。

 

 

ブロック経済

貿易が活発になっていく状況下、一部の先進国はブロック経済というものを作り出しました。これは共通の通貨を使う自国と植民地の間だけで貿易を行うものでした。

このブロック経済で有名なものに、イギリスの「スターリング(ポンド)・ブロック」、アメリカの「ドル・ブロック」、フランスの「フラン・ブロック」がありました。一方、植民地があまり無い国々はどうするのでしょうか。第一次世界大戦の敗戦国であるドイツは、ヴェルサイユ条約で軍備も植民地も一切放棄させられていました。このブロック経済が出現したことで、ドイツが「マルク・ブロック」設立を目指して再軍備し、その後イギリスやフランスとぶつかることとなりました。

当時の日本は、日清、日露戦争を勝ち抜いて中国に一定の権益を持っていました。日清戦争のあと、日本は中国の遼東半島を植民地にしようとしましたが、ドイツ、フランス、 ロシアが結託して日本が植民地とするのを妨げました。これが有名な三国干渉ですが、各国は熾烈な植民地獲得競争をしていたわけです。そして大東亜共栄圏、すなわち「円ブロック」を推し進めるために、満州国の建国、国際連盟からの脱退というように、日本はドイツ同様戦争へと進んでいきました。

戦後の経済動向を見ていくうえで、金本位制の導入と廃止、ブロック経済が戦争を引き起こす要因のひとつとなったこと、これらが第二次世界大戦後の世界に大きな影響を与えたことを確認しておきましょう。



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