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富裕層はどのような商品に投資するのか
森永 康平
2019/12/25

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概要

この1年で様々な個人投資家と話す機会が多くなってきましたが、投資をはじめて数年が経ったぐらいの個人投資家の方からたまに聞く話が、「富裕層は普通の個人投資家が買えないような、ローリスクだけどすごくハイリターンの金融商品を買っているんですよね?」というものです。富裕層は自ら富裕層であると言いふらさないため、だれが富裕層かも分からず、それ故にあまり富裕層の実態を目にすることがないでしょうから、少し都市伝説のように噂だけが独り歩きしているようです。今回は富裕層がどのような運用をしているかをみてみましょう。



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日本には富裕層がどれぐらいいるのか?

まず、日本にはどれだけ富裕層がいるのでしょうか。そもそも、富裕層はどのような人を指すのでしょうか。2018年12月に野村総合研究所が2017年の日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模を各種統計などから推計をして発表しました。

預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた「純金融資産保有額」を基に、総世帯を5つの階層に分類しています。この調査によれば富裕層は世帯の純金融資産保有額が1億円以上、5億円未満とされており、5億円以上は超富裕層とされています。

この定義だと2017年時点では富裕層は118.3万世帯、超富裕層は8.4万世帯となっています。全体で5,372.3万世帯なので、富裕層は全体の2.2%、超富裕層は0.02%となります。この数字をどう捉えますか。筆者は意外と多いなぁ、と感じています。2000年の同じ調査をみてみると、富裕層は76.9万世帯、超富裕層は6.6万世帯ですので、日本全体で貧困層が増えていることが問題視されていますが、一方で富裕層・超富裕層も増えているのです。

富裕層だけが買える金融商品?

それでは、富裕層は自分の資産をどのように運用しているのでしょうか。お金を持っている人はお金への意識が高いことも多く、自分で運用している人もいますが、忙しくて投資は金融機関に任せてしまうという人もいます。富裕層だけにサービスを提供するプライベートバンクという部門を持つ金融機関はありますが、たしかにそこでしか買えない金融商品があることも事実です。しかし、それは都市伝説のように語られるようなローリスクでハイリターンが確約されているような金融商品ではなく、購入にはある程度の金額が必要になる商品になります。たとえば、流動性に劣るハイブリッド証券(劣後債や優先証券)や、オーダーメイドの仕組債、特定の少人数のためにつくる私募投信などです。

しかし、そのような金融商品に全額を投資するわけではなく、意外と年間で2~4%のリターンを確保できるような、徹底的にリスクを抑えて運用できるような金融商品に多くの資産を投資するケースが多いように感じます。日本は物価がマイナスになるデフレや、ほとんど物価が上がらない低インフレの状態を長年続けているため、資産を現預金のまま置いておくことに危機感を感じていますが、諸外国の場合だと前年比2%ほどの物価上昇率を考えて、資産を現預金として置いておくのではなく、低リスクでジワジワと上昇するような金融商品に投資をすることをより好むのです。

富裕層が求める運用方針とは?

それでは、どのようにしてリスクを抑えつつ、安定したリターンを実現していくのでしょうか。実は個人投資家が心掛けている長期、分散、積立という方針と大きな違いはありません。

たとえば、ピクテでは長年培ってきた資産保全の大原則として分散投資を挙げています。しかし、それはただの分散ではなく、各資産の相関とリスクを分析し、徹底的にリスクを分散させています。ピクテが運用しているファンドのなかでクアトロというものがありますが、そのファンドではグローバル分散、資産分散を行い、かつ資産間の相関や各資産のリスク(標準偏差)の大きさに着目して、リスクの配分を考えるリスク・バジェットを行い、徹底分散をして安定したリスク・リターンを追求しています。実際の資産構成比率をみると、非常に細かく分散されていることが分かります。

リスク・バジェットについて、少し説明しましょう。一般的に、株式は債券よりリスクが高く、その分、期待されるリターンも高いとされています。従来は株式と債券を半分ずつ保有して分散投資をしましょうと言われていましたが、それだと投資金額としては半分ずつになっているかもしれませんが、リスク量で考えると、株式への投資によるリスクを多く取りすぎていることになります。そこで、投資金額ではなく、リスク量で半分ずつになるようにしましょう、という考えがリスク・バジェットです。実際に下図でも株式やオルタナティブに比べて債券への投資比率が大きいのはそれが理由です。

(出所):ピクテ投信投資顧問

 

 

様々な資産に分散投資をしているものの、ほとんどが知っている資産かと思います。そのなかでも、あまり馴染みのない資産は「オルタナティブ」でしょうか。

オルタナティブとは、上場株式や債券などの伝統的資産と呼ばれるもの以外の、新しい投資対象や投資手法のことをいいます。例えば、REIT、コモディティ等への投資のほか、ロング・ショート戦略(割安と判断される資産を買建て、割高と判断される資産を売建てる投資手法)等があります。一般的に株式や債券等との相関が低く、分散投資効果で全体のリスク・リターンの向上を図るために用いられます。

下図は実際にクアトロに組み入れられているオルタナティブ資産と他資産間の相関係数をグラフにしたものですが、ほとんど相関がないことが分かります。

(出所):ピクテ投信投資顧問

 

 

このように、リスクや各資産間の相関係数までを考慮して、徹底的にグローバル分散投資をすることで、どんな相場環境でもリスクを極限まで抑えて、安定的なリターンを求めるのです。クアトロはリーマンショックのような暴落はまだ経験していませんが、類似の運用をしているスイスの「マルチアセット・アロケーション戦略」のパフォーマンスを見てみると、これまで述べてきたことがよく分かります。

ピクテのマルチアセット・アロケーション戦略と各資産のパフォーマンス推移

 

 

(出所):ピクテ・アセット・マネジメント、ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

※ピクテのマルチアセット・アロケーション戦略:2008年6月にスタートしたユーロベースの低リスク型アセット・アロケーション運用(費用控除後、円ヘッジベース)※世界国債:FTSE世界国債指数(円換算)、米国ハイイールド債券:ICE バンクオブアメリカ・メリルリンチ米国ハイイールド指数(円換算)、日本株式:TOPIX、世界株式:MSCI世界株価指数(円換算)、米国リート:FTSE/NAREITオール・エクイティ・リート指数(円換算)※すべてトータル・リターン

 

この「マルチアセット・アロケーション戦略」のパフォーマンスは、通貨がユーロ表示ですから円高の影響を受けてしまうクアトロとは異なりますが、リーマンショック時にもほとんど下がっていません。その後、他の資産が上昇していっても、それにもついていくことはなく、ジワジワと上昇していることが分かるかと思います。

世界の富裕層は短期間で大きく儲けることよりも、このような値動きをする金融商品を求めているのです。日本は未だに低インフレのトレンドから脱せず、更には再びデフレに再突入しかねない現況ではありますが、将来の資産形成を考えた時に、他国のように前年比2~4%程度のインフレになった場合のことも考えていかないといけません。ある程度の資産を持つ方は、このような戦略で運用されている金融商品を検討してみてもいいかもしれません。

 

※記事内で例にあげた「クアトロ」の商品ページはこちらです。投資リスク、手続・手数料等は、目論見書をご覧ください。


森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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投資リスク、手続き・手数料等については以下の各ファンド詳細ページの投資信託説明書(交付目論見書)をご確認ください。

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