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- 2023年4月のバイオ医薬品市場
■ バイオ医薬品関連企業の株価動向
4月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は、上昇しました。
2023年4月の株式市場は上昇しました。バイオ医薬品企業の決算発表が本格化する中、大型銘柄は企業ファンダメンタルズの改善と新薬候補(パイプライン)拡充の遅れが改めて確認されました。売り上げの鈍化や利益率悪化への対応が急務となる中、M&A(合併・買収)案件が増え始め、中小のバイオ医薬品企業の経営陣は売却意欲を強めています。案件を巡る競争の厳しさが際立って、買収価格のプレミアム(直近の株価に対する提示価格の上乗せ幅)は高水準となっていますが、大手医薬品企業によるM&Aの動きは当面、継続するように思われます。
個別銘柄では、アイベリック・バイオ(米国)の株価が、地図状萎縮(GA)治療薬候補の良好な治験データが発表されたことが好感され上昇しました。なお同社は5月1日にアステラス製薬(日本)による買収(買収総額:約59米億ドル)が発表されました。またベラス・ヘルス(カナダ)は、グラクソ・スミスクライン(英国)に約20億米ドルで買収されることが発表され、株価が大きく上昇しました。一方、サレプタ・セラピューティクス(米国)は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)遺伝子治療薬を巡る米食品医薬品局(FDA)の5月の諮問委員会を控えて、情報が交錯し、株価は値動きの荒い展開となりました。モデルナ(米国)は、インフルエンザ・ワクチンの治験結果が期待外れに終わったことに加え、新型コロナウイルス・ワクチンの売り上げ鈍化などを受けて株価が下落しました。
■ 今後のバイオ医薬品市場見通し
足元、バイオ医薬品株式市場では、良い兆候がみられています。M&A(合併・買収)の動きは大型案件が相次いで見られており、この傾向は継続するものと期待されます。新薬の開発では、2023年は遺伝子治療の承認が期待される他、免疫学系、循環器系、中枢神経系が注目されます。また、がん領域では製薬会社は細胞療法に強い関心を寄せ続けています。米国のインフレ抑制法案が議会を通過したことについては、財務上の重大な影響はないものと思われますが、M&Aのターゲットとされる企業が変わる可能性や、がん領域および低分子化合物におけるイノベーションへのマイナスの影響、治療薬について新たな適応拡大を追求するかどうかに関連した戦略の変更が予想されます。
長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。
■バイオ医薬品関連企業の売上高は新薬承認後の業績寄与などにより相対的に高い伸びに
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+3.8%の相対的に高い売上高の伸びが予想されています。(図表7参照)
■売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)
■バリュエーション
バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降はFDAの承認申請に対する予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSRも低下しました。(図表9参照)
足元は、良好な治験結果の発表や、再びバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目され、PSRは上昇に転じつつあります。
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