ダンベル型投資 | ピクテ投信投資顧問株式会社

ダンベル型投資 市川眞一 グローバル 米国 日本

今週のサマリー

日米の景気は、日米の経済活動再開に伴い上向きとなった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は、先行きに強い不透明感を投げ掛けている。特に米国西部、南部の都市においては、再度のロックダウンが否定できなくなった。一方、新型コロナウイルスを契機に始まった社会・経済の変化は、企業に対し仕事のやり方を抜本的に見直すよう迫っている。 多くの職種において、リモートワークが採用され、平時になっても元に戻ることはなさそうだ。生産性の向上、コストの削減、そして社員の生活の質の改善を考えると、リモート化を進めることが合理的だからである。この流れは、仕事だけでなく、教育や医療など広範な分野へ応用され、「リアルからバーチャルへの転換」が起こるだろう。景気の先行きが不透明で、新たな成長産業が生まれつつあり、且つ中央銀行が大量の流動性を供給している状況下、株式への投資については、グロースとデフェンシブを合わせて保有する「ダンベル型」が適切なのではないか。他方、リターン・リバーサルが機能しないため、景気敏感は避けるべきだろう。

今週のポイントは、まず今後の米国及び日本の景気の見方だ。自ずと株式市場において持つべき業種・銘柄も変わるからである。また、新型コロナウイルスがもたらす社会・経済の変化に注目する必要があろう。その上で、リモート関連を追い掛けるのか、逆張りの景気敏感か、デフェンシブへの転換か、などの判断をしなければならない。

日本株は、米国景気に連動、もしくは遅行する傾向がある。それは、上場企業のうち利益水準の大きな自動車産業などが、米国市場を最大の収益源としているからだろう。足下、経済活動再開で米国の経済指標はリバウンドしている。ただし、新型コロナウイルスの感染は急速に拡大しており、先行きは不透明感が払拭できない。

米国で新たに確認された新型コロナウイルスの感染者は1日7万人を超えている。ニューヨークなど北東部は収束したが、南部のフロリダ、テキサス、西部のカリフォルニア、アリゾナなどが厳しい状況だ。この4州の経済規模は合計で日本のGDPの1.3倍に達するだけに、再度の都市封鎖となれば日本の景気にも大きな影響が及ぶだろう。

日本国内では、東京都を中心に感染が再拡大しつつある。病院、高齢者施設でクラスターが多発した第1波と異なり、今のところ20代、30代が中心のため、重症化による死者の急増には至っていない。ただし、新型インフルエンザ特措法に基づき、各都道府県知事が特定業種の企業、店舗への営業自粛要請を検討するなど、再び緊張感の高い状況に至っている。

TOPIXの今年の高値である1月20日から安値の3月16日までの東証業種別指数の騰落率、そこから7月15日までの騰落率の関係を見ると、新型コロナウイルスの下でのマーケットでは、リターン・リバーサルが機能していない。むしろ、ボラティリティの小さな医薬品、情報・通信、小売などが市場をアウトパフォームしていることが際立った特徴だ。

2017年以降、銀行のアンダーパフォームが目立つ。日銀のイールドカーブコントロール付き量的質的緩和により、長短金利のスプレッドが潰れ、業績が圧迫されているからだろう。加えて、新型コロナウイルス禍を受けた市場の下落及びリバウンド局面で、不動産も大きくアンダーパフォームした。これらの業種は、構造的な問題を抱えている可能性が強い。

都営地下鉄の平日における朝の通勤・通学ラッシュ時の乗車率(7:30〜9:30)は、4月第4週に新型コロナウイルスが深刻化する前の31%まで落ち込んだ。緊急事態宣言の解除を受け、回復に転じたものの、依然として平時の68%程度に留まる。リモートワークや時差出勤など、新型コロナウイルスにより働き方が大きく変化したからだろう。

7月6日、富士通は、リモートワークを前提に社員の出勤率を25%とする結果、3年間でオフィスが半減すると発表した。日立なども同様の決定を行なっている。新型コロナウイルスは、企業に仕事の仕方の改革を迫った。これまで、人事管理や社内規定、社会的慣行から、リモートワークは進まなかった。しかし、新型コロナウイルス禍を契機に、少なくない企業が積極的に活用する方向を模索している模様だ。

三鬼商事によれば、東京都心5区のオフィス空室率は、今年2月に1.49%まで低下した。需給の逼迫を背景に賃料も上昇を続けている。しかし、企業が仕事のやり方を見直すことで、今後、オフィス需要が大きく低下する可能性は否定できない。経営戦略の策定と家主への告知期間を考えると、その影響がデータに顕在化するのは今秋ではないか。

新型コロナウイルスの感染拡大により、日米両国ともに景気の先行きは予断を許さない。米国の主要都市が再度のロックダウンに追い込まれた場合、心理面を含めた経済的な影響は大きいだろう。一方、企業の仕事のやり方は大きく変化し、リモート授業やリモート診療も活用が進む見込みだ。中央銀行の流動性供給もあり、そうしたリアルからバーチャルへの社会の転換をリードできる業種・企業の株式には資金が流入するのではないか。つまり、現在の市場環境では、成長セクターとしてのリモート関連、そしてディフェンシブに分散投資する「ダンベル型」アプローチが適切だろう。

執筆者

市川 眞一シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。

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