Article Title
ナスダック総合指数の急落 カギを握る米実質金利
田中 純平
2022/04/18

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

ハト派とされていたニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁の「タカ派」発言等によって、14日の米10年国債利回り(名目金利)はザラ場で2.83%まで急上昇し、ナスダック総合指数は前日比-2.14%の大幅安となった。このナスダック総合指数が年初来で見ても急落している理由のひとつとして、名目金利から期待インフレ率を差し引いた「実質金利」の急騰が挙げられる。



Article Body Text

NY連銀ウィリアムズ総裁もタカ派に転身?

先週はハト派と見られていたニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁がマーケットを動かした。きっかけは、14日のブルームバーグのインタビューだった。ウィリアムズ総裁は現在のフェデラルファンド(FF)金利が非常に低いため、次回5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における0.5%の利上げは「妥当な選択肢」と述べ、さらに政策金利をより中立に近い水準へ戻す必要があるとの見解も示した。これを受けて、14日の米10年国債利回りはザラ場で2.83%まで急上昇する展開となった。

この直前に発表された欧州中央銀行(ECB)理事会後の声明文がややハト派と解釈され(7-9月に資産購入終了後に「しばらくしてから(some time after)」利上げを行う方針を示したため)、米10年国債利回りはやや低下していただけに、このウィリアムズ総裁の発言によってマーケットは不意を突かれた格好となった。ハト派のウィリアムズ総裁までもが利上げを急ぐべきとの認識を示したことで、改めて米連邦準備制度理事会(FRB)による急激な金融引き締め政策が意識された。

米実質金利の急騰等がナスダック総合指数の急落要因

ウィリアムズ総裁発言が動かしたのは、米国債利回りだけではない。米国株式市場ではナスダック総合指数が前日比-2.14%の大幅安となり、S&P500指数(同-1.21%)、NYダウ(同-0.33%)を超える下落率になった。成長株の比重が高いナスダック総合指数は、相対的に市場予想株価収益率(PER)が高い。このため、「利上げ」と「量的引き締め」が同時並行で急ピッチに行われると予想されるFRBの急激な金融引き締め観測等によって、特にナスダック総合指数の年初来騰落率が他の主要株価指数と比較して悪化していることが分かる(図表1)。

実際、主要株価指数の市場予想PER(12ヶ月先)を昨年末時点と4月14日時点とで比較すると、最も市場予想PERが高いナスダック総合指数が31.2倍から25.8倍へ5.4倍ほど低下しており、2倍前後の低下にとどまっている他の主要株価指数よりもバリュエーション調整が進んでいる(図表2)。

このFRBの急激な金融引き締め観測を端的に示すものが米10年実質金利だ。新型コロナショックでFRBが大規模な金融緩和を行った結果、実質金利は-1.0%を下回る水準まで大きく沈んでいたが、4月14日時点では-0.08%台まで巻き戻している(図表3)。実質金利がプラス圏に浮上するのも時間の問題だろう。

 


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当、新興国株式にも精通する。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場をカバー。レポートや動画、セミナーやメディアを通じて投資戦略等の情報発信を行う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBCに出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


原油高と物価高が引き起こす米国株の地殻変動

超長期の上値抵抗線を突き抜けたS&P500指数

最高値更新のS&P500均等加重指数が示唆するもの

いまはバブルなのか?米IPO市場からヒントを探る

米株高の「資産効果」で個人消費は上振れか?

米国株の上値余地は?利益成長率から考察