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健康へのホリスティックなアプローチ

多元的な医療

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医療は医療従事者の仕事だと思われがちですが、効果的な医療は社会全体の問題だと考えます。



がんや遺伝性疾患の、新しく画期的な治療法が新聞の見出しを飾ります。慢性疾患や、予防可能な病気の治療コストが、先進国と新興国の双方で急増する中、医療業界は人の健康に及ぶ様々な影響を考慮した、社会政策や企業活動を含む、新しいアプローチを必要としています。
 

清潔な水、より良い衛生施設、質の高い教育、安定した雇用等が、どんな最先端の医療技術よりも死亡率を低下させ、寿命を延ばすことは、繰り返して言う価値があると考えます。世界全体で約120万人が、清潔な水にアクセス出来ないだけで早すぎる死を迎えています1

このような社会的要因は、重要なインフラ基盤を欠く新興国だけの問題ではありません。

最も豊かな国においても、わずか数キロメートルしか離れていない地域に住んでいる人々の間で、社会、健康、教育等の基本的なサービスに、理論的には同等にアクセス出来ているはずにもかかわらず、平均寿命が著しく異なることがあるからです。

例えば、英国スコットランドのグラスゴーでは、二つの隣接する地域に住む市民の寿命に17.6年もの差があり、グラスゴーの最貧困層10%と最富裕層10%の格差を反映していると考えられています2

このような問題に、即効性のある解決策はありません。必要とされているのは、様々な健康の決定要因を認識した、医療に対する全体的なアプローチであり、予防が最も重要です。



社会的現象としての健康

とはいえ、スマート・カップリングは一夜のうちに実現できるわけではありません。

まず第一に、電力の需給管理態勢を改善するために、スマート・メーターを使うことです。ドイツは、スマート・メーターの導入が著しく遅れており、デンマークやスウェーデンのほぼ100%、フランスの約80%に対して、一桁台前半に留まります4が、政府は、今後数年内の導入の義務化を計画しています。また、スマート・メーター以外のインフラ整備が、家庭の中でも外でも必要になります。

新しいタイプの企業が、エネルギー・セクターに最先端のデジタル技術を提供しつつあり、移行を容易にすることが期待されます。

一般市民を説得することも難しい課題です。アドバイザリー・ボードは、暖房をつける時間やEVを充電する時間を指示されることに対する消費者の強い抵抗を予想していますが、一部は、価格誘因(料金インセンティブ)によって、克服できると思われます。また、自宅に太陽光パネルを設置する人が増えるにつれ、発電や電力使用の管理について、より積極的な姿勢に転じる市民が増え、余剰電力をEVや暖房器に使うようになるかもしれません。そうすれば、余剰電力を送電業者に売却し続けて、送電中に電力の一部が失われるという状況が回避されます。

エネルギー業界の複雑な特性と強力なロビー活動は、ドイツ国内外の行政や立法にも課題をもたらします。また、機動的な電力価格設定を可能にするための調整も必要です。

各国政府がグリーン・トランジションに取り組み、一般市民が目標達成に向けた政府の責任を問うことが増えるにつれて、移行を阻む障害は克服不能なものではなくなっていくように思われます。

スマート・カップリングが成功すれば、再生可能電力の利用の最大化と余剰発電の削減が可能となり、送電網の安定化が実現するかもしれません。再生可能エネルギーの安定的な供給が可能となれば、太陽光や風力の不足時の需給格差を補うために、化石燃料電力を「保険」電力として確保しておく必要がなくなります。そうすれば、いずれはコスト削減につながるはずであり、その結果、「Dunkeflaute(暗い凪:曇り・無風の天気が続き、太陽光や風力発電のエネルギー生成が落ちたまま継続する状態))」は、言語史のみに残る言葉となるかもしれません。


費用の公平な分担

医療に対する多元的なアプローチを実践するには、商業活動が健康に及ぼす、プラスまたはマイナスの影響を理解することが必要です。

例えば、タバコ、アルコール、超加工食品、化石燃料等、健康に有害な製品を製造・販売する企業は、世界全体で、一年間に予防可能な死亡のうちの、少なくとも3分の1を引き起こしていると考えられています。そうすることで、医療費の支払い、原油流出事故や商業廃棄物の処理費用を、政府や消費者に肩代わりさせているのです3。このようないわゆる「外部性」が意味するのは、健康に害を及ぼす製品の多くが、投入コストや他者に負担させた社会的・経済的コストなどの真のコストに比べて人為的に安い価格で販売され、その結果、消費や企業利益を膨らませているということです。医学雑誌「ランセット」の最新号によれば、「このような状況が意味しているのは、商業活動による危害や被害が大きければ大きいほど、企業の利益や富や権力が増大する一方で、被害の処理コストを負担せざるを得ない個人や地域社会や政府の資源や力が減じ、企業の説明責任が問いにくくなっている」ことです。

あらゆる種類の企業が、顧客だけでなく、株主や規制当局に対しても、外部性に対する説明責任を問われることが増えていると考えるのは妥当だと思われます。


予防に対する新しいアプローチ

もっとも、民間部門がウェルビーイングに計り知れないほどの貢献をしてきたことも事実です。たくましい商魂や投資のお陰で、消費者は、栄養価の高い食品、質の高いヘルスケア、医薬品、住居等、健康的な生活に必要で、種類が増え続ける、様々なモノやサービスへのアクセスが得られているからです。

