ピクテ・ゴールド|不確実性の時代における資産保全のための金投資
・不確実性の高い環境が続くと想定され、分散投資における金投資の重要性が増す
近年、金価格(米ドルベース)は上昇基調が続いています。地政学リスクの高まりに伴う株式などのリスク資産の不安定化や、保有通貨の分散と米ドルへの依存度の低下を目的とした「脱米ドル」の動きに加え、主要先進国の公的債務の拡大に伴う通貨価値の下落など、資産運用を取り巻く環境には構造的な変化が生じています。このような変化がもたらす世界経済の不確実性の高まりに対するヘッジ手段として、金への旺盛な需要は今後も継続し、中長期的な金価格の上昇を下支えすると考えられます。
脱米ドル:中央銀行による外貨準備の分散は金価格を下支えする要因
近年、金価格を下支えする要因として、中央銀行が外貨準備として金の保有量を増加させる動きが注目されています。中央銀行の外貨準備は為替介入に使用される資金であるほか、他国に対して外貨建て債務の返済が困難になった場合等に使用されるなど、一般的に外貨準備の保有は国や通貨に対する信頼性や、金融システムの安定化などに重要な役割を果たすと考えられます。
1991年のソ連崩壊などを機としてグローバル化が進展した2000年代半ばまでの期間(下図の②)には、米ドルが基軸通貨としての地位を高めたことから金に対する需要が低迷し、世界の中央銀行による金購入量はマイナス(売り越し)となりました。しかし、2008年のリーマン・ショックを機とする大規模な金融緩和やそれに伴う通貨供給量の大幅な増加により、通貨価値の希薄化への懸念が強まったことから、世界の中央銀行は金を購入する動きに転じました(同③)。さらに、2022年以降の期間(同④)では、ウクライナ侵攻に対する経済制裁として欧米諸国がロシアの外貨準備を凍結したことを受けて、米ドル依存への警戒感から金を買い増すことで外貨準備を戦略的に多様化させる「脱米ドル」が加速しています。
中央銀行が外貨準備として金を保有する主な理由を見ると、世界経済や金融市場の先行きに対する警戒感や、ポートフォリオのリスク抑制を図る必要性の高まりが意識されていることが示唆されています。
通貨価値の下落:希少性の高い実物資産である金への需要を高める要因
米ドルなどの通貨は、政府による財政出動や中央銀行による金融緩和などを通じて長期的に供給量が増加してきましたが、これに伴う物価の上昇などにより、その価値が下落してきました。近年では、コロナ禍を機とする主要先進国での大規模な財政出動などにより、通貨供給量が大幅に増加しました。また、米国などでは政治的な圧力を背景に中央銀行の独立性が損なわれるとの見方も強まっており、過度な金融緩和やインフレの再燃によって通貨価値が一段と下落することが懸念されます。さらに、主要先進国では公的債務が高水準にある中で財政拡張への圧力が強まっており、通貨に対する信認の低下に繋がる可能性があります。このように通貨価値の下落リスクが高まる中、希少性の高い実物資産である金に対しては、資産価値保全の手段としての需要が高まるものと考えられます。
金ETFなどを経由した金購入量はパンデミック以来の水準に
「脱米ドル」の動きや「通貨価値の下落」など、不確実性の高まりに対するヘッジ手段としての金需要の増加は、金価格と連動する金上場投資信託(金ETF)などの金融商品を経由した金購入量の推移からも見て取れます。これらの金融商品の多くは、金価格の連動のために現物の金を保有し、投資家からの資金の流出入に応じて現物の金を売買します。金について中長期的な保有を前提とする傾向のある中央銀行とは異なり、投資家からの需要は市場環境の変化に応じて変動しやすいと考えられますが、近年では、英国の欧州連合(EU)離脱等をめぐり政治的な不安が高まった2016年や、世界的なパンデミックが発生した2020年などに金購入量の増加が顕著となりました。2025年にはパンデミック以来の水準となり、不確実性に対する投資家の不安が反映されているものと考えられます。
高債務・インフレ時代の資産保全
景気後退期や金融市場が不安定になる局面では、 金と債券はともに安全資産として捉えられてきました。しかし、金と債券は異なる特性を持ち、市場環境によって値動きが異なる傾向があります。
一般的な債券は「将来、あらかじめ決まった金額を受け取る」資産であることから、インフレ環境下ではその金額が実質的に目減りすることになります。インフレが落ち着きを示し、金利が低下してきた環境においては、債券が資産保全のための手段となってきましたが、足元では金利低下の時代は終焉を迎え、金利が上昇傾向にあります。
一方で、金は希少性の高い実物資産としてそのもの自体に価値を持つことから、インフレに強いとみなされます。また、金には債券のように発行する国や企業などの破綻で価値がゼロになるといった発行体の信用リスクがありません。そのため、世界の分断などに伴うインフレ圧力や、債務の膨張に伴う主要先進国の信用力の低下などによって通貨価値の下落リスクが高まっている足元の環境においては、資産の価値を保全する手段として金投資の重要性が高まっているといえます。
金の分散投資効果
金は債券や株式などの主要資産とは異なる値動きをする傾向にあることから、分散効果が期待される資産です。主要資産に対する金の比率を10%として組合わせて月次でリバランスを行ったシミュレーションを見ると、多くの場合においてリスクを低減させる効果が確認されました。
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