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新興国株式市場:復活の物語
2026/02/09

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概要

現在の新興国株式市場は、数多くの機会と構造変化が交錯する分岐点に立っており、魅力的なバリュエーション、堅調な成長ポテンシャル、そして構造的な追い風を備え、長期投資の観点から有望な機会を提供していると考えています。



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” 株式市場には、あらゆるものの価格は知っているが、その価値を理解していない人々が溢れている " 
— フィリップ・フィッシャー(Philip Fisher)



バリュエーションの重要性


新興国株式は現在、予想株価収益率(PER)が約13倍で取引されており、先進国市場と比べて約34%もの大幅なディスカウントとなっています。この評価格差に加え、先進国市場を上回る魅力的な利益成長も見込まれており、その存在感は無視できません。MSCIエマージング・マーケット・インデックスは、2025年に米ドルベースで約33%上昇し、2017年以来初めて先進国市場および米国市場をアウトパフォームしたことで、再び注目を集めています。それにもかかわらず、新興国株式は依然として割安水準にあり、多くの投資家のポートフォリオにおける保有比率は低い状態が続いています。


米ドルの動き:新興市場への追い風


出所: Pictet Asset Management, Bloomberg、2025年12月時点。
・2004年3月1日を基準値100として再計算

米ドルの動向は、新興国株式市場のパフォーマンスを左右するうえで極めて重要な役割を果たします。歴史的に見ると、ドル安局面は新興国株式の上昇を促す触媒となり、インフレ圧力の緩和や、各国中央銀行によるより緩和的な金融政策の実行を可能にしてきました。

新興国の対外債務の多くは米ドル建てであるため、米ドル安は債務返済コストを押し下げ、財政の安定性向上に寄与する可能性があります。さらに、多くの新興国は主要な商品(コモディティ)輸出国でもあることから、米ドル安は一般的に商品価格の上昇を通じて輸出収入を押し上げる要因となります。このような力学に加え、新興国は先進国と比べて財政赤字が比較的抑制され、インフレ率も低水準にあることが、成長と投資にとって好ましい環境を形成しています。

最近では、米国債券市場における債務水準への懸念が高まり、市場のボラティリティが上昇しています。こうした状況を受け、一部の国々は外貨準備の分散を進め、米国資産への依存度を引き下げるとともに、安全資産と見なされる金への配分を増やす動きを強めています。


金利と金融緩和


米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測と深刻な景気後退の回避により、新興国株式市場に対する投資家のセンチメントは改善しつつあります。金利環境が正常化すれば、当社の高配当戦略のようなバリュー志向の戦略は、再び評価されるようになると考えられます。

これは、グロース志向の投資家に有利だった、非現実的とも言える低水準の世界的な金利環境が約7年間続いた後に訪れている変化です。


高配当投資:持続可能なリターンの基盤


当社の高配当戦略は、持続可能な配当利回りを確保しつつ、ポジティブな変化を遂げている企業に焦点を当てることで、新興国株式市場における機会を的確に捉える独自のポジションにあります。

先進国株式市場では、高配当戦略は公益事業や通信などの成長性に乏しいセクターに偏りがちです。一方、新興国株式市場ではテクノロジー、鉱業、石油・ガス、その他の景気循環性の高いセクターを含む、より幅広い分野で配当機会が提供されています。これらのセクターはボラティリティの高さと結び付けられることが多いものの、持続可能な配当支払いに強いコミットメントを有する企業に注目することで、健全なバランスシートと規律ある資本配分を備えた企業を選別することが可能です。

新興国株式市場では、配当が総リターンの大きな部分を占める傾向にあるため、配当金の再投資は総リターンの大幅な向上につながります。この複利効果は長期的なパフォーマンスを支える重要な原動力であり、市場下落局面における緩衝材となるとともに、経済サイクル全体を通じた回復力の確保にも寄与します。


総リターン(年率、%)

出所: FactSet, Pictet Asset Management.
期間:2000年12月~2025年12月
・現地通貨建てのパフォーマンスに基づき、税効果を考慮せず配当金を再投資した場合。
・総リターン=株価収益率(PER)変化分 + 1株当たり利益(EPS)の変化分 + 再投資された配当金(Dividends) + 自己株式取得)