民間セクターの関与が無かったとしたら、多くの深刻な疾病が、恐らく、治療されないままだったろうと思われます。

例えば肥満です。肥満症は、糖尿病や心臓病やがんと関連があり、世界的に深刻な問題となっています。各国政府や保健当局は、様々な対策を講じており、身体活動を奨励するための教育や都市計画はその一例です。また、健康によい食品の生産や普及を促すよう、農業および工業セクターには様々なインセンティブを与えてきたものの、太り過ぎの傾向の是正には殆ど効果があがっていません。

こうした状況下、保健当局は次世代型減量薬に強い関心を示しています。次世代型減量薬は、食欲を抑制することで、食事制限等の従来型のアプローチよりも遥かに効果的な減量を可能とし、減量後の体重の維持にも有効であることが示されています。患者が服用をやめると食欲も体重も戻ってしまうことから、政策立案者にとっての問題は、減量が続いている限りは服用が必要な薬剤に、患者はどの程度のお金を支払う意思があるのかということです。また、減量薬が心血管系疾患にどの程度の効果をもたらすかということも、薬代を支払っている人にとっての重要な検討事項ですが、年内には、分析結果が得られそうです。不快な副作用も問題ですが、薬の効果が高いことから、英国の国民保健サービス(NHS)も強い関心を示しています。

予防医療のための多元的アプローチにおいて、課題の一つは、手助けしてくれる医療従事者を見つけることです。多くの病院にとっての障壁は、ハイテク機器が入手出来ないことではなく、機器を操作する人を確保することです。病院の経営者は、需要に見合うだけの医療・看護スタッフを見つけるのに苦戦しています。在宅医療の提供は更に困難で、病院側にますます大きな負担を強いる恐れがあります。自宅療養中の患者を監視、観察出来ないことで、医療上の緊急事態を引き起こす場合が多いためです。こうした状況を回避する方法の一つが、電話会議システムを使った遠隔監視(モニタリング)システムで、これを使えば、午前中に2~3人の患者を彼らの自宅で診るのがやっとだった看護師が、10人以上の患者を診ることさえ可能です。高齢の患者は複数の薬を服用していることが多いため、確実に、正しい薬を正しい順番で飲むことが課題です。ビデオを使った遠隔モニタリング、テレドック(teledoc)やeナースは、いずれも大いに役立っています。

予防が強力であることは既に証明されています。世界的に見ても、予防は、延命と生活の質の改善に、医療介入よりも効果的である一方で、その実践は極めて複雑です。従って、最良の結果を得るには、社会の様々な構成要素が協調体制を確立し、協働することが必須です。テクノロジーの助けが必要になる場合もあります。


※本稿は、ピクテ・ヘルスケア株式運用のアドバイザリー・ボードによる議論をもとに書かれたものです。


[1] Global Burden of Disease. As at 2017. Source: Our World in Data https://ourworldindata.org/water-access
[2] https://www.bbc.co.uk/news/uk-scotland-glasgow-west-58118599
[3] The Lancet series on Commercial Déterminants of Health, 23.05.2023



投資家のためのインサイト

  • 世界の医療や健康の専門家は、唯一の解決法は無いことを認識した上で、健康への被害を減らすと同時に恩恵を増やし、規制措置の必要性を判断するために、複雑で多様な商業活動を解明したいと願っています。こうしたアプローチは、投資家にとっては、公的部門と民間部門の健康に対する見解を、どのように統合したらよいか再考するためのひな型として、役立つ可能性があると考えます。

  • 地球温暖化は、予防の必要性を更に増すものです。気温が32℃以上の日は、わずか1日で死亡率を1%以上上昇させます。熱波も致命的で、今後、日常的なものとなる公算が大きいように思われます。フランスの保健当局の試算によれば、ヨーロッパを熱波が襲った2003年には、約15,000人のフランス人が熱中症で死亡し、スペインとイタリアでも、暑さが原因の死者が多数確認されました。こうした状況での最善策は予防です。長期的には、温室効果ガス排出量の削減を通じた、気候変動の抑制および緩和の実現のためのグローバルな取り組みを強化すること、一方、短期的には、熱波に襲われた際の弱者の監視体制の強化や暑さ対策の提供など、地域的な対策を講じることが必要であり、寒波の到来に際しても、同様の対策が求められます。

  • 肥満を原因とする2019年の死者数は、世界全体で500万人を上回りました。肥満率は劇的に上昇しています。肥満と分類された人の、人口全体に占める比率は、1975年には、米国人が11.7%、ドイツ人が9.9%、中国人が0.4%だったのに対し、2016年には、それぞれ、37.3%、25.7%、6.6%と、いずれも上昇しています。

執筆者
ピクテ・アセット・マネジメント アドバイザリー・ボード

著名な科学者やビジネスリーダー、学識経験者などから構成されるアドバイザリー・グループ。ピクテの各テーマ株式ファンドの運用担当者に対し、経済・科学・テクノロジー分野におけるトレンドをより深く理解できるようサポートを行う。詳細はこちら



本ページは2023年10月にピクテ・アセット・マネジメントが作成した記事をピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集したものです。



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