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2025年10月のバイオ医薬品市場
2025/11/13

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概要



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■バイオ医薬品関連企業の株価動向

10月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は上昇しました。

世界の株式市場は、米国の追加利下げ観測の高まりやAI(人工知能)関連の大型投資案件の発表などを背景に上昇しました。このような中、バイオ医薬品株式市場は市場平均を上回る上昇となりました。

大型のM&A(合併・買収)の成立や大手医薬品企業ファイザー(米国)が米国政府と薬価引き下げで合意に至ったことなどがバイオ医薬品株式市場の上昇をけん引しました。M&Aの動きは、ノバルティス(スイス)によるアビディティ・バイオサイエンシズ(米国)、ノボノルディスク(デンマーク)によるアケロ・セラピューティクス(米国)、アルカームス(アイルランド)によるアバデル・ファーマシューティカルズ(アイルランド)などの買収が発表されたほか、ファイザーとノボノルディスクが肥満治療薬の開発を進めているメッツェラ(米国)の買収に向けて動いていると報じられるなど、活発化しています。また、薬価引き下げに関するファイザーと米国政府との合意は、同様の合意が広がることで、薬価引き下げに関する不透明感が後退することとなり、医薬品業界全体にとってプラスになるとみています。

株価が上昇した銘柄としては、インスメッド(米国)、リジェネロン・ファーマシューティカルズ(米国)、アイオニス・ファーマシューティカルズ(米国)などが挙げられます。インスメッドは、新薬のブリンスプリの立ち上がりが好調なことに加え、主力治療薬アリケイスの通期売上見通しを引き上げたことなどが好感され、株価が大きく上昇しました。リジェネロン・ファーマシューティカルズは、2025年7-9月期決算が高用量アイリーアの販売が市場予想を上回るなど堅調な内容となったことなどが好感されました。アイオニス・ファーマシューティカルズは、9月にオレザルセンの適応拡大の治験において良好な結果を発表して以降、株価は上昇基調で推移しています。



■今後のバイオ医薬品市場見通し

バイオ医薬品株式市場は、米国金利の変動や米トランプ政権の関税政策などを背景とした景気見通しの不透明感、米トランプ政権によるヘルスケア関連政策への懸念などの影響を受けて、変動が大きくなっています。米国における薬価引き下げの動きについては、ファイザーと米国政府が合意に至りましたが、同様の合意が広がることで薬価に関する不透明感が後退し、幅広い投資家が医薬品セクターに再注目することが期待されます。

2023年に大型案件が多くみられたM&Aの動きは、2024年は低迷しましたが、2025年は、足元、複数の大型案件が成立するなど、回復傾向にあります。引き続き大手の医薬品企業や大手のバイオ医薬品企業が大型治療薬の特許問題に直面し、パイプライン(新薬候補)の強化が求められていることもあり、増加傾向の継続が期待されます。引き続き、フェーズ2で良好な治験結果が示された治療薬候補を有するなど買収後のリスクの低い銘柄が注目されますが、アンメットメディカルニーズの大きな分野においてパイプラインを有する銘柄も関心を集めるとみています。新薬の開発では、画期的な新薬の開発が続いており、AIの進化が、さらに開発を加速するとみています。また米食品医薬品局(FDA)が、医療ニーズが満たされていない適応症の治験については柔軟な姿勢を示していることも治療薬の開発を支援するものと考えます。さらに、資金調達については、新薬の開発が順調な企業では引き続きスムーズに進められています。一方、IPO(新規株式公開)は依然として低調な状況が続いています。引き続き米国の金融政策、マクロ経済の動向、米トランプ政権の政策動向には注視が必要と考えます。

長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。さらにAIの進化はバイオ医薬品業界のイノベーションに大きな役割を果たすことが期待されます。






■バイオ医薬品関連企業の売上高は新薬承認後の業績寄与などにより相対的に高い伸びに

バイオ医薬品関連企業の売上高は、堅調に成長してきました。(図表6参照)バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+12.4%の相対的に高い売上高の伸びが予想されています。(図表7参照)




■売上高の伸びに沿って株価も上昇

過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)



■バリュエーション

バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降は新薬承認申請に対するFDAの予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことからPSRも低下し、その後、低水準で推移しています。(図表9参照)






                                                                    

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