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新興国社債市場の振り返りと見通し(2024年3月)
2024/04/15

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概要

2024年3月の新興国社債市場の振り返りと今後の展望について、ピクテの新興国債券投資チームがまとめました。



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市場概況

2024年3月は複数の主要株価指数が史上最高値を更新し、株式市場にとっては好調な四半期(2024年1~3月期)となりました。一方、国債市場は苦戦を強いられました。米国では消費者物価指数(CPI)が1月、2月分共に前月比+0.4%と根強いインフレを示唆し、国内経済の底堅さが確認されたことから、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げの回数が従来予想よりも減るとの見方が市場に織り込まれました。3月末時点の市場に織り込まれた利下げの回数は、7月末までに1回、年末までに2.5回となっています。

一方、新興国では利下げ局面が続いており、ブラジルが政策金利(Selic rate)を6会合連続で50ベーシス・ポイント(0.5%)引き下げた他、メキシコは2021年以降、初めての利下げ(0.25%)に踏み切りました。

米国ではGDP(国内総生産)成長率とCPIが共に想定外の強い数字となったことから、新興国債券のスプレッドは縮小したものの、5年物国債の利回りは(経済指標に対する短期債の反応が限定的だったことから)ほとんど変わりませんでした。JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数の月間リターンは+1%、スプレッドは14ベーシスポイント(0.14%)の縮小となりました。

また、ハイイールド社債と投資適格社債の月間リターンは、前者が+1.2%、後者が+0.9%でした。

新興国社債の3月の新規発行額は228億米ドルと前月から減少し、年初来では1,100億米ドルとなりました。地域別では、アジアが103億米ドルと全体のほぼ半分を占め、欧州が52億米ドル、中東およびアフリカ(ME&A)が48億米ドル、中南米(ラテンアメリカ)が25億米ドルとなりました。今年の(償還分を除く)純発行額は、僅か300億米ドルに留まっています。 

*データ出所:JPモルガン


市場展望

2024年年初時点の新興国社債のスプレッドは、過去のレンジの中では割高な水準にあったものの、ハイイールド社債を中心に縮小基調が続いています。年初の市場に織り込まれていた、FRBが年内に積極的な利下げを実施するとの観測は、幾分後退したものの、概ね良好なマクロ経済環境が継続しています。

JPモルガンEMBIグローバル・ディバーシファイド指数のスプレッドは250ベーシス・ポイント(2.50%)近辺にあり、2018年2月に付けた約200ベーシスポイント(2%)から僅か約30ベーシス・ポイント(0. 30%)の水準に迫っています。

2018年当時と比べると、相対的に高格付けの社債(BBB格およびBB格の社債)の指数に占める比率が高いことや、米国社債に対するスプレッドが妥当な水準にあることに加えて、魅力的な利回りや安定的な企業ファンダメンタルズが、スプレッド縮小の裏付けとなっています。社債発行件数は回復しているものの、資金調達額はゼロ近辺にあって資金流入には欠けるものの、テクニカル面から見た先行きは良好です。

新興国社債の信用力を示す指標は持ち堪えており、債務不履行(デフォルト)率は正常な水準に向かって低下し始めています。収益性の改善は小幅に留まる公算が大きいように思われますが、純負債比率は過去のレンジの下限で推移すると見ており、デフォルト率も低下することが予想されます。

 


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