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- IPO、AI、そしてユニコーン企業の急増:2026年以降のプライベートエクイティ・テクノロジー投資家を惹きつけるテーマ
ピクテのテクノロジー・セマティック・プライベートエクイティ・チームが、2026年を迎えるにあたり、AIからIPOに至るまで、投資家の関心を集めるイノベーション革命の潮流について解説します。
■ 目次
1. 民間テクノロジー企業が生み出す1兆ドル規模のIPOパイプライン
2. AIの強固な基盤と成長余地
3. AIスタック
4. 複数分野にわたる投資
歴史を通じて、技術革新の波は世界経済を根本から変えてきました。1990年代以降には、これまでに三度の大きな波が頂点を迎えています。最初はインターネット、次にモバイルとアプリのエコシステム、そしてクラウドです。それぞれの波が全く新しい行動様式やビジネスモデルを生み出し、最終的に数兆ドル規模の企業価値を創出しました。これらの変革によって、現在では日常生活の一部となった世代を代表するテクノロジー企業が誕生しています。
現在進行中の人工知能(AI)の波は、その規模と深度の両面で、これまでの三つとは異なる次元にあります。これは単なる技術サイクルの一つではなく、産業革命にも匹敵する変化です。
◆3つの重要なポイント
(1) 2026年のIPOパイプラインは、流動性改善と、プライベートエクイティ・テクノロジー分野における潜在的成果の拡大につながります。
(2) AIは極めて多様な投資機会をもたらします。プライベートエクイティにおいては、アプリケーションおよびプラットフォーム分野が特に有望です。
(3) 機会を最大限活かし、リスクを適切に管理するためには、テクノロジー分野全体にわたる分散投資が不可欠です
本稿では、ピクテのテクノロジー・セマティック・プライベートエクイティ・チームが、この革命の3つの側面について解説します。
1. 非上場テクノロジー企業が牽引する1兆ドル規模のIPOパイプライン
AIが依然としてテクノロジー関連の主要テーマである一方、今年のテクノロジー投資家にとって最も注目すべき市場イベントの一つは、別の領域から生まれる可能性があります。報道によると、SpaceXは今後数ヵ月以内に新規株式公開(IPO)を予定しており、今回のIPOで300億米ドルの調達を目指し、評価額は1.5兆米ドルに達する見通しです。これが実現すれば、史上最大のIPOとなります。この野心的な計画は、同社が打ち上げサービス事業で圧倒的な地位を確立していることに支えられています。昨年、SpaceXは世界全体(米国を除く)の合計を上回る軌道打ち上げ数を達成し、当社の衛星サービス「Starlink」は現在、稼働中の全衛星総の60%を占めています。
より広い視点で見ると、こうした上場の動きはプライベートエクイティ投資家にとって、「流動性状況の改善」と「より大きな成果の可能性」という2つの重要なテーマを象徴しています。流動性についは、2025年にテクノロジー企業のIPO市場が回復し、2026年にはさらに多くのイグジット(上場・売却)が見込まれています。また、SpaceX以外にもDatabricks、Stripe、AI分野のリーダーであるOpenAIやAnthropicなど、多数の非上場企業が上場準備を進めており、幅広い投資機会が存在しています。今日のテクノロジー投資はAIが中心テーマであることに間違いありませんが、それにとどまらない広がりを見せています(次項で詳述します)。
同時に、流動性が改善する一方で、企業がより長期間非上場を維持する傾向も明確に見られます。これはプライベートエクイティ投資家にとって、利益拡大の機会が生まれる要因です。10年前には時価総額50億米ドルを超える非上場テクノロジー企業はわずかでしたが、現在では約150社に増加しています。SpaceXの上場は、他企業の上場を促す契機となり、プライベート投資家が蓄積してきた価値を実現するきっかけになる可能性があります。実際、SpaceXが上場した場合、その時価総額はGoogleが上場した当時の約230億米ドルを大幅に上回る見込みです。
近年では、企業価値の多くが上場前の段階で創出されています。プライベートエクイティ投資家として、この投資機会に資金を的確に配分できるかの能力が問われています。
企業が上場する前の段階で創出される企業価値の割合は一段と高まっており、私たちはプライベートエクイティ投資家として、このような投資機会に資金を的確に配分できるかの能力が問われています。
2. AIの強固な基盤と成長余地
私たちは、ChatGPTがGoogleのように名詞だけでなく動詞としても使われるようになる遥か以前から、AI分野に投資してきました。この分野がこれほど魅力的な投資対象であり続ける理由は、その普及スピードにあります。消費者と企業の双方において、これほど急速にプロダクト・マーケット・フィットを達成した新技術は、これまで存在しませんでした。
ChatGPTはわずか約2ヵ月で1億人のユーザーを獲得しました。これは、InstagramやFacebook、Twitterといった世代を代表するテクノロジー企業が達成するまでに数年を要した数字です。さらに、ChatGPTは急成長を維持し、現在では8億人を超えるアクティブユーザーを抱えています。
しかし、これは単なる利用拡大や一過性のブームにとどまりません。ドットコム時代との大きな違いは、AIの導入が驚異的な速さで実際の収益に結びついている点です。AIは、製品開発から顧客への価値提供までのフィードバックループを劇的に短縮します。結果として、AIネイティブ企業は年間換算1億米ドルの収益に到達するまでに、かつてのように数十年ではなく、わずか数か月でこれを実現する事例も出てきています。米国企業の約80%がすでにAIサブスクリプションを導入しており、まさにユーザーが「財布で投票している」状況です。また、パンデミック後に設立された複数のAI企業が、わずか2〜3年で年間約10億米ドルの収益ランレートを突破しており、これほどの速さで収益化が進むのは、ソフトウェアの歴史上前例のないものです。
