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新興国社債市場の振り返りと見通し(2024年8月)
2024/09/17

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概要

2024年8月の新興国社債市場の振り返りと今後の展望について、ピクテの新興国債券投資チームがまとめました。



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市場概況

2024年8月の金融市場は波乱含みの展開となりました。市場の乱高下のきっかけとなったのは、月初めに発表された7月の米雇用統計の弱さであり、これにより、米国がより顕著な景気後退に向かっているのではないかという懸念が高まりました。また、7月末には日本銀行が利上げを行い、円資金によるキャリートレードの解消が発生するきっかけとなりました。

月の後半には、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がジャクソンホールで講演を行い、FRBによる利下げが近いことを投資家が確信する要因となりました。このことが、米国国債利回りの大幅な下落を誘導することとなり、5年物国債利回りは前月比20bps低下の3.7%となり、新興国社債の好調なパフォーマンスの大きな要因となりました。加えて、スプレッドがわずかに縮小したことも、新興国社債に有利に働きました。

全体として、新興国社債市場は8月も好調で、JPモルガングローバル・ディバーシファイド指数のトータル・リターンは前月比で+1.7%となりました。投資適格社債とハイイールド債も同水準のリターンをあげました。投資適格社債は米国国債への感応度が高いことからその恩恵を受け、ハイイールド債は良好なスプレッドがパフォーマンス上昇の要因でした。

新興国ではインフレの下落圧力が続き、多くの中央銀行がさらなる金融緩和策を講じました。特にメキシコ銀行(中央銀行)は、通貨ペソの不安定な環境にもかかわらず、8月の金融政策決定会合で政策委員5人中3人の賛成により、政策金利を11%から10.75%への引き下げを決定しました。また、アジアでは、フィリピン中央銀行が2020年11月以来の25bpsの政策金利引き下げを行いました。


市場展望


2024年後半の新興国社債に対しては、前向きな見方をしています。米国で、消費者物価指数(CPI)の伸びの鈍化傾向が強まるなど、ソフトランディングのシナリオが示唆される弱い経済指標の発表が相次いだことにより、FRBは9月に金融緩和を開始する用意があると見られています。米国の金利低下は新興国社債にとってリファイナンス条件の緩和を意味します。

さらに、新興国においてインフレの下落圧力が再び見られるようになっており、今後数ヶ月間、多くの新興国経済でさらなる金融緩和が容易になるはずです。特に、メキシコやインドネシアなど、米国と経済的に密接な関係にある国や、通貨安に神経質な国では、FRBの金利政策に注意を払っています。

新興諸国の成長はまずまずです。中国とインドネシアは5%の成長率を示しており、インドは6%から8%の成長を達成しています。ブラジルでは個人消費支出に牽引されて経済が回復しています。

今年はリファイナンス市場が活況であり、アルゼンチンの優良企業が市場にアクセスできたように、ハイイールド債券の発行体を含めて、リファイナンス圧力が緩和されています。第2四半期の企業決算シーズンは、コモディティを除くほとんどのセクターで収益の伸びの勢いが増しており、デフォルト率が低い状態です。


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