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- 米国株急騰の背景に「AI相場2.0」
米国株式市場では、2022年11月30日の生成AI「ChatGPT」公開以降、AI半導体大手の米エヌビディアを中心に大手AI関連企業が上昇相場を牽引してきた。この約3年を「AI相場1.0」と位置づければ、今後はAI関連企業の循環投資が上昇相場を牽引する「AI相場2.0」への移行が始まる可能性がある
米国株式市場は「AI相場1.0」から「AI相場2.0」へ移行
米国株式市場では、2022年11月30日の生成AI「ChatGPT」公開以降、AI半導体大手のエヌビディアを中心に大手AI関連企業が上昇相場を牽引してきた。この約3年を「AI相場1.0」と位置づければ、今後はAI関連企業の循環投資が上昇相場を牽引する「AI相場2.0」への移行が始まりつつあると考えられる(図表1、2)。
エヌビディアの資金力は飛躍的に高まっている。時価総額は5.0兆ドルに達し、年間フリーキャッシュフローは2022年度の81億ドルから2025年度には608億ドルへ約7.5倍に急増した(図表3)。
その結果、現金および現金同等物は2025年5〜7月期末時点で568億ドル(約8.6兆円)に積み上がった。こうした潤沢な資金を背景に、同社は関連企業への大規模な投資・出資を加速している。
その象徴が、今年9月に発表されたエヌビディアによる米オープンAIへの最大1,000億ドルの投資だ。ChatGPTを開発するオープンAIは、この資金を活用し、少なくとも10ギガワット規模のAIデータセンターを構築する計画だ。詳細は未公表だが、オープンAIがエヌビディアのAI半導体を購入し、その都度エヌビディアが段階的に出資する仕組みとみられる。加えて、オープンAIは10月28日に営利事業への組織再編を完了し、米マイクロソフトが同社株式の27%を取得する見通しとなったため、エヌビディアの段階的出資も円滑に進む可能性が高い。
エヌビディアを中心に「循環投資」が加速
また、オープンAIは同じ9月に米オラクルと約3,000億ドル規模のクラウド契約を発表した。オープンAIは7月、米国内で4.5ギガワット規模のデータセンターを共同開発することでオラクルと合意しており、今回の契約はその延長線上にある。これらのデータセンターはエヌビディアのAI半導体で稼働するため、結果として資金は最終的にエヌビディアへ還流する「循環投資」の構図となっている。
さらに、エヌビディアは米半導体大手インテル、フィンランドの通信機器大手ノキア、AIクラウドサービスのスタートアップである米コアウィーブ、英エヌスケール、オランダのネビウスなどにも出資している。いずれもエヌビディアのAI半導体を購入する企業であり(インテルはx86 CPUの開発・供給で関与)、この構図はITバブル期に見られたベンダーファイナンス――顧客に対して自社製品の購入資金を提供する手法――に近いとの指摘も出ている(図表4)。
「音楽が鳴り続けている限り、踊り続けなければならない」
もっとも、信用力の高いエヌビディアが信用力の低い顧客企業に資金を供給する構図は、一見合理的に見えるものの、機能するのは資金循環が滞りなく回っている間に限られる。ひとたびどこかで目詰まりが起これば、将来期待を織り込んだ株価バリュエーションは急速に圧縮されかねない。振り返れば、2007年7月、サブプライム問題への懸念が高まる中、シティグループのチャック・プリンス元CEOは「音楽が鳴り続けている限り、踊り続けなければならない」と語った。もし今が「AI相場1.0」から「AI相場2.0」へ曲目が変わる局面だとすれば、市場は当面踊り続ける可能性がある。
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