多くの報道はChatGPTなどの初期の勝者に注目しがちですが、それだけではAIエコシステム全体の進化を過小評価しています。AIは単一の製品でも企業でもなく、複数の層と多数のプレーヤーで構成される包括的なテクノロジースタックであり、それぞれが異なる方法で価値を創出しています。
このAIバリューチェーンを考えるうえで有用なのが、「家を建てる」ことに例えるモデルです。最下層にあるのは、コンピューティングおよびインフラストラクチャーという基礎部分です。ここには主にチップ、データセンター、クラウドコンピューティングなどのハードウェア製品が含まれます。これらは資本集約的で、規模の経済が働き、大手上場企業やハイパースケーラーが支配しています。この層は他のすべての構築の前提であり、早い段階から大きな価値を獲得します。
住宅価格が上昇するにつれて利益プールが上方に移動するように、テクノロジーサイクル全体でも同様の傾向が見られます。次の層は「モデル層」で、ここではハードウェア中心のビジネスからソフトウェア主導のビジネスへと移行します。OpenAIやGeminiといった大規模な基盤モデルがこの層に該当し、AI開発の土台となるニューラルネットワークを形成します。これは家でいえば電気配線や配管システムに相当し、多額の投資と、継続的なトレーニングおよび推論コストを伴います。
その上に位置するのが「プラットフォーム層」で、は家の内部構造、すなわち梁や配線パネル、制御システムのような役割を果たします。ここにはデータインフラストラクチャー、モデルツール、可観測性、オーケストレーション、セキュリティ、ガバナンス、コンプライアンスなどが含まれます。いわばAI時代の「つるはしとシャベル」にあたり、企業がAIを信頼性高く、大規模かつ規制・運用の制約内で導入するためのソフトウェア基盤です。
最上層に位置するのが「アプリケーション層」、すなわち完成した居住空間です。ここでAIは具体的なサービスとして具現化し、エンドユーザーや企業が実際に利用する製品、つまり、検索、ワークフロー自動化、カスタマーサポート、ソフトウェア開発、その他特化型ソリューションなど、として現われます。この層では、既存企業が製品をAI対応に再設計する動きや、スタートアップがAIネイティブなソリューションを一から開発する取り組みが活発化しています。私たちは特に、この最上層の領域に強い注目を寄せています。
3. AIスタック
図表1
過去の技術革新の歩みを振り返ると、最も高く、かつ持続的なリターンは、ソフトウェアやアプリケーション層で生まれる傾向にあります。これらの層では、差別化が積み重なり、価格決定力が生まれ、顧客価値が日々の業務フローに組み込まれていきます。
AIエコシステムの成熟が進む中で、私たちはこの分野に最も魅力的な投資機会が存在すると考えています。
4. 複数分野にわたる投資
AIがいかに魅力的であっても、プライベートエクイティ投資家として、テクノロジー分野全体に分散投資を行うことが不可欠だと考えています。こうしたAI主導の市場機会や構造的なメガトレンドを背景に、長期的なリターンが最も期待できる五つの注目すべきテクノロジー分野を特定しました(図表2)。
AIは、特に企業向けや特定業界向けのアプリケーションにおいて中心的な役割を果たしています。しかし、企業向けAIに限らず、フィンテック、サイバーセキュリティ、消費者向けテクノロジー、そしてディープテック(技術的ブレークスルー、規制の変化、またはユーザー行動の変化によって新たな勝者が生まれる分野)にも、魅力的な投資機会があると考えます。これらの分野こそ、プライベートエクイティ投資家にとって、テクノロジー分野における次の価値創造の波を捉える最適な領域だと考えています。
とはいえ、「なぜプライベートエクイティを通じてテクノロジー分野に投資するか」という疑問が生じるのは自然なことです。
確かに、いわゆる「マグニフィセント・セブン」をはじめ、上場市場ですでに多くの価値が実現されていることは十に分認識しています。しかしながら、依然として未公開ながらも高成長で革新的な、業界を定義するようなテクノロジー企業が数多く存在し、投資家の上場株式へのエクスポージャーを補完し得ると考えます。ポートフォリオ分散の観点からも、プライベートエクイティ市場は、より広範な投資機会へのアクセスを提供します。つまり、数十社ではなく数千社の中から選択できるということです。
また、プライベートエクイティ市場の特徴として、エコシステムが高度に制度化された結果、企業が上場せずに長期間未公開のままでいる傾向が強まっています。現在では、テクノロジー系ユニコーン企業が上場することなく、数十億米ドル、さらには数百億米ドルの評価額に達する例もみられます。
さらに、セカンダリー市場の厚みが増し、流動性が向上したことで、未公開株式の所有権移転が経験豊富な投資家間で一層容易になっています。これにより、プライベートエクイティ投資家は、企業のIPO時点に限らず、創業から成長に至るさまざまな段階で価値創造に参画できるようになりました。
言い換えれば、企業が上場する前の段階で創出される価値の比重がますます大きくなっており、プライベートエクイティ投資家として、こうした機会に恵まれていることを大いに期待しています。
図表2: 強い追い風を受ける、確信度の高い5つのテクノロジー分野
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