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- イスラエルがイランの核関連施設を攻撃 米国株式市場への影響は?
イスラエルがイランの核関連施設を攻撃したことで、中東情勢は急速に緊迫化した。米国株式市場では、「TACOトレード」によって投資家心理が楽観的な状態にあっただけに、リスクオフの動きが広がる可能性には注意が必要だ。急騰した原油先物価格が米国のガソリン小売価格に波及した場合、個人消費への悪影響も懸念される。
イスラエルがイランの核関連施設などを攻撃
イスラエルのカッツ国防相は、6月13日(金)にイランの核濃縮プログラム(イラン中部イスファハン州ナタンズにある主要なウラン濃縮施設)に対する先制攻撃を実施したと発表した。
一方、米国とイランは核協議を続けており、6月15日(日)にはオマーンで6回目の協議が予定されていた。イランが核兵器を保有すれば、イスラエルにとって深刻な脅威となるため、米国は核開発を制限する合意の実現を目指していた。
しかし、トランプ米大統領は6月12日(木)の時点で、イスラエルによるイランへの軍事攻撃について「大規模な衝突の可能性がある」と警告していた。また、6月11日(水)には緊急要因以外のバグダッドの米大使館職員らを退避させる措置を取っていた。トランプ大統領は、イラン攻撃を主張するイスラエルのネタニヤフ首相に自制を求めていたが、米国の抑止力が効かなくなっていたとみられる。
ルビオ米国務長官は、イスラエルによるイラン攻撃への米国の関与を否定したが、イランは米国にも責任があるとして非難を強めており、米国とイスラエルに対して厳しい報復を行うと警告している。この事態により中東地域全体を巻き込んだ広範な紛争に発展するリスクが高まっている。
イスラエルのイラン攻撃による金融市場の反応は?
イスラエルによるイランの核濃縮プログラムへの攻撃を受け、金融市場では原油や金の価格が大きく動いた。
WTI原油先物価格は、一時前日比14.1%上昇した(図表1)。この急騰は、攻撃が石油インフラに拡大する可能性や、イランがホルムズ海峡を閉鎖する懸念が背景にあるとみられる。
また、安全資産とされる金(ゴールド)のスポット価格も一時前日比1.7%上昇した(図表2)。地政学的リスクの高まりを受けて、リスク回避の動きが金の買いを促したと考えられる。
一方、株式市場ではリスク回避の動きが広がり、6月13日(金)の日経平均株価は前日比0.89%安の37,834.25円に下落した(図表3)。
中国株やインド株も下落しており、米国株の先物市場でも主要株価指数が軒並み1%を超える下落率を示した(図表4)。市場全体は典型的なリスク・オフ相場の様相を呈している。(※いずれも日本時間6月13日15:30時点)
今後の注目点は米国のガソリン価格
米国への影響という観点では、ガソリン価格の動向が注目される(図表5)。自動車大国である米国では、5月下旬から9月上旬にかけてドライブシーズンに入る。この時期にガソリン価格が高止まりすれば、個人消費を圧迫する可能性がある。さらに、トランプ関税による物価上昇リスクが警戒されている中でのガソリン価格の高騰は、米国株式市場で利益確定売りを誘発する要因となりえる。
米国株式市場ではTACO(Trump Always Chickens Out:トランプ大統領はいつもビビッて退く)という造語が広まり、トランプ関税によるリスクが過小評価される傾向が続いている。しかし、こうしたリスクに対する無防備な状況の中で発生した今回の中東情勢の緊迫化は、投資家心理を一気に悲観的な方向へ傾ける可能性がある。しばらくは警戒が必要だろう。
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