Article Title
金価格は利上げサイクル終了前後から上昇する傾向
塚本 卓治
2023/10/27

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

2000年以降、金価格は米政策金利の利上げサイクル終了前後の時期から上昇する傾向にあった。また、その動きとは逆にそのサイクル終了前後の時期に世界株式は本格調整期を迎えた。その利上げサイクル終了の時期は金融政策当局者の金利見通しや市場予想から近づいてきていると考える。



Article Body Text

2000年以降、金価格は米利上げサイクルの終了前後から上昇する傾向に

2000年以降、金価格は米政策金利の利上げサイクル終了前後の時期から上昇する傾向にあった(図表1参照) 。また、リーマンショック以降では、金価格の上昇は、政策金利の動向を反映するとされる米2年国債利回りがボトムアウトするまで続く傾向があった。

一方で世界株式は利上げサイクル終了前後の時期に本格調整期を迎えるケースが見受けられた(図表1の期間①~③の前後にある本格調整期参照)。

世界株式の本格調整期は金価格にとり質への逃避による資金流入で金価格上昇要因となる上、政策金利の引き下げは、金利を生まない資産である金にとり、相対的な魅力が増加することでプラス要因にもなる。

金融政策当局者の経済見通しは、23年末から24年にかけての利上げサイクルの終了を示唆

米連邦準備制度理事会(FRB)は2023年9月19-20日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で市場予想通り、政策金利にあたるフェデラル・ファンド(FF)金利を据え置いた。9月のFOMC参加者の経済見通し(中央値)を見ると、23年末のFF金利見通しは5.6%と、あと1回の利上げを示唆しており6月から変化はなかった。一方で、24年、25年末のFF金利については、それぞれ5.1%、3.9%と政策金利の引き下げが実施される見通しとなっている。つまり金融政策当局者の見通しの中央値は、23年末から24年にかけてどこかで利上げサイクルが終了することを示唆している。

市場参加者は、24年1月の政策金利予想が最高水準に

FF金利先物が織り込む市場参加者の予想は(23年10月19日時点)、24年1月FOMC時点の政策金利予想が最高水準となっている(図表3参照)。ただし、その時点においても予想されている利上げ回数は0.4回(0.25%を1回と想定)相当となっている。今後の経済成長率やインフレ関連の経済統計によりこの見通しは変化する可能性は十分にあるものの、すでに利上げサイクルの最終局面にあると考えることはできよう。

もしすでに利上げサイクル終了前後の時期にあると考えると、過去、この時期から金価格が上昇する傾向にあったこと、またこの期間の前後どこかで世界株式が本格調整期を迎えたことを考えると、株式と異なるパフォーマンスを示してきた金は、分散投資の一助となる可能性が高いと考えられる。

 


塚本 卓治
ピクテ・ジャパン株式会社
エグゼクティブ・ディレクター 運用本部 投資戦略部長

日系証券会社にて債券およびデリバティブ業務に従事した後、外資系運用会社および日系ファンド・リサーチ会社にて投資信託のマーケティングを担う。通算20年以上にわたり運用業界で世界の投資環境を解説。ピクテではプロダクト・マーケティング部長等を経て、現職。経験豊富なストラテジストが揃う投資戦略部を統括する傍ら、自らも全国の金融機関や投資家を対象に講演を行う。マサチューセッツ工科大学(経営学修士)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら

MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。



関連記事


原油高と物価高が引き起こす米国株の地殻変動

超長期の上値抵抗線を突き抜けたS&P500指数

最高値更新のS&P500均等加重指数が示唆するもの

いまはバブルなのか?米IPO市場からヒントを探る

米株高の「資産効果」で個人消費は上振れか?

米国株の上値余地は?利益成長率から考察