- Article Title
- 環境変化確認編④~国債利回りの推移とイールドカーブの変化~
国債利回りは長らく低下が続いてきましたが、2022年以降は上昇に転じており、大きく環境が変化しているため、過去からの推移を改めて確認することが重要です。
■主要国国債利回りの推移
今回は主要国国債の利回りの推移とイールドカーブの変化について確認いたします。1990年代から約30年近く、地域を問わず国債の利回りは低下してきました(図表1)。しかし、2020年に発生した新型コロナウィルスの世界的な蔓延に伴うサプライチェーンの寸断や2022年のロシアによるウクライナ侵攻等を受け発生したインフレの進行を抑えるため、世界各国の中央銀行が急速に政策金利を引き上げたことで国債の利回りも急上昇しました。2024年に入り、インフレ収束の兆しが見えはじめると、主要国の中央銀行は政策金利の引き下げに転換し、国債の利回りも横ばい、あるいは緩やかに下がっていますが、それでもここ10年ほどの中では高い水準にあります。
国債をはじめ、債券への投資を考える際、利回りが高い時点から保有を開始すると、長期投資により大きなインカムゲインを得ることができます。また、将来的に利回りが低下した場合には債券価格の上昇によるキャピタルゲインも期待ができるため、債券への投資妙味は以前に比べ高まっているといえます。加えて、分散投資を考えるうえでも債券が果たす役割が大きくなっているとも考えられます。
図表1:日本、米国、ドイツ、英国の10年国債利回りの推移(月次、1989年1月~2025年3月)
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
■日本国債のイールドカーブの変化
日本国債のイールドカーブを2020年12月末時点と2025年3月末時点を比較すると大きな変化があったことがわかります(図表2)。2020年12月末時点で、日本銀行による主な金融政策はマイナス金利、イールドカーブコントロール(10年国債の利回りをゼロ付近に抑える)でした。これにより10年未満の国債はほぼマイナスの利回りを示し、20年国債でも0.5%を下回る非常に低い利回りとなりました。しかしながら、その後、イールドカーブ・コントロールの運用が徐々に柔軟化され、2024年にマイナス金利の解除とイールドカーブ・コントロールの廃止が行われると、米国等の金利上昇の影響もあり、国債の利回りはどの年限でも上昇してきました。また、日本銀行が金融緩和の縮小を徐々に進める中、金融政策正常化の期待もあり、長期金利は上昇し、短期金利との差が拡大しました。
図表2:日本国債のイールドカーブ比較
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
■米国国債のイールドカーブの変化
米国国債のイールドカーブについても同様に比較をすると、2022年以降に実施された政策金利の引き上げにより、日本国債以上に米国国債の利回りは上昇しました(図表3)。ただし、米国の場合には短期金利が長期金利を上回る逆イールドの状態が発生し、2年国債の利回りが10年国債の利回りを上回るという状況が続いてきました。これは短期金利は政策金利の引き上げで上昇する一方、景気減速懸念等、見通しの不透明感から長期国債が買われ利回りが抑えられているということが要因として考えられます。2025年3月時点、2年国債と10年国債の比較でいえば逆イールド状態は解消されているものの、利回りの差は小さく、日本のイールドカーブに比べ、フラットな状態にあります。
図表3:米国国債のイールドカーブ比較
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。
手数料およびリスクについてはこちら
関連記事
日付 | タイトル | タグ |
---|---|---|
日付
2025/03/27
|
タイトル 環境変化確認編① ~運用の必要性の高まり~ | タグ |
日付
2025/04/10
|
タイトル 環境変化確認編② ~物価と政策金利の変遷~ | タグ |
日付
2025/04/24
|
タイトル 環境変化確認編③ ~日本のCPIについて~ | タグ |