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- 米商業用不動産ローン問題 米地銀株の受難
S&P500指数が最高値を更新する中、S&P地銀株指数は昨年3月に発生した米シリコンバレーバンク破綻前の株価水準を回復できずにいる。米中小商業銀行の預金残高は回復傾向にあるが、米商業用不動産ローンの不良債権化リスクが米地銀株の上値をおさえる。
米地銀株のパフォーマンスは低迷
S&P500指数が最高値を更新する中、S&P地銀株指数は昨年3月に発生した米シリコンバレーバンク破綻前の株価水準を回復できずにいる(図表1)。
シリコンバレーバンク前CEO(最高経営責任者)のグレゴリー・ベッカー氏は昨年3月16日の米上院銀行委員会等が開催した公聴会で「毎秒約100万ドルの預金が引き出された」と述べ、預金総額の80%に相当する約1420億ドルが2日間で流出したと証言した。短期間で起こった大規模な取り付け騒ぎが、前例の無い経営破綻の引き金になった。
この状況はマクロ統計にも表れている。米中小商業銀行全体の預金残高は、2023年3月8日時点の5.37兆ドルから同年4月26日時点の5.13兆ドルへ、約2,480億ドルも減少した(図表2)。だが、その後はどうだろうか?
米中小商業銀行全体の預金残高は、FRB(米連邦準備制度理事会)が導入した緊急融資制度(BTFP、バンク・ターム・ファンディング・プログラム)による流動性供給等が奏功し、2024年5月8日時点の預金残残高は5.36兆ドルまで回復している(BTFPは今年3月11日に終了)。経営破綻の引き金になった預金流出が収束しているにもかかわらず、なぜ米地銀株は低迷しているのだろうか?
米商業用不動産ローンの一部は不良債権化するおそれ
IMF(国際通貨基金)は先月16日に公表したGFSR(国際金融安定性報告書)において、米商業用不動産ローンの不良債権額が今後も増加するおそれがあると警鐘を鳴らしている。IMFは、リーマンショックから9四半期が経過した時点でようやく商業用不動産ローンの不良債権額がピークをつけた過去の経験則を、その根拠としている。
米国ではアフターコロナにおけるリモート環境の定着(空室率上昇)や借入金利の上昇等によって特にオフィス・ビルの取引単価が低下傾向にあり、市場では不動産価値が借入元本を大幅に下回るリスクが警戒されている(図表3)。
米国では総貸出に占める商業用不動産ローンの割合が特に中小商業銀行で高くなっており、その比率は今年5月8日時点で44.6%と、大手商業銀行の12.9%と比較して約3.4倍にもなる。実際、株式市場でも総貸出に占める商業用不動産ローンの比率が高い米地銀株ほど大幅安になる傾向が見て取れる(図表4)(注:ニューヨーク・コミュニティ・バンコープの場合は主にNY市の集合住宅向けローンの不良債権化が背景)。
今年償還を迎える米商業用不動産ローンのうち、全体の43%を銀行が貸し出している(図表5)。
担保価値低下で与信枠が縮小しており、借り換えのハードルは一段と高まっている。借り換え不能になれば、そのローンは貸し手である銀行の不良債権となるため、米地銀の経営はますます苦しくなる。米商業用不動産ローン問題は、米国株式市場の潜在的なリスク要因として燻り続けている。
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