ピクテ・マルチ・アセット・ストラテジー9月:期待は打ち砕かれた | ピクテ投信投資顧問株式会社

ピクテ・マルチ・アセット・ストラテジー9月:期待は打ち砕かれた

2019/09/24グローバル

ポイント

主要な中央銀行は、景気減速を抑えるために金融緩和策を講じていますが、足元の市場が織り込んでいるほどの積極的な金融政策が実施される公算は極めて低いと考えます。そのため、株式のアンダーウェイトを継続します。また、17兆米ドル相当のグローバル債券がマイナスの利回りとなっている状況を考えると、債券のアンダーウェイトと、キャッシュのフルオーバーウェイトを維持します。

株式市場の動揺と債券市場の上昇

8月の金融市場では、株式が売られ、債券が買われました。米中貿易摩擦の激化や、世界経済減速の兆しに対応した追加金融緩和策に、投資家が反応したためです。 グローバル株式の月間騰落率は現地通貨ベースで -2%となり、MSCI世界株価指数の年初来騰落率を+14%前半に押し下げました。債券は+2.9%上昇しました。原油価格(WTI)は、景気の先行き悪化を嫌気し、6%下落しました。一方、リスク回避志向が強まって、金価格は7%上昇し、年初来騰落率は20%に迫りました。

世界の株式市場は、現地通貨ベースで辛うじてプラスのリターンを維持したスイス市場を除き、全面安の展開となりました。中国の影響に左右されやすい市場、とりわけ新興国と日本は、予想通り大幅な下げを余儀なくされました。英国市場も、政局の混乱が懸念され、大幅安となりました。業種セクター別では、エネルギー、金融の両セクターが最も大きく売られ、月間騰落率は、それぞれ、-6%及び-5%となりました。

株式市場の下落とは対照的に、債券市場は堅調な展開となりました。その結果、先進国のソブリン債市場では、マイナス利回りで取引される債券が増え、その規模は17兆米ドル程度となりました。 米国国債市場は3%強の上昇となりました。FRBへの追加利下げ期待に加え、主要先進国のソブリン債の中で、プラスの名目利回りを提供し続ける数少ない債券の一つであることが価格を押し上げました。 投資家は、十数年ぶりで過去最高の月間上昇率を記録した米国社債市場に資金を投じたことから、投資適格社債の月間騰落率は3%、年初来騰落率は+14%に迫りました。 一方、ブルームバーグによれば、新興国通貨が対ドルで大幅に下落したことから、現地通貨建て新興国債券は大幅安となりました。アルゼンチン危機を受けてペソが暴落し、中国人民元は、月間では1994年以来25年ぶりの下落率を記録しました。

投資家の失望を招く中央銀行

世界経済が貿易戦争の影響を懸念し続けているのに対し、大部分の投資家は中央銀行が積極的な金融緩和を実施すると見ているようです。ピクテはこのように楽観的な見方には同意しかねます。 ピクテの景気先行指数は、今後数ヵ月間の経済成長の鈍化を示唆しています。貿易摩擦を巡る不確実性が、特に先進国の鉱工業生産や企業心理に影響を及ぼしているからです。 また、企業利益は、昨年2018年の大幅な伸びから一転し、年内にも成長が止まることが予想されます。

主要な中央銀行は、景気減速を抑えるために金融緩和策を講じていますが、足元の市場が織り込んでいるほどの積極的な金融政策が実施される公算は極めて小さいと考えます。 ピクテは、このような状況を勘案し、株式のアンダーウェイト(ベンチマークより低い投資比率)を維持します。同時に、債券に慎重な姿勢を維持することの正当性が増したと考えます。債券市場は、年初来、20年ぶりの上昇相場を展開し、グローバル債券指数(JPモルガン世界国債指数)の構成銘柄のほぼ3分の1がマイナス利回りを付けているからです。キャッシュは、フルオーバーウェイト(ベンチマークより高い投資比率)を維持します。

株式:欧州株式が米国株式よりも有望

米中間の貿易摩擦が再び激化する環境では、経済や企業利益の先行きを楽観視することの難しさが一段と増しています。関税率の引き上げや追加の貿易障壁を巡る脅威が、世界的に企業や消費者心理の重しとなっているからです。加えて、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る不確実性が増す環境を考えると、年内の見通しは明るいとはいえません。従って、グローバル株式は、アンダーウェイトを維持します。世界企業の利ざやは、株式アナリストの予想を大きく下回って推移しています。12ヵ月先の世界の企業利益成長率の市場予想7.6%は、ピクテの予想する世界景気先行指数の伸びの水準1.1%と大きくかい離しています(図表1参照)。賃金上昇による企業業績悪化によって、今後企業利益が大きく落ち込む可能性に注意が必要です。株式市場に慎重な姿勢を維持しています。

 

 

 