当社の戦略は、配当利回りとポジティブな変化の双方を重視するバリュー・アプローチを採用しています。高配当を継続的に支払う能力を備えた企業に焦点を当てることで、ポートフォリオは自然とボラティリティが低くなり、市場感応度(ベータ)の抑制やレバレッジ水準の低下が期待できます。

また、企業内部で進行するポジティブな変化に着目することで、バリュー投資家が陥りやすい最大のリスクの一つである「バリュートラップ」を回避することを目指しています。これは、出発点そのものよりも進行方向が重要であるという当社の信念を反映したものであり、改善に取り組む企業を支援するという姿勢につながっています。

当社は主に配当の持続可能性という観点から経営の質を評価し、資本配分、バランスシートの健全性、収益力、成長見通しを総合的に分析します。定期的な配当支払いを明確にコミットする経営陣は、一般的に規律ある資本配分、長期的な視点、少数株主の利益との高い整合性を示すことが多いと考えています。当社は明示的に「クオリティ」ポートフォリオを構築することを目的としているわけではありませんが、こうした観点は結果として内在的なクオリティフィルターとして機能します。強固なバランスシート、安定したキャッシュフロー、慎重な財務方針を持つ企業は、一般的に経済的不確実性を乗り越えるうえで優れた耐性を示します。

このような規律あるアプローチにより、持続可能なビジネスモデルと強固なファンダメンタルズを備えた企業への投資を着実に実行します。当社は、財務的に強靭で、かつ改善に取り組む優れた経営体制を有する企業を厳選することで、魅力的なリターンを提供することを目指しています。

さらに、ESG統合への取り組みは、このアプローチを一段と強固なものにします。投資をサステナビリティの原則と整合させることで、ポートフォリオの質と回復力を高めると同時に、投資先市場や地域社会における前向きな変化の促進にも貢献します。


構造的な追い風:人口動態、資源、そしてイノベーション


新興国市場は世界で最も速いペースで成長する人口と経済を抱えています。


人口動態と中間層の成長:新興国市場の中間層は、2024年の約3億5,400万世帯から2034年には約6億8,700万世帯へ拡大すると予測されています。これにより、今後数十年にわたって生産性が向上し、金融サービス、住宅、日用品に対する消費者需要が一段と高まると見込まれます。こうした人口動態の変化の恩恵を受ける可能性が高い企業としては、銀行に加え、保険、通信、不動産企業が挙げられます。


天然資源とエネルギー転換:新興国市場は、世界的なクリーンエネルギー移行に不可欠な資源とインフラを供給しており、エネルギー転換を支える上で重要な役割を担っています。


技術革新:世界銀行の推計によれば、世界中で14億人が銀行口座を持たず、新興国市場における約4億社の零細企業のうち3億4,500万社がインフォーマルな形態で事業を行っています。新興国市場が社会経済的な発展を遂げ、都市化が進み、農村部と都市部の格差が縮小するにつれて、デジタル技術および金融包摂に対するニーズは一段と高まると見られます。こうした潮流は、金融セクターと通信セクターの双方からもたらされます。


リスクへの対応:関税とボラティリティ


関税引き上げは懸念材料であるものの、新興国市場全体への影響は総じて管理可能な範囲にとどまっていると見受けられます。米国が政策面での不確実性に直面する一方で、新興国市場はガバナンスや経済運営の枠組みを強化し、より健全な財政バランスと良好な債務対GDP比率を示しています。さらに、新興国株式は2026年年初来、先進国株式に比べてボラティリティが低く、その底堅さを裏付けています。


転換点:新興国市場に注目すべき理由


新興国株式は、先進国株式と比べて大幅なディスカウント水準で取引されており、予想PERは約34%低い水準にあります。より高い経済成長が見込まれることから、企業収益の成長見通しにおいても相対的な優位性が期待されます。

また、米ドル安局面は歴史的に新興国市場にとって追い風となってきました。この傾向は、先進国市場が抱える財政課題とは対照的に、新興国市場の抑制された財政赤字と低インフレによって支えられています。


” 機会は頻繁には訪れない。金の雨が降るとき、指ぬきではなくバケツを出しなさい "
─ ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)


新興国株式市場は、人口動態の変化、デジタル・トランスフォーメーション、持続可能性といった要因を独自に融合する投資機会を提供します。当社の高配当戦略は、バリュー投資、配当、ESG統合に重点を置くことで、リスクを抑えつつ、これらの機会を的確に捉えるための強固な枠組みを提供します。


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