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資産運用を幅広く考えるタイミング
森永 康平
2023/11/16

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概要

2019年6月、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループが提出した報告書がきっかけとなり、「老後2,000万円問題」を懸念した多くの日本人が資産運用を始めました。しかし、足元では賃金の上昇よりも早いペースで物価が上昇し、円安や金利上昇も進んでいることから、老後よりも前に訪れるライフイベントを懸念する人が増えている印象があります。

どのようにして、子どもの学費や住宅購入費用を備えればいいのでしょうか。今回は資産運用を幅広く考えていきたいと思います。



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インフレ、金利上昇、円安・・・

総務省が発表した8月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比+3.1%と12ヵ月連続で3%を超えました。買い物に行くと、あらゆる商品の値段が上がっている印象を持つ人が多いと思いますが、その実感が経済指標にも表れています。また、厚生労働省が発表した8月の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は前年同月比-2.5%となり、7ヵ月連続でマイナスの伸びとなっています。賃金の上昇が物価の上昇速度に追い付かず、実質的に賃金が下がるような状況にあっては、将来のことを考える前に目先のことを考えざるを得ません。

金融市場に目を向けてみると、10月に入って米ドル円相場は1年ぶりに1米ドル=150円という円安の大台を突破し、債券市場では⻑期金利が10年ぶりに0.8%を超えました。円安が進めば海外から輸入するモノの値段が上昇し更に物価が上昇する可能性もあり、⻑期金利に続いて短期金利も上昇するようになると、住宅ローンの固定金利だけでなく、多くの人が選択している変動金利も連動して上昇するようになってしまいます。そうなれば、ただでさえインフレで家計が厳しいにもかかわらず、更に毎月の返済負担が大きくなってしまいます。

 

資産運用を幅広く考える

このように、老後資金は相変わらず心配であるものの、インフレや金利の上昇、円安など様々な外部環境の変化を考えると、子どもの学費や住宅購入費用など、目先のライフイベントにかかるお金のことが気になります。そこで、これらの外部環境の変化をキッカケとして、資産運用について幅広く考えてみましょう。

これまで日本では物価が上がらないどころか、物価が下がるデフレ経済の状態が⻑く続いていたため、資産の大半を現預金としていても価値が目減りすることはありませんでした。しかし、インフレ局面になれば資産の目減りが始まってしまいます。そこで、ここ数年では多くの個人投資家が「つみたて投資」を実践し、投資信託を通じて資産の一部を株式に投資してきました。

しかし、ここまで外部環境が変わってくると、「本当に投資信託を活用して株だけに投資をしていれば良いのか」「金利が上がってきたなら債券にも投資をした方が良いのではないか」「今後も円安が進むのであれば、日本株だけでなく外国株に投資をした方が良いのではないか」など資産運用を幅広く考える必要があると思う人も増えてくるでしょう。2024年から非課税投資制度であるNISAが新しく生まれ変わります。それを念頭に置けば、このタイミングで資産運用を幅広く考えることはとても重要だと思います。

 

新しいNISAを前に戦略の練り直し

現行のNISAでは「つみたてNISA」と「一般NISA」のどちらかを選択しなければいけませんが、新しいNISAでは「つみたて投資枠」と「成⻑投資枠」の併用が認められています。既に「つみたてNISA」で投資をしている人のなかには、新しいNISAでは両方の投資枠を現行の投資先に向けることで事実上、「つみたてNISA」の毎月の積立額を増額させるような使い方を考えている人も多いことでしょう。

しかし、株だけに投資をしていて良いのか、投資先を日本だけにしておいて良いのか、など、資産運用を幅広く考えたい人には、つみたて投資枠は「つみたて投資」を続けるべくインデックス投信を投資先に選ぶ一方で、成⻑投資枠では国内外の株式と債券に投資をしているバランス型投信や、海外の債券に投資する投資信託を投資先に選んでも良いかもしれません。

仮に円安が今後も進むのであれば、やはり外国株や海外の債券といった外貨資産にも投資資産の一部を割り当てた方が良いですし、金利が更に上昇していくようであれば、相対的に株式への投資妙味が下がります。また金利上昇の影響で景気が減速すれば、株式市場にとっては逆風になることもあるため、そのようなシナリオに備えて資産運用を幅広く考え、なるべく多くの選択肢を頭に入れたうえで、自身のライフプランに沿ったポートフォリオを組んでいく必要があると考えます。


森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。



新NISA対象のバランス型投信



※2023年11月16日時点
※ピクテ・アセット・アロケーション・ファンドは1年決算型のみ対象です。


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