米国株式市場は、他の世界の株式市場と比べて、とりわけ魅力に欠けるように思われます。S&P500種株価指数は過去最高値をわずかに下回る水準に留まっていますが、一方では、米国のリセッション入りを示唆する信号が点滅しています。国債利回り曲線(イールドカーブ)上では長短金利が逆転しました(図表2参照)。

 

株式アナリストは、過去3年で最も大幅な米国企業の利益予想の下方修正を行っています。金融データ大手のファクトセットによると、今年の利益成長率のコンセンサス予想は引き下げられています。企業の自社株買いが減少していることも、投資家にとっては懸念材料です。ピクテの分析は、過去10年間の自社株買いで、市場のリターンの20%前後に、また、米国市場の欧州市場に対する超過リターンの33%前後が寄与していることを示唆しています。

一方、先行きが期待される市場も散見されます。地域別の資産配分では、欧州市場のオーバーウェイトを維持します。ドイツは、2四半期連続のマイナス成長という定義上のリセッション入りも予想される一方、ユーロ圏の景気先行指数は、フランス、イタリア両国のモメンタムの改善を背景に、過去半年を通じて上昇基調を維持しています。ECBの追加緩和も好材料です。また、ドイツの株式リスク・プレミアムが史上初の9%台を付けたことも注目に値すると考えます。

日本株は、円高にもかかわらず、底堅さを示しています。バリュエーション面では割安感が際立っており、ピクテの試算では、上値余地が20%に達します。英国株は、特に海外投資家にとって、魅力的だと考えます。ポンド安とバリュエーション面での割安感に加え、優良企業の利益の多くが海外で計上されているからです。また、5%を超える配当利回りは、市場のボラティリティ上昇の影響を一部遮断する効果を提供すると見ています。

新興国市場の先行きは、貿易戦争の影響で損なわれたものの、各国の相次ぐ利下げがその一部を相殺しています。アジア市場は特に有望です。

米中貿易戦争が中国からアジアの他の地域への事業移転を促し始めており、中国が損害を被る中、周縁国の中には漁夫の利を得る国も散見されます。

貿易戦争の影響を巡る懸念が強まる中、投資家は再びディフェンシブ銘柄を選好しています。生活必需品およびヘルスケアセクターは堅調な展開となり、ピクテは生活必需品セクターのフルオーバーウェイト、ヘルスケアセクターのオーバーウェイトを維持しています。一方、小型株は市場全体を大きく下回りました。米国の個人消費は、賃金の伸びと住宅ローン金利の低下を追い風に、これまでのところ堅調に推移し、リセッション入りを阻止する効果をあげていますが、このような状況がいつまでも続くとは限りません。

債券・為替:安全資産は供給不足

世界経済が減速する局面では、国債等、ディフェンシブ性の強い資産の投資配分を引き上げることが、通常理にかないます。ただし、現在問題となっているのは、ここ数ヵ月の債券利回りの急低下を受け、通常安全だと考えられる資産が高リスク資産に見えてしまっていることです。JPモルガン世界国債指数の平均利回りは、8月末までに史上最低の0.7%を付け、一方、米国30年国債利回りは8月末に2%を下回りました。マイナス利回りで取引されるグローバル債券が17兆米ドル程度となったことにも注意が必要です。

 

債券のバリュエーションは、中央銀行のハト派的スタンスで正当化されるとの見方も散見されます。ただし、追加緩和に対する市場の期待は、金融当局が実際に行うと予想される水準を超えているように見えます。ピクテの流動性分析は、名目GDP(国内総生産)比の金融刺激の現在の水準と市場に織り込まれた水準との格差が、過去に存在しないほどの幅に拡大しており、市場の期待が砕かれる可能性が高いことを示唆しています。

バリュエーション水準は、大方の国債市場をニュートラルからアンダーウェイトとするピクテの投資評価を支持しています。世界国債利回りはトレンドから大きく下方に乖離しています。また、世界国債利回りは、ピクテのモデルが試算する適正水準を大きく下回っています(図表3参照)。

ユーロ圏および米国のハイイールド債もアンダーウェイトとしています。信用格付けは悪化、レバレッジは上昇基調で、金融セクターを除く社債の発行残高はGDP(国内総生産)比47%と過去最高水準に達しており、ITバブル崩壊時の2000年或いはグローバル金融危機発生時の2008年に付けた水準を上回り、注視が必要とみています(図表4参照)。

 

債券市場が際立った上昇相場を展開したことから、ファンダメンタルズに対して割安だと見なしてきた現地通貨建て新興国債券も、短期的にはオーバーウェイトを維持することが難しくなり始めています。新興国債券の実質利回りは3%と、先進国債券と比べれば確かに魅力的です。とはいえ、新興国地域に及ぶ米中貿易戦争の負の影響が、ピクテの景気先行指数に明確に示されていることを勘案すると、特に目先は新興国通貨が売られる可能性があると考えます。

通貨についてはスイスフランを、金と同じくオーバーウェイトとしています。スイスフランも金も、地政学的な混乱やグローバル経済の悪化局面で、底堅さを発揮することが期待されています。

 

 

 

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