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- 環境変化確認編⑧~為替ヘッジコスト~
外貨建て資産に投資をする場合、為替変動リスクに留意する必要があるため、許容できるリスク水準に応じて、為替変動を抑制する為替ヘッジを活用することも重要です。
■為替ヘッジコストの推移
今回は為替ヘッジコストについてご説明いたします。2022年3月から米国のFRB(連邦準備制度理事会)は政策金利の引き上げを開始し、利上げ開始前0%~0.25%だった金利は約1年3ヵ月で5.25%~5.5%まで引き上げられました。これに伴い、米ドル高が進行し、急激な円安も起きました。1米ドル=110円台だった米ドル/円は2024年6月には1米ドル=160円台を記録しました。しかしながら、2024年9月からFRBが利下げを開始すると円高が進行し、2025年6月末時点で1米ドル=140円台前半で推移しています。このように日米の金融政策が転換期を迎える局面においては、外貨建て資産に投資を行う際の為替変動リスクに特に留意する必要があります。その際、為替変動リスクを抑制しつつ、外貨建て資産での投資機会を捉えるために用いるのが為替ヘッジです。為替ヘッジはコストを支払う(プレミアムを受け取る)ことによってその効果を享受することができますが、その主たる決定要素は通貨間の短期金利の差になります。たとえば、米ドル/円の変動リスクをヘッジする場合には、円の短期金利が米ドルの短期金利よりも低い場合には為替ヘッジ「コスト」が生じます。一方、円の短期金利が米ドルの短期金利よりも高い場合には為替ヘッジ「プレミアム」が生じます。具体的な為替ヘッジコストの計算例で確認しましょう(図表1)。現在、1米ドル=100円とすると、10,000円は100米ドルとなります。ここにそれぞれの金利(円:0.1%、米ドル:5.0%)がつくと1年後の元本(当初元本+利息)は10,010円、105米ドルとなり、10,010=105米ドルになるような交換レートは1米ドル=95.33円であり円高になっています。そしてこの円高になっている4.67円分が為替ヘッジ「コスト」として発生する仕組みとなります。
図表1:為替ヘッジコスト決定のメカニズム
ではご参考までに日米の為替ヘッジコストの推移について確認しましょう(図表2)。ここでは短期金利に大きく影響を及ぼす政策金利の差を併せてお示ししています。為替ヘッジコストは金利の差以外にも通貨の需給等による影響が存在しますが、主たる要因としては先ほどご説明したように短期金利(政策金利)の差です。概ね、為替ヘッジコストは政策金利の差と同様の推移を示していることがわかります。2025年6月末時点は米ドル/円の為替ヘッジコストは約4%前後で推移しており、決して低い水準ではありません。ただし、冒頭でご説明したように為替変動リスクに留意したポートフォリオ構築は非常に重要なポイントであり、リスクのコントロールを行いつつ外貨建て資産から得られるリターンを享受するためにも為替ヘッジの活用を検討する必要もあるといえます。
図表2:日米政策金利の差と米ドル/円の為替ヘッジコストの推移
(月次、期間:2008年10月末~2025年6月末)
※為替ヘッジコストは、スポットレートおよび1ヵ月フォワードレートからピクテ・ジャパンが計算し、年率換算。
ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
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