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- 2024年10月のバイオ医薬品市場
■バイオ医薬品関連企業の株価動向
10月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。
世界の株式市場は、月初、中東情勢の緊迫化への懸念などから下落しましたが、その後は9月の米雇用統計が市場予想を上回ったことなどを受けて米国の景気減速懸念が後退したことや、AI(人工知能)関連のハイテク銘柄が買われたことなどを受けて、上昇基調となりました。しかし下旬には、11月に米国大統領選挙を控える中、米国の景気の底堅さなどを背景に米長期金利の上昇が続いたことや、ユーロ圏の景況感の悪化などが株式市場にとって重荷となり、低調な動きとなりました。このような中、バイオ医薬品株式については米国の長期金利の影響を受けて下落しましたが、下落率はヘルスケア業界の中では相対的に小幅となりました。またバイオ医薬品株式の中では、中小型株が大型株を上回るパフォーマンスとなりました。
株価が上昇した銘柄としては、イントラセルラー・セラピーズ(米国)、バイキング・セラピューティクス(米国)、ギリアド・サイエンシズ(米国)などが挙げられます。イントラセルラー・セラピーズは、四半期決算で統合失調症と双極性うつ病の治療薬カプリタの売上増と2024年通期見通しの引き上げを発表したことなどが株価の上昇要因となりました。バイキング・セラピューティクスは、四半期決算の発表において皮下および経口投与の肥満治療薬の治験の進展と、今後の治験実施に十分な資金を有していることを示したことが好感され株価が上昇しました。ギリアド・サイエンシズは、パイプライン(新薬候補)強化などの面で課題はあるものの、HIV関連事業の強さへの注目が株価の上昇に寄与しました。
株価が下落した銘柄としては、リジェネロン・ファーマシューティカルズ(米国)、セルデックス・セラピューティクス(米国)などが挙げられます。リジェネロン・ファーマシューティカルズは、主力の加齢黄斑変性治療薬アイリーアのバイオシミラー(バイオ後続品)を巡る訴訟で同社にとって不本意な判断が続いていることなどが影響し、株価が下落基調で推移しています。セルデックス・セラピューティクスは、受容体チロシンキナーゼKIT阻害抗体バルゾルボリマブの治験において優れた有効性を示しているものの、いくつかの軽微な有害事象が同抗体に対する評価を難しいものにしており、株価が低迷しています。
■今後のバイオ医薬品市場見通し
足元、バイオ医薬品株式市場では、良い兆候が見られています。2023年に大型案件が多く見られたM&A(合併・買収)の動きは、今後も継続するものとみられ、案件の増加が期待されます。特にフェーズ2で良好な治験結果が示された治療薬候補を有するなど買収後のリスクの低い銘柄が注目されます。新薬の開発では、遺伝子治療や免疫学系、循環器系、中枢神経系、がん領域などが注目されます。また資金調達については、新薬の開発が順調な企業はスムーズに進められています。一方、IPOは依然として低調な状況が続いています。引き続き米国大統領選挙や米国の金融政策、マクロ経済の動向には注視が必要と考えます。
長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。さらにAI(人工知能)の進歩はバイオ医薬品業界のイノベーションに大きな役割を果たすことが期待されます。
■バイオ医薬品関連企業の売上高は新薬承認後の業績寄与などにより相対的に高い伸びに
バイオ医薬品関連企業の売上高は、堅調に成長してきました。(図表6参照)バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+10.4%の相対的に高い売上高の伸びが予想されています。(図表7参照)
■売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)
■バリュエーション
バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降は新薬承認申請に対するFDAの予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSR も低下しました。( 図表9 参照)
足元は、良好な治験結果の発表や、再びバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目され、PSRは上昇に転じつつあります。
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