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- AI(人工知能)がクオンツ2.0の基盤を築く
ピクテ・アセット・マネジメント、クオンツ運用部門ヘッド、デイビッド・ライト(David Wright)が、クオンツ戦略を次世代の投資へと進化させるAIの最新動向について解説します。
人工知能(AI)自体は新しい概念ではありませんが、近年のコンピューティング処理能力の向上やクラウドコンピューティングの普及、オープンソースツールの進化により、その一分野である機械学習(ML)を活用するためのハードルは大きく下がりました。
AIの進歩はクオンツ運用の高度化を後押ししており、「クオンツ2.0」と呼べる新たなアプローチを生み出す好機となっています(図1参照)。AIの卓越した処理能力により、運用モデルは従来以上に多くのデータ系列間に存在する複雑な関係性を解明できるようになりました。
従来のクオンツ運用の限界
従来のクオンツモデルは、一時的な価格の歪みを生み出す、比較的少数の市場効果の分析にとどまる傾向がありました。この結果として、バリューやモメンタムといった、広範な市場要因へのエクスポージャーを獲得することが主な目的となっていました。これに対し、AIを活用したモデルは高頻度かつ数百に及ぶ潜在的なシグナルや特徴を提供し得る点で大きな可能性を秘めています。それらのシグナルは、企業決算や株価データ、アナリストレポート、ニュース記事、新たな情報に対する投資家の短期・長期の反応など、さまざまなデータから生成されます。そしてこれは可能性の一端に過ぎません。
AIは株価ドライバーへの洞察を深める
従来の機械学習モデルが主としてデータセット内の線形関係を抽出するのに対し、AIはより大規模なデータプールの中から、はるかに複雑な関連性を捉えることができます。これにより、株価を動かす要因について、より深い洞察を得ることが可能になります。より高度な非線形関係を識別できることで、データ系列間の隠れた関連性を見つけ出す能力が飛躍的に高まります。
例えば、従来のモデルでは、アナリストによる投資推奨の格上げは、その株式がアウトパフォームすることを示すサインとみなされがちです。しかし、特定の市場環境においては、このような関係が成り立たない場合や、アルファ創出に間に合わない場合も少なくありません。
一方、過去データで訓練された非線形機械学習モデルは、アナリストによる格上げが将来のアウトパフォーマンスを最も効果的に予測しうる局面を特定できます。その要因として、アナリスト予測のばらつきが大きい場合や、特定の予測が外れ値となっている場合、あるいは、企業が間もなく業績を発表するタイミングである場合などが考えられます。さらに、ヘッジファンドによる空売りが広範に行われている局面では、モデルが当該銘柄に空売りの買戻しが発生しやすいと判断し、アナリストの格上げで正当化される水準を大きく上回る株価急騰が起こり得ます。従来の金融データセットの中には、追加的なアルファ源となり得る、このような「条件付き」の非線形関係が数万単位で存在する可能性があります。
図1 : 従来のクオンツモデル vs AIを活用したクオンツモデル
出所:ピクテ・アセット・マネジメント
AIはファクターニュートラルなリターンの実現を支援
こうしたより複雑な枠組みによって、モデルを運用するポートフォリオマネージャーは、株価に影響を与える銘柄固有の要因を切り出すことが可能になります。具体的には、各銘柄のパフォーマンスから、市場全体、セクター、地域、業界、国、スタイル、マクロ経済エクスポージャーといった多数の共通要因を取り除きます。その結果、企業固有の純粋なアルファを特定し、抽出することができます。
時間の経過とともに、アルゴリズムは進化を続け、変化する経済・市場環境のダイナミクスを学習しながら、新たなデータ系列も順次取り込んでいきます。
実効性を持たせるには、AIを活用したモデルに対して、人間が明確な投資パラメータを設定する必要があります。いったんパラメータが定義されると、訓練済みアルゴリズムが、それに沿って個別銘柄の売買判断を自律的に行います。
時間とともに蓄積する漸進的アルファの力
これらのパラメータはリスク抑制の役割を果たす一方で、戦略が生み出し得るアルファの絶対量には上限を設けます。しかし、わずかなアルファであっても複利効果が働くことで、長期的には非常に大きな成果となる可能性があります。また、ここ数年の堅調な相場を経て、株式の期待リターンは今後一桁台半ばまで低下すると見込まれる中、1〜2パーセントポイントのアルファであっても、パフォーマンスにとっては決定的な差となります。例えば、今後10年間の市場リターンを年率5%、手数料控除後の超過収益を年率1.5パーセントポイントと仮定すると、複利効果によってクライアントのリターンは累計で24.8%上乗せされる計算になります。
ピクテのQuest AIがポートフォリオにもたらす効果
Quest AIは、AIのスケールメリットと効率性を活かし、低トラッキングエラーを維持しながら指数を上回る株式選択を目指す強化型インデックス戦略です。
市場全体と同様のリスクプロファイルとリスク水準を維持しつつ、追加的なリターン獲得の可能性を追求するよう設計されています。
同じく市場を上回るパフォーマンスを目指す従来のアクティブ運用戦略とは異なり、当社のAI運用は比較的人手を必要としないため、運用管理コストを低く抑えられる点が特徴です。モデルの構築や維持には高度な専門知識が求められるものの、当社のAI運用にかかるコスト水準は、一般的なパッシブ戦略とほぼ同程度にとどまります。
当社のAIアプローチの独自性
当社独自のAIモデルは、物理学や数学の博士号を持つ専門家チームにより、長年にわたって開発されてきました。これらのモデルは、複数のデータ系列から抽出した約400の特性を用いて訓練され、約15年分のデータを組み込んだうえで、多様な経済環境下で繰り返し検証されています。この厳挌なプロセスは、モデルの予測精度を最大化すると同時に、特定の局面にしか通用しない「過剰適合」を防ぎ、変化し続ける経済環境においても有効に機能し続けることを目指して設計されています。
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