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サステナブルな建築と土を使わない農業

世界初の超高層農園タワー「farm-scraper」

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世界初の超高層ビル型農業施設「ファームスクレーパー(farm-scraper)」は、高層での屋内栽培などを行う垂直農法と呼ばれる農作法に新たな可能性を開きます。



1. 食料自給が求められる都市

世界では、約44億人が都市に住み、その人数は日々増え続けています。ただ、それだけの人々が暮らすには問題があります。まず、従来の建築方式は環境を破壊しており、土地の重要性はますます高まっています。さらに大きな課題は、増加する都市住民に、どう栄養豊富な食料を供給し続けるかということです。

一つの解決策は、都市自体がもっと食料を自給できるようになることです。そうすれば、フードマイレージ(食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせた指標)を減らし、都市の二酸化炭素排出量を減少させることができます。しかし、そのためには、都市の中で農地を増やす方法を見つけなければなりません。

「屋上に農園がある建物は世界中にありますが、問題はその規模が非常に小さいことです。あれでは一家族分の食料をまかなうのが精一杯でしょう」。CRA(Carlo Ratti Associati)の共同創立者であり、MIT(マサチューセッツ工科大学)Senseable City Labのディレクターでもあるカルロ・ラッティ氏は言います。「新たな水耕栽培技術を活用し、屋内で大量生産を可能にする方法はあるのでしょうか?」



2. 超高層農園タワーにおける先進農法

この問いに挑戦しているのが、CRAが中国南部の深圳市に建設したJian Mu Towerという最新プロジェクトです。高さ約218メートル、51階建てのこのタワーは、約1万平方メートルの食料生産スペースを持ち、「垂直農法」に全く新しい意味を与えました。

世界初の「ファームスクレーパー」と呼ばれるこのビルは、年間27万kgの新鮮な野菜などを生産することが可能です。果物、野菜、ハーブ、サラダ菜などの栽培には、「エアロポニックス」と呼ばれる土を使わない先進的な農法が用いられます。栽培される植物の根は土の中ではなく、十分な酸素が確保された空気中で育てられます。水分や栄養分は細かい霧状で噴射され、その量はAIがサポートする「バーチャル農学者」の手によって常に最適化されています。

従来の水耕栽培では、養分や酸素を含んだ水中で根を育てるため管理が困難でしたが、このエアロポニックスはその点が改良されています。

気候変動や集約農業によって耕作可能な土壌が急速に失われている現在、世界人口の増加に対応するためには、土を使わない農業が鍵を握ると考えられています。毎年、表土の1%が侵食によって失われていると言われていますが、これは主に農業が原因です1。国連によると、現在のレベルの侵食が続けば、60年以内に世界の表土が枯渇すると言われています。

「ファームスクレーパー」の建物内で育つ植物は、超高層ビルの環境負荷軽減に貢献し、環境に優しいビルの新たなあり方を示してくれるかもしれません。建築物は、その建設と運営を通じて、世界のエネルギー使用量の36%を占めると同時に、エネルギー関連の二酸化炭素排出量の約40%を占める要因でもあります。つまり、建築分野における環境負荷の軽減は、気候変動との戦いにおいて避けては通れない課題なのです。



3. 超高層農園タワーでは高層ビルの遮光も可能に

都市部の超高層タワーが抱える問題として、太陽光をどう遮るかがあります。

「高い建物や超高層ビルの場合、遮光設備が必要です」とラッティ氏は指摘します。

都市部では、ガラス張りの高層ビルの外壁に太陽光が反射することがよくあります。これはオーバーヒートの原因となり、大量の電力を空調設備に消費することを余儀なくされます。また、ビル内部でも、コンピュータのスクリーンに映り込みが生じると、利用者の不満につながります。

一方「ファームスクレーパー」なら、植物が自らの成長のために太陽光を吸収してくれるだけでなく、同じ建物内で人が集まるオフィスやショップに日陰をもたらす効果も期待できます。

大規模な建物になると、このようなデザインは大きな違いをもたらします。調査によると、都市の気温上昇は、アスファルトやコンクリートなどの熱をため込む舗装材の普及や、植物の不足によって生じます。そしてそれは巡り巡って、疾病率や死亡率の上昇へとつながる可能性があります2

植物が吸収してくれるのは太陽光だけではありません。空気中の二酸化炭素濃度を下げ、気候変動の影響を軽減するには、植林により緑を増やすことも重要です。

「1年で約4万人分の食料と約2万kgの二酸化炭素を吸収することができます」とラッティ氏は言います。「これは皆がWin-Winになれるものなのです」。

 

[1] "Dirt: The Erosion of Civilizations", D. R. Montgomery, 2012
[2] "Global urban population exposure to extreme heat", C. Tuholske et al, 2021



対談者
カルロ・ラッティ

建築家、兼エンジニア。自身が指揮するSenseable City Labがあるマサチューセッツ工科大学(MIT)にて教鞭をとる。国際的なデザイン&イノベーションオフィスであるCarlo Ratti Associatiの共同創立者。

トリノ工科大学とパリの理工系グラン・ゼコール(高等専門教育機関)である国立土木学校を卒業後、英国ケンブリッジ大学で修士号と博士号を取得。この10年間は「スマートシティ」をテーマに世界各地で講演を行い、作品はヴェネチア・ビエンナーレ、ニューヨーク近代美術館(MOMA)、ロンドン科学博物館、バルセロナ・デザイン・ミュージアムなどに展示された。Digital Water Pavilion(デジタル・ウォーター・パビリオン)とCopenhagen Wheel(コペンハーゲン・ホイール)の2つのプロジェクトは、『TIME』誌の「Best Inventions of the Year(各年の最も優れた発明品)」に選出。また、『BLUEPRINT』誌の「25 People who will Change the World of Design(デザインの世界を変える25人)」や、『WIRED』誌の「Smart List: 50 people who will change the world(スマートリスト:世界を変える50人)」にも選ばれた。2015年のミラノ万博ではFuture Food Districtのキュレーターを務め、現在は世界経済フォーラムのGlobal Future Council on Cities and Urbanizationの共同議長を務める。



本ページは2021年11月にピクテ・アセット・マネジメントが作成した記事をピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集したものです。




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