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- 脱米国化の流れは止まらない
米国の政策運営が不安定さを増すなかで、新興国債券の魅力が一段と高まっています。新興国債券市場の見通しについて、ピクテ・アセット・マネジメント インベストメント・マネージャー クリストファー・プリース(Christopher Preece)、同シニア・マルチ・アセット・ストラテジスト アルン・サイ(Arun Sai)に聞きました。
ピクテ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネージャーは、ベネズエラにおける米国の軍事行動が、債券市場ですでに進行している大きな構造的テーマを浮き彫りにしたと指摘しています。すなわち、今後もドル安が続き、新興国債券の上昇余地がさらに広がると予想されます。
Q : 米国の軍事行動は投資環境にどのような影響を与えますか?
A:これによって変わらないのは、ポートフォリオを米国中心から分散させようとする動きが継続している点です。例えば、米国は世界の株式時価総額の64%を占める一方、世界の経済生産に占める割合は約4分の1にとどまります。このリバランス、すなわち当社のマネージング・パートナーであるレイモンド・サガヤム(Raymond Sagayam)の言葉を借りれば「脱米国化」は、反米的なシフトではなく、米国の例外主義を抑制し、米国以外にも魅力的な投資機会が存在することを認識する姿勢を示すものです。
Q : これは米ドルと米国債にとって何を意味するのでしょうか?
A : 昨年、米ドルは主要通貨バスケットに対して約10%下落しました。ポートフォリオのリバランスは、特に投資家が米国の国際関係を巡る不安定な姿勢に懸念を抱く場合、今年も同様の傾向が続く可能性を示唆しています。
ドナルド・トランプ大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)に対し、必要以上の利下げを迫ることに成功した場合、米ドル安がさらに進行する可能性があります。
金融緩和政策は通常、米国のイールドカーブの短期ゾーンにはプラスに働く傾向がありますが、タームプレミアム(投資家が長期資産を保有するために要求する追加報酬)の水準は依然として低すぎるように見受けられます。一方で、リスク要因としては、米国の政策運営の誤りにより長期金利が上昇し、長期国債の売りを誘発する可能性が挙げられます。これは、企業のファンダメンタルズが堅調であっても、株式市場にとってはマイナス要因となり得ます。当社の基本シナリオでは、米国10年国債利回りは5%を下回ると見込んでいますが、利回り上昇は依然として重大なテールリスクです。米国債は今後も、世界のポートフォリオにおける中核的な資産であり続けると考えています。しかし、米国の外交政策が流動的である現状を踏まえると、このリスクをヘッジすることも合理的です。その主要な手段の一つが金への投資であり、金は米ドルに対する一般的なヘッジ手段でもあります。
ラテンアメリカの対米・対中国貿易(GDP比)
出所 : CEIC, Pictet Asset Management.
期間:2000年1月1日~2025年8月1日
Q : 南米の政治的変化は債券・為替市場にどのような影響を与えますか?
A : 現在の米国の外交政策は、ここ数十年の中でも北米および南米への重点が最も高まっていると言えます。南米の政治的振り子はすでに右派寄りに振れていましたが、米国の政策によりその傾向は一層強まっています。右派政権は一般的に市場志向が強く、自国のソブリン債にとってもプラスに働く傾向があります。また、米国の関与が強まることで、これらの経済に対するより直接的な支援が提供されやすくなっており、昨年のアルゼンチン・ペソへの支援決定はその一例です。もちろん、このアプローチがモラルハザードを生み出すリスクはありますが、同時にこれらの経済のリスクプレミアムを低減させる効果もあります。一方で、南米諸国は、米国政府が同地域における中国の影響力削減を図るなかでも、自国の原材料と引き換えに中国から貿易やその他の譲歩を引き出すことに成功しています(グラフ参照)。
これにより、ラテンアメリカのハードカレンシー建てソブリン債は、すでに利回り低下が進んでいるアジアの債券などと比較して、相対的に魅力が高まっています。一方、現地通貨建て債券については、その優位性は必ずしも明確ではありませんが、今後、米ドルはアジア通貨およびラテンアメリカ通貨の双方に対してさらに下落すると可能性が高いと見ています。
Q : 世界的な地政学的状況の変化は、新興国債券への投資戦略にどのような影響を与える可能性がありますか?
A : 新興国債券への投資配分を増やす構造的な理由は非常に強固です。昨年の上昇にもかかわらず、新興国債券は依然として割安な水準にあります。また、正当化された金融緩和の恩恵を受ける可能性もあります。新興国の現地通貨建て金利は、全体として低インフレ環境のもと平均約5.5%となっており、さらに約1.5ポイントの利下げ余地があると見ています。一方で、新興国経済は先進国と比較して、ますます速いペースで成長しており、AIサプライチェーンにも深く組み込まれていることから、この新たな技術ブームの恩恵も享受しています。
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