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2025年8月のバイオ医薬品市場
2025/09/12

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概要



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■バイオ医薬品関連企業の株価動向

8月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は上昇しました。

世界の株式市場は、良好な企業決算や米国の利下げ観測の高まりなどを背景に上昇しました。このような中、バイオ医薬品株式市場は、市場平均を上回る上昇となりました。株式市場では、これまで出遅れていたバイオ医薬品セクターや小型株などが注目されました。一方、6月、7月と活発だったM&A(合併・買収)の動きは、8月は低調でしたが、年末に向けて、特に開発の後期段階や商業化段階の治療薬を有するバイオ医薬品企業が注目されるものと考えます。

株価が上昇した銘柄としてはアルナイラム・ファーマシューティカルズ(米国)、インサイト(米国)などが挙げられます。アルナイラム・ファーマシューティカルズは、2025年4-6月決算がアミロイド神経炎やアミロイド心筋症の治療薬アムヴトラの販売が好調で市場予想を上回り、2025年通期の見通しも引き上げられたことなどが好感され、株価の上昇が大きくなりました。インサイトは、7月末に良好な決算を発表して株価が大きく上昇した流れが、8月も継続しました。

株価が下落した銘柄としては、バーテックス・ファーマシューティカルズ(米国)、アムジェン(米国)などが挙げられます。

バーテックス・ファーマシューティカルズは、急性痛治療薬候補の治験が目標に達しなかったことなどを受けて株価が大きく下落しました。アムジェンは、市場予想を上回る2025年4-6月決算を発表したものの、年内に発表予定の肥満治療薬候補マリタイドの治験結果が注目される中で、株価は低調な動きとなりました。



■今後のバイオ医薬品市場見通し

バイオ医薬品株式市場は、米国金利の変動や米トランプ政権の関税政策などを背景とした景気見通しの不透明感、米食品医薬品局(FDA)の再編の動き、米トランプ政権による薬価引き下げの動きへの懸念などの影響を受けて、変動が大きくなっています。2023年に大型案件が多くみられたM&A(合併・買収)の動きは、2024年は低迷しましたが、2025年は回復傾向にあります。引き続き大手の医薬品企業や大手のバイオ医薬品企業が大型治療薬の特許問題に直面し、パイプラインの強化が求められていることもあり、2025年後半にかけても増加が期待されます。フェーズ2で良好な治験結果が示された治療薬候補を有するなど買収後のリスクの低い銘柄が注目されますが、アンメットメディカルニーズの大きな分野においてパイプラインを有する銘柄も関心を集めるとみています。新薬の開発では、画期的な新薬の開発が続いており、AI(人工知能)の進化が、さらに開発を加速するとみています。また米国食品医薬品局(FDA)が、医療ニーズが満たされていない適応症の治験については柔軟な姿勢を示していることも治療薬の開発を支援するものと考えます。さらに、資金調達については、新薬の開発が順調な企業では引き続きスムーズに進められています。一方、IPO(新規株式公開)は依然として低調な状況が続いています。引き続き米国の金融政策、マクロ経済の動向、米トランプ政権の政策動向には注視が必要と考えます。

長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。さらにAIの進化はバイオ医薬品業界のイノベーションに大きな役割を果たすことが期待されます。






■バイオ医薬品関連企業の売上高は新薬承認後の業績寄与などにより相対的に高い伸びに

バイオ医薬品関連企業の売上高は、堅調に成長してきました。(図表6参照)バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+12.9%の相対的に高い売上高の伸びが予想されています。(図表7参照)




■売上高の伸びに沿って株価も上昇

過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)



■バリュエーション

バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降は新薬承認申請に対するFDAの予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことからPSRも低下し、その後、低水準で推移しています。(図表9参照)






                                                                    

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