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FRBの政策金利予想 来年見通しは波乱含みか? 
田中 純平
2022/07/11

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概要

米国FF金利先物市場では、今年12月会合時点におけるFOMCメンバーの政策金利予想が十分織り込まれている。しかし、来年はFOMCメンバーが利上げ継続を予想する一方、FF金利先物市場では逆に利下げが織り込まれており、両者の見通しに乖離が生じている。今週発表予定の6月米国CPIが市場予想を上回れば、株式市場のボラティリティが高まる可能性がある。



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上方シフトが一服した米国フェデラル・ファンド金利先物のイールドカーブ

6月10日(金)に発表された5月米国消費者物価指数(CPI)の上振れと、6月15日(水)の米国連邦公開市場委員会(FOMC)等を受けて、市場参加者の政策金利予想が反映される米国フェデラル・ファンド(FF)金利先物の年内のイールドカーブ(利回り曲線)は大幅に上方シフトした。しかし、直近2週間の推移を見るとほとんど変化は無く、イールドカーブの上方シフトが一服したことが分かる(図表1)。

7月8日(金)に発表された6月米国非農業部門雇用者数は前月比37.2万人増と、市場予想の同26.5万人増を大幅に上回った。また、労働参加率が62.2%と市場予想の62.4%を下回る中、時間当たり賃金は前年同月比+5.1%と市場予想の同+5.0%を上回った。これを受けて、7月会合における0.75%の利上げがほぼ織り込まれた格好だが、5月末時点からのFF金利先物におけるイールドカーブの上方シフトと比較すれば、直近2週間の変化は微々たるものだ。

来年の政策金利予想は、FOMCメンバーとFF金利先物市場との間で大きな乖離が発生

しかし、来年のFF金利先物のイールドカーブを見ると、直近2週間では逆に下方シフトが目立っている(図表2)。急激な金融引き締め等によって来年は景気が落ち込み、FRBが利下げを加速させることが織り込まれたと解釈できるが、やや行き過ぎのようにも見える。 

今年12月会合時点のFOMCメンバーの政策金利予想は中央値で3.375%であり、FF金利先物市場から算出された数値(3.473%)とほとんど乖離が無いことが分かる。だが、来年12月会合時点のFOMCメンバーの政策金利予想は中央値で3.750%に対し、FF金利先物市場から算出された数値は3.044%と明らかに乖離が生じている(図表3)。もちろん、FF金利先物市場は満期が長くなるにつれて出来高が細るため、必ずしも市場参加者のコンセンサスが十分反映されているわけではないが、イールドカーブの形状に特段の違和感は無い。

今週はいよいよ米国6月CPIが13日(水)に発表される。前回に続き今回も市場予想を上回ることになれば、株式市場のボラティリティ(変動率)が再び高まることが予想される。特に足元では来年の利下げ期待が株式市場の支援材料となっていただけに、ネガティブ・サプライズ(利下げ期待の後退)が発生しやすい状況にある点には注意が必要だ。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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