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2025年7月のバイオ医薬品市場
2025/08/20

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概要


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■バイオ医薬品関連企業の株価動向

7月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は上昇しました。

世界の株式市場は、6月の米国の雇用統計が景気の底堅さを示す内容だったことや、関税交渉を巡り米国と日本や欧州連合(EU)の間で合意が成立し、中国とも進展期待が高まったこと、さらに4-6月期の企業決算が総じて市場予想を上回ったことなどから、上昇しました。

このような中、バイオ医薬品株式市場は、市場平均を上回る上昇となりました。規制当局による新薬の承認や有望な臨床試験結果の発表に加え、米医薬品大手メルクによるベローナ・ファーマ(フランス)の買収発表など、バイオ医薬品企業をターゲットとしたM&A(合併・買収)の動きも、バイオ医薬品株式の上昇要因となりました。

株価が上昇した銘柄としてはインサイト(米国)、アイオニス・ファーマシューティカルズ(米国)、アストラゼネカ(英国)などが挙げられます。インサイトは、2025年4-6月決算が主力治療薬ジャカフィが好調だったことなどを受けて売上高、利益ともに市場予想を上回ったことに加え、ジャカフィの2025年通期見通しを引き上げたことなどが好感され株価が大きく上昇しました。アイオニス・ファーマシューティカルズは、新薬候補(パイプライン)開発の進展期待が継続する中、証券会社の目標株価引き上げなどから、株価が上昇しました。アストラゼネカは、2025年4-6月期決算が、がん領域と米国市場における販売が好調で、売上高が市場予想を上回ったことなどが評価され株価の上昇要因となりました。




■今後のバイオ医薬品市場見通し

バイオ医薬品株式市場は、米国金利の変動や米トランプ政権の関税政策などを背景とした景気見通しの不透明感、米食品医薬品局(FDA)の再編の動き、米トランプ政権による薬価引き下げの動きへの懸念などの影響を受けて、変動が大きくなっています。2023年に大型案件が多くみられたM&A(合併・買収)の動きは、2024年は低迷しましたが、2025年は回復が期待されます。特にフェーズ2で良好な治験結果が示された治療薬候補を有するなど買収後のリスクの低い銘柄が注目されます。新薬の開発では、画期的な新薬の開発が続いており、AI(人工知能)の進化が、さらに開発を加速するとみています。

またFDAが、医療ニーズが満たされていない適応症の治験については柔軟な姿勢を示していることも治療薬の開発を支援するものと考えます。さらに、資金調達については、新薬の開発が順調な企業では引き続きスムーズに進められています。一方、IPO(新規株式公開)は依然として低調な状況が続いています。引き続き米国の金融政策、マクロ経済の動向、トランプ新政権の政策動向には注視が必要と考えます。

長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。

いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。

最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。さらにAIの進化はバイオ医薬品業界のイノベーションに大きな役割を果たすことが期待されます。






■バイオ医薬品関連企業の売上高は新薬承認後の業績寄与などにより相対的に高い伸びに

バイオ医薬品関連企業の売上高は、堅調に成長してきました。(図表6参照)バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+12.6%の相対的に高い売上高の伸びが予想されています。(図表7参照)




■売上高の伸びに沿って株価も上昇

過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)



■バリュエーション


バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降は新薬承認申請に対するFDAの予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことからPSRも低下し、その後、低水準で推移しています。(図表9参照)





                                                                    